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2021年…無差別料理コンテスト

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2021年…無差別料理コンテスト
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リアクション


第1章 焦らずじっくりコトコト・・・

「もうすぐゴールデンウィークですよねぇ〜。何か面白いイベントでも開催したいですぅ〜♪」
 何も予定のないエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)は、人指し指を口元に当てて考え込む。
「そうですぅ!ハロウィンの時に作ってもらったお菓子が、とぉ〜っても美味しかったですから、今年はお祭りの出店をテーマにしたお料理のコンテストを開催しましょお〜!!」
 当然の思いつきのイベントをネットで告知し、うきうきしながら長〜い連休がくるその時を待つ…。

-コンテスト2日前-

「お姉ちゃん・・・1人で参加するって言ってたけど。大丈夫・・・じゃないですよね」
 無差別料理コンテストに出る芦原 郁乃(あはら・いくの)の様子を、見に来た荀 灌(じゅん・かん)は、彼女の手料理を食べて気絶する者が出ないか不安で魔法学校へやってきた。
 同じ学校に通っている生徒が止めようとするが、郁乃は言うことを聞かず・・・、“秘策がある”と自信満々に会場のカフェへ来ているようだ。
「はぁ〜・・・気が重いです・・・」
 どよぉ〜んとした空気を体中から発する。

-灌の脳内ムービー絶賛放映中-

「この香ばしい〜匂いはなんですかぁ〜?」
 ほわぁんと匂いに誘われ、取り皿をかかえたエリザベートが鼻をひくつかせる。
「出来立てのほっかほかだよ♪」
「いただきますぅ〜、はむっ」
 郁乃に器へよそってもらい、スプーンで口へ運んだとたん・・・。
「―・・・ふぐぅ!!」
「エリザベートさん!?」
 ドタンッとゆかに倒れた少女を、桜井 静香(さくらい・しずか)が揺り起こそうとするが・・・、返事ない。
 意識がアウトしているようだ。
「まさか、郁乃さん・・・。魔法学校の校長を暗殺しようと企んで・・・?」
「へっ!?」
 ぼそっと言うラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)の声に、彼女はすっとんきょうな声を上げる。
「食いしん坊なエリザベートさんに食べさせて抹殺するなんて、なんて恐ろしい人ですの。こんな大罪許せませんわ!一刻も早く警察に連絡して、牢や送りにしなくてはっ!!」
「そっそんなぁ〜!?私はただ料理を食べてもらいだけだったのに!!」
 ムービーのシーンは警察の取調室へと変わり・・・。
 “お前がやったんだろ、白状しろっ。”
「わたし、やってない!手料理をたべてもらっただけだよっ」
 問答無料で捕まった郁乃が必死に否認する。
 “いい加減認めたらどうだ。”
「だって材料も人体に害ないよ!?」
 “パートナーもきっと悲しんでいるぞ?腹減っているだろ、ほら・・・これでも食え。”
「うぅ・・・。ほんの・・・ほんの出来心なのっ。料理オンチの汚名挽回をしたくって・・・!」
 大失敗した悪魔料理でころしてしまったことを郁乃は割り箸を握り締め、一筋の涙をカツ丼に零れ落とした。

