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Zanna Bianca II(ドゥーエ)

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Zanna Bianca II(ドゥーエ)

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●27

 樹月刀真は漆髪月夜と共にコヤタを守りつつ、村を横断しているところだった。避難場所としてあらかじめ決めてあった集会所を目指していた。
「安全なところまで移動したほうがいいでしょう」
「うん。でも……いざとなったら……」コヤタは自分の銃――祖父にもらった銃であり、オミクロンの命を奪った銃でもある――を抱くようにして運搬していた。
「その手段は、勧めたくありません」だがきっぱりと刀真は告げたのである。「誰かを殺したのなら、理由がどうであれ、望む望まないに関わらず、その命とそれに関わるはずだった未来を奪うことになるのです。いわば宿命の十字架を背負うことになる……その十字架は、一章消えない」
「でも……」
「想像以上に重いのですよ、十字架は」
 刀真の言葉は厳しく、その視線も、言葉以上に峻厳であった。
 そのとき三人の前方から狙撃の音が届き、月夜は身を竦ませた。「見てくるわ」二人はそこにいて、と言い残し、瞬く間に月夜は駆けていった。
 間もなくして彼女は戻った。
「大丈夫、暗殺騒ぎがあったみたいだけど防げたみたい。犯人は反対側に逃げ……」
 刀真の剣が、黒い影のごとき尾を曳いて叩き落とされていた。剣を抜くのすら見えなかった。月夜は反射的に飛び退いたものの、手の甲から赤いものをしたたらせている。避けきれなかったのだ。
「どうして……わかった……?」怪我だって隠したはず……と言いながらクランジは黄金仮面の姿に復した。
「わかった? 違うな。円から、変身能力のある暗殺者がいると聞いた。だから念のために試しただけだ」刀真は閑かに相手を見据えた。「俺の剣である『漆髪月夜』が俺の意を読めずに攻撃をくらう事はあり得ない、これで斬られるならお前は月夜じゃない……偽物だ」その通りだったようだな、と彼は言い括った。
「……」クランジΚは方向を変えて逃走した。
 刀真は黙って、彼女が行くに任せた。
「追わないの?」というコヤタに、
「追いません。今回の俺の任務は、コヤタ、君の命を守ることです。そして、命を守るのは……」刀を鞘に戻して彼は言った。「命を奪うより、ずっと難しいことなのです」