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リアクション
(3)バビロン城−7
バビロン城、地下迷宮をゆく一行が比較的広い空間に出たとき、ジバルラが呻き声をあげた。
「あ、目が覚めましたか?」
「あん? テメェは……」
「てめぇじゃありません、加夜です、火村 加夜(ひむら・かや)、いい加減に覚えてください」
「ケッ……無茶言うんじゃねぇよ 」
気を失った状態から目覚めてすぐに飛び込んできた光景、例えそれが知った顔だったとしてもすぐに名前が出てくるかといえば…………いや、出てくるか。
「んな事より、どこだここは。つーかいい加減に降ろしやがれ」
磔にされたままのジバルラに加夜が状況を説明した。一行は今も残りの壷を探して城内を歩んでいる。
「なるほど……蓋を開けてみりゃ、とんでもねぇ奴だったってわけだ」
「……ですが間違いなく大きな戦力になりますし、「共に戦う」という約束までしましたから」
「取引だろ? 思いっきり足下見られてんじゃねぇか、情けねぇ」
「それは……」
誰もが感じていた、しかし、どうすることも出来なかった。このまま何も手を打たなければパイモンの猛攻に耐えられないかもしれないという不安が皆を弱気にさせていた事もまた事実。
「まぁいい。何にしても面白くなってきやがった」
「?」
「パイモンを殺せば「ザナドゥ」、ベリアルを殺せば「魔族の国」が手に入るってわけだ。チャンスが増えたぜ」
「はぁ……まだそんなことを」
『紫銀の魔鎧』を装着して以来、彼はずっとそんなことを言っている。気絶した時のショックで我に返ると思っていたのですが……。
「どうしてそこまでして「国」が欲しいのですか?」
「それは……………………何でテメェに、んな事言わなきゃならねぇんだ」
「てめぇじゃありません、加夜です」
「話を逸らすんじゃねぇよ」
「先に逸らしたのはあなたの方です」
「あなたじゃねぇよ、ジバルラだ」
「またそうやって……」
「マルドゥークを越えるため」
「!!!」
聞き慣れない声に誰もが一斉に身構えた。一行の後方から聞こえた声。声の主、そしてジバルラの野望を言い当てたのは『紫銀の魔鎧』の軍勢を率いるゼパルだった。
「マルドゥークを越えるため、マルドゥークと肩を並べるためには国の一つや二つ持ってないと話にならない、でしょう?」
「てっ……適当なこと言ってんじゃねぇ! 何を根拠に―――」
「私は聞いただけよ、「我が同胞の声」をね」
「同胞?」
「そうねぇ…………なるほど。なかなか面白いわ」
装着者が抱く野望、それは『紫銀の魔鎧』が執着する野望。その本心をゼパルは聞き取ることが出来るという。例えそれがジバルラの魔鎧のように心を閉ざした魔鎧の声だとしても。
「何をわけの分からないことを。俺は俺だ! 誰にも操られてなんかいねぇ!」
「面白いほどにハマってくれたみたいね。嬉しいわ。もう少し暴れ回ってくれたら最高だったけど」
「ああ゛?」
「それに比べて、」
ゼパルの視線が師王 アスカ(しおう・あすか)に……いや、彼女が纏うホープ・アトマイス(ほーぷ・あとまいす)へと向けられた。
「あなたたちは随分と仲良しになったみたいね」
「なっ……だ、誰が仲良しか!!」
ホープが即座に反論した。
「これはアスカが無理矢理に俺を着ようとしたから仕方なく鎧状態になっただけで―――」
「うぅ〜ホープぅ〜、やっと「アスカ」って呼んでくれたね〜。うりうり〜」
「ばかっ、止めろ! 引っ付くんじゃねぇ」
聖職服姿のホープをパタつかせたり頬ずりしたり。じゃれあっている二人の端で、二人の魔族が対峙していた。
「抱く野望に盲目になりすぎない、だったかしら?」
言うはベリアル、永い時を『封魔壺』の中で過ごした悪魔。
「ベリアル……あなた……」
ゼパルの顔には「よりによって」という彼女の想いが明確に現れていた。
狼狽は必然。パイモンの命を受けたゼパルはベリアル以外の悪魔を手中に収めるつもりだったからである。
「相変わらず気味の悪い鎧をゾロゾロと連れてるのね」
「あなたこそ人間に泣きつくなんて、しばらく見ないうちに随分と堕ちたものだわ」
一触即発。ゼパルが10体の『紫銀の魔鎧』と共に動けば、契約者たちも応戦せざるを得ない。手綱を握られいるような、そんな感覚さえしたのだが、それでも開戦の口火を切ったのは意外な事にゼパルでもベリアルでもなく、アスカだった。
「あ〜もう! 我慢できない! 我慢しないよっ!!」
芸術への愛を爆発させるようにアスカは『名も無き画家のパレットナイフ(ウルクの剣)』を手に飛び出した。
「さっさと降伏して、私の絵のモデルになるのよっ! ゼパーちゃん♪」
紫銀の輝きに魅せられて。ゼパルをスケッチするべく、アスカが彼女に飛びかかった。と同時に―――
「任務、確認」
