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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?

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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?
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リアクション


「キャィィィィーーンッ!?」

 カイがミノタウロスに蹴られて、倒れる。
「ああ、カイ!」
 本気で心配した衿栖が今まで以上の迫真の演技でカイに駆け寄る。
「カイ! しっかりして、カイ!!」
 ミノタウロスとの戦闘を続ける一同をバックに、倒れたカイの元に集まる衿栖、未散、サトミ、朱里の魔法少女達。
「そんな顔しないでワン……衿栖に未散(相当痛いのだが……)」
「カイ……」
「思い出すワン。キミ達がどうして魔法少女になったかを……。キミ達には守りたいものがあったはずだワン……(私は家族を探さねばならないのだ……)」
 カイの言葉を聞いていた四人がハッとした顔を見せる。
「個人同士の争いは何も、生まないワン。だから……ミノタウロスを……倒して……ほし……」
 ガクリと息を引き取るカイ。
「カイーーーーッ!!」
 衿栖がカイの亡骸を抱きしめて泣く。
「……考えてみれば、学園に来て、カイとは長い付き合いだったよな」
 未散が涙を拭う。
「僕とみっちゃんでよく散歩に行ったよね……」
 サトミの言葉に朱里が目に涙を溜めて笑う。
「そういえば、何でもよく食べるカイにチョコやネギを与えようとして衿栖に怒られたよね」
 衿栖がカイをそっと地面に置き、立ち上がる。
「……衿栖」
「未散さん、サトミさん、朱里さん……今、私達が出来ることは何でしょうか?」
「……」
「ミノタウロスを倒す事! これしかないんじゃないでしょうか!」
「待て、貴公ら!」
 映画撮影という事を知らないセルシウスが介入してくる。
 ADのハルは止めようとしたが、統は「後で何とか出来る」と言い、そのまま撮影を続けさせる。未だ白いワンピース姿のセルシウスには、後ほど女装趣味な村人の役が与えられたらしい。
「貴公達がアイドルなのはわかる。だが、それでは貴公らの身が危険だ。ミノタウロスは、美少女や美女を……」
 衿栖は突然の介入にも柔軟にアドリブで対応する。
「知っています? 私の生まれた国ではアイドルは偶像って書くんです」
「む!?」
「ファンは私達、アイドルという偶像に自分の理想を重ねるんです。セルシウスさんの状況と似てませんか?」
「理想……」
「私達はファンの期待を裏切らない為にいつも全力で偶像を演じます。だからセルシウスさんも、ね?」
 セルシウスに微笑んだ衿栖が、顔をミノタウロスに向ける。
「私は、魔法少女アイドル☆えりす! 平和を脅かす魔物よ! 覚悟しなさい!!」
「一人で目立つのは良くないな、衿栖」
 未散が不敵に笑って近寄る。
「魔法少女アイドル☆みちるを忘れてなるんじゃない? 二人合わせてツンデレーション、だぜ?」
 そう言って衿栖と肩を組む未散。
 サトミと朱里も衿栖達の横に並ぶ。
「朱里さん、サトミさん……」
「朱里達は悪の魔法少女よ! でも……今は、カイのために手を貸してあげる」
「みっちゃん、僕もみっちゃんを泣かせたヤツは許さない!」
「サトミ……おまえ……」
「では、行きましょう……これが私達の最後の戦いです!」
 四人は皆が戦うミノタウロスへと各々の武器を手に走っていく。
「私は……」
 セルシウスが自分の掌を見つめる横を、自分の出番を終えたカイがややよろめきながら歩いて行く。

× × ×


 ミノタウロスと戦う一同は、徐々にではあるが確実にダメージを与えていった。
 セルシウスの読み通り、狭いこの場所では、ミノタウロスは四肢を動かすのもやっとであり、攻撃のパターン等大体読めたのである。
 そこに新戦力の四名の自称魔法少女達が新たに加わる。
「「スーパーウルトラハイパーヤンデレパワー!」」
 サトミと朱里が武器を持った自らの体を弾丸のようにに変え、ミノタウロスに特攻する。
―――ドンッ!!
 ミノタウロスの眉間に当たる強烈な一撃。
「今よ、衿栖!」
「みっちゃん!!」
 互いに想い人の名を叫んだヤンデレーションの二人は、ミノタウロスの炎をまともにくらい、地面に叩きつけられてバウンドする。
「衿栖!!」
「未散さん!!」
 衿栖と未散が、同時にファイアストームを放つ。尚、ファイアストームは本来降り注ぐ炎を呼び出す魔法であるが、今回二人は手から出す。
「「エターナルフォースブリザードファイアー!!」」
 巨大な炎がミノタウロスの顔面に向かうも、ミノタウロスも炎を吐き応戦する。
 ぶつかる炎と炎が周囲に強烈な熱風を吹き荒れさせる。
「アカン! 焼肉はまだ早