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リアクション
小暮を探せ!1
遺跡を見つめるクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)の表情は厳しかった。作戦の優先順位としてあの時小暮探索よりもシールドの搬出が重要だったのはわかっている。しかし、そのことで部下を見殺しにするのは彼女の責任感が許さなかった。
「貴重な参謀候補の人材は救えるなら救うべきでしょう」
静かな声音に驚いて振り返る。朝霞 奏(あさか・かなで)、伊達 晶(だて・あきら)、ジャンヌ・ダルク(じゃんぬ・だるく)らを引き連れ、杠 桐悟(ゆずりは・とうご)が傍にいつの間にかやってきていた。
「いかんな……こんなにぼんやりしていては」
源 鉄心(みなもと・てっしん)が呼びかけてきた。
「小暮さんを探しに行くんでしょう? 生死不明と聞いているがパートナーロストの影響があればわかるはず。
つまりは生きてるってことでしょう。俺も同行しますよ」
「そうだな……」
クレアが顔を上げる。闇に呑まれた小暮の姿を見た場所を、記憶術を使って再度なぞる。
「小暮少尉を見失ったところまで一旦戻ろう。何か手がかりがあるやもしれん」
「許可が出たです! GOGOGO!」
じっと成り行きを見守りつつ、行く気満々だったティー・ティー(てぃー・てぃー)が叫ぶ。イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)もぴょんぴょんとその場で飛び上がった。
「あほ毛レーダーなんてなくたって、わたくしが居ますの! なななさんは他で予約済み(?)みたいですけれど。
その分、わたくしが輝くチャンスですわ!」
「イコナちゃんずるいー」
ティー・ティーがふくれた。
「わたくしは戦闘力がありませんの。ティーは戦って輝けばいいのです!」
「なんか違う気がする……」
「まあ。そういうことにしておけ……」
考え込むティーに、鉄心はため息混じりに言い、言葉を継ぐ。
「別のイレイザーの体内に入った例では寄生体やガスの影響があったという報告もある。
そうでなくともあまり中に長時間居るのは望ましくないだろう。できる限り迅速に動きたいところだな」
HCの生体反応センサをオンにする。
慎重かつ迅速に遺跡内部に侵入する。奏がイナンナの加護を全体にかけ、タブレット型端末KANNAを手にしてマッピング兼後方の警戒を担当する意を示した。警戒しながらクレアの記憶を頼りに進む。内部はほぼ以前見た時どおりで、多少地中にイレイザーがもぐったときに砂が入り込んでいる箇所があるほかは、大きな変化は見られないようだ。
「運をたよりに適当に進むわけにもいかんし、『論理的に行動するとしてどう動くか』
『生還の確率の高い選択を積み重ねるとすればどう動くか』をシミュレートしてみよう」
以前小暮を見失った場所に到着すると、クレアが目を閉じ集中する。『行動予測』である。
「ここから先は、不明の場だ。警戒を怠らないようにしましょう。ヘビ型アヴァターラが多数生息しているという話です」
クレアの予測した進路をたどりながらグループの中央に位置する桐悟が言う。晶が右を、ジャンヌが左を固めている。
「それなら、こっちが騒がしくしてたらいいのじゃない?」
ティーが言って、レゾナントアームズを作動させ、先頭に立つ。
「ひでゆきくんあ〜そ〜び〜ましょ〜♪ 居るのは分かってるんです! 出て来てくださーい!
居ないなら居ないって返事してください〜」
騒がしいティーを横目で見て、イコナがつぶやく。
「……超知性体を捜索で探しますの。トレジャーセンスは反応するか知りませんけど、一応作動させておきましょう」
時をほぼ同じくして白波 理沙(しらなみ・りさ)と早乙女 姫乃(さおとめ・ひめの)は、小暮を捜索しようと、ところどころ砂で埋まった遺跡に踏み込んでいた。
「弄られ体質なだけかと思ってたら、行方不明とはねぇ……」
姫乃が真剣な表情でナギナタを握り締め、周囲を見回す。
「小暮さん、心配ですよね……。無事に助け出せるように私も頑張ります!」
「何があるか分からないから慎重に行きましょう。
焦って余計な事をして私まで他の人に心配させたらお話にならないものね」
「そうですね、何でも凶暴化した蛇がいるとか……ほかにどなたかご一緒できると良いんですけど」
「良かったらご一緒しませんか?」
鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)が声をかけてきた。
「俺もこの間小暮さんを成り行きとはいえぶん殴って投げちゃたから、お詫びに助けに行くんですよ」
「……喜んで。よろしくね」
「それとね、彼が不明になってからある程度時間がたっていますのでね、パンを持って来たんですよ……」
「それは準備がよろしいですね」
姫乃が微笑む。と、横手から声がした。
「そう、教導団の貴重ないじられキャラを失うわけにはいかない!
……ったく、小暮君の代わりにせっかく超宝珠を叩き込んだのに、ご本人が行方不明とは何やってるのやら」
「危険なモノのの警戒と排除は任せなさい」
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)とポータラカ人のパートナー、イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)だ。
「一人でも多いほうが心強いです。よろしくお願いします!」
姫乃が礼儀正しく言って、ペコンと頭を下げる。
「こちらこそ。……さて、と。小暮さんですが、おそらくは地上部にはいないのじゃないかと思うんですよね」
貴仁が言った。
「ヘビ型ギフトが暴走しているという話であるから、それらに追われてさらに奥へ……などという可能性もあるな」
イングラハムも同意を示した。
「とすると、やはり体内に……。他のインテグラルの話だけど、かなり嫌っぽい話を聞いてる……」
理沙がフクザツな表情で、足元を見下ろした。
吹雪がため息をついた。
「まあ、行くしかあるまい」
イングラムはナノマシン拡散を使い身を隠すと、遺跡から巨大インテグラルの体内に降りる経路を探し出してきた。忍者らしく皆の先陣を切って進んでいく。
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