-灌の脳内ムービー終幕-

「まさか・・・、こんな大惨事になったりしないですよね・・・っ」
 そう想像するだけで、もう心配でたまらない。
 灌の心配を他所に郁乃は、コンテスト用の料理作りに没頭している。
 “今日こそ汚名挽回するぞぉ〜〜!!”と意気込み、会場にやってきたのだ。
 汚名返上といい間違えた彼女は、汚名をリバースするフラグを自ら立ててしまった。
「む〜・・・。包丁で剥いたら、ちっちゃくなっちゃった」
 ジャガイモの皮剥きをしたものの、残った部分が指でやっとつまめるサイズしかない。
 剥いた皮にはぶ厚い身がくっついている。
「もっと簡単に出来る方法があった気がするんだけどなぁ〜」
 レシピ本で見た手順を思い出そうと腕組してう〜ん・・・と唸る。
「あ、そうだ!これを使うんだったよねっ」
 手の平をぽんっと叩き、お料理作りの大切な友を掴む。
「じゃ〜ん♪これさえあれば、もう怖いものなし!」
 掴んだお料理作りの友、ピーラーをビシッと天井に向ける。
「わぁ〜、身がほとんどくっついてない!皮剥きってピーラーの方がやりやすいんだね♪」
 しゅるしゅるる。
「よぉーしっ!上手く剥けたっぽい♪」
 ジャガイモ以外の野菜も剥き終わり、汚名返上の第1歩を踏み出せたかな?っと、にんまりと微笑む。
「次は包丁で切るんだよね」
「もう作ってるんですねぇ〜?」
 デジカメを手にエリザベートが様子を見に来た。
「うん、2品作るから早めにね」
「この前のコンテストの時は、とってもおっき〜いお菓子の家を作ってくれましたよねぇ?今回も楽しみにしてますよぉ〜」
「えへへ、頑張っちゃうよ♪」
「ちゃんと浴衣も着て来てくれましたねぇ?その柄、可愛いですぅ〜。凄く似合っているですぅ〜」
 青地に雲と金魚の柄があしらった浴衣を着ている郁乃の姿を、しっかりとデジカメに録画する。
「ありがとうっ」
「ん?郁乃さん、お野菜ってそうやって切るんですかぁ〜?」
「へっ?うん、これでおっけーだよ!」
 サイズがバラバラすぎるのに、ぐっと親指を立てる。
「お肉もとんとんとーん♪」
 切れ味ばっちりの包丁で、硬い牛肉の塊を切る。
「豪快な切り方ですねぇ〜」
 完成予測不可能な光景を、観察するように料理風景を撮影する。
「お姉ちゃん!?」
 ダイナミックに材料を切る郁乃を見たとたん、恐ろしいものが出来上がるんじゃないかと、冷や汗を浮かべた灌が声を上げる。
「あっ。荀灌、来てたの?」
「ううん、今来たところですよ」
「今回は結構自信あるんだよ!」
 牛肉と野菜をフライパンにバサッと入れた郁乃は、コンロの傍に来た灌を見ながら炒める。
「まぁ、期待してて♪」
 寸胴鍋に入れて香草を加え、赤ワインをドボドボと入れる。
「(いったい何を作っているの、お姉ちゃん・・・。せめて人が食べられるものを作って、お願いだからっ!)」
 灌は味見をしない彼女を、血の気の引いた顔で見つめ、不安そうに心の中で呟いた。



「おーきすぎなければ、間に合うかな?」
 彼方 蒼(かなた・そう)は画用紙にクレヨンでぐりぐりと書き、椎名 真(しいな・まこと)と一緒に設計する。
「1からはちょっと難しいね」
「む〜ぅ。じゃー、こうしよう!ぽーんてするのは、ここで。取っ手はここーっ」
 圧力鍋に電気配線する箇所を書き、圧力計と回転用取っ手をつける位置も決める。
「よぉーし、組み立てしようっ」
 工作を作るように蒼は、配線にはんだごてでくっつけていく。
「へぇ〜改造するのか」
「にーちゃんは圧力計の設置をして!」
「うん、細かいところは蒼に任せるよ。俺は他の用意をしておこうかな」
 作業に戻りチョコとフリーズドライ苺を、細かく砕いて粉にする。
「砂糖を混ぜてっと。カレー粉の味付けは・・・こんなものかな」
 塩とコショウで味付けをし、指で取って舐めてみる。
「こっちは固まらないように気をつけなきゃね」
 水に砂糖を入れて加熱して蜜も作っておく。
「軽く砕いたピーナッツを炒っておいて・・・。それと入れ物も作っておいた方がいいね」
 紙コップの上の丸い部分を少し切り、持ち手をつける。
 下のところにユー字の切り込みを2つ入れて、起こしたコップの中にキレイな紙コップをかぽっと重ねておく。
「(夢中で作ってるね)」
 蒼いわんこ模様の浴衣を着て楽しそうに作っているわんこを、パチッとこっそり写メする。