アスカの意を汲んで、ハーモ二クス・グランド(はーもにくす・ぐらんど)が『禍心のカーマイン』を構えた。
アスカの狙いはゼパル、ならば自分はその取り巻きを散らせば良い。
「敵数は10体…………?」
妙な違和感。その正体にハーモ二クスはすぐに気付いた。戦闘態勢を取っている者が少ないのだ。すぐに移行できなかった理由、それは彼らが抱えている『封魔壺』にあった。
「なるほど…………それなら」
ハーモ二クスは魔鎧の集団に向けて『弾幕援護』で先に仕掛けた。
迷宮内で探し出し、確保していたのだろう。魔鎧たちは一人につき2つの『封魔壺』を保持している。戦うにしても、まずはそれらを安全を確保しなければならない。
「ここで封印を解くわけにはいかないのよ」
意図しているのか、いないのか。どちらにせよベリアルの言葉は斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)の耳に届いた。
「自分たちに従うかどうか、説得できるかどうか分からない、だからこんな所で封印を解くわけにはいかない」
「こんな所で?」
「戦場の中で封印が解かれたなら。どっちにつくと思う?」
「なるほど……そういう事ですか」
ザナドゥの悪魔の根底には人間への恨みがある。封印が解かれ目覚めた場所でパイモン軍と地上軍が戦っていたのなら。一時的にせよ戦力としての算段は可能。
「ネル、行くぞ」
「はい」
これだけ聞けば十分。邦彦はパートナーであるネル・マイヤーズ(ねる・まいやーず)と行動を開始した。
『機晶爆弾』を魔鎧軍団の足下へと投擲、ハーモ二クスの『弾幕援護』で足止めされていた魔鎧たちが左右に散り退く。
「はぁっ!!」
死角からの攻撃。『ブラックコート』で身を隠したネルが『破邪の刃』を放つと、2体の魔鎧が弾け飛んだ。が、面白いのはここからだった。
「邦彦! あれだ!!」
「ん?」
正体不明、捉えきれない敵からの攻撃を受けた事で『紫銀の魔鎧』たちは無意識に同じ行動を取っていた。一つの壷を守ろうとする行為、つまりは―――
「それが肝か!!」
数ある壷の中で最も重要な壷。それを破壊し、中の悪魔を解き放つ事が出来たなら。場をかき回す役としては最適と言えるだろう。
邦彦とネルは一度左右に散ってから『バーストダッシュ』の加速をもって双方から距離を詰めてゆく。
「む……」
2体の魔鎧が壁のように進路を阻む。魔鎧が振るう『ハルバード』の間合いには飛び込まずに、二丁の銃で対抗する邦彦だったが、相手も致命傷を避けるが故に、なかなか思うように進むことが叶わない。
さすがは鍛えられた軍兵と言ったところか。しかしその間にもネルは『栄光の刀』と『ヴァルキリーの脚刀』で押し切っては、着実に距離を詰めていった。
「ちっ! 何をしてるのよアイツ等は」
「だめダメェ〜、行かせないよっ!!」
上空からの狙撃。『強化光翼』で宙を舞うアスカが『ファイアヒール』の単銃でゼパルを狙撃していた。
「くっ……邪魔よ!」
上空射撃を受ける中、ゼパルは味方の肩を足場にして宙へと飛び出した。
ゼパルの『ハルバード』とアスカの剣が空中で何度も衝突した。
「ぐっ……」
「きゃっ!」
腕力で上回ったのはゼパル、しかし先に地に降りるのもゼパルである。そこにアスカたちの罠が待ち受けていた。
地上で待ち伏せていたハーモ二クス・グランド(はーもにくす・ぐらんど)、弾幕の中から現れた彼女をゼパルが疾突で貫いた―――が、これが罠。
次の瞬間、ゼパルの『ハルバード』はハーモ二クスの狙撃によってその手から弾き離されただけでなく、背後に回ったアスカによって首に腕を回されて捕らえられてしまっていた。
「捕まえた♪」
「ぐっ……離せ!」
幾ら暴れても動かない。今度は『鬼神力』を発動している、先程のようには力負けもしない。
「排除対象、確保。任務完了」
ハーモ二クスの状況報告。その手にはゼパルに貫かれた『コピー人形』の腕が握られていた。
「ここまでのようだな、ゼパル」
「お前……」
姿を見せたのは中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)……いや、今は綾瀬に憑依した中願寺 飛鳥(ちゅうがんじ・あすか)だっただろうか。彼の手には封印の成されていない『封魔壺』と、封印符があった。
「悪いな、俺も封印されてる悪魔って奴を見てみたいんだ。少し黙っててくれねぇか」
「バカ言うな! あの壷は……グラシャボラスはベリアルの―――」
「この目で直接確かめるよ」
「まっ……待て!!!」
封印符がゼパルの額に張られると、壷口とゼパルの全身が同時に輝き、そして光の消失と共にゼパルの体も消えていた。
残ったのは―――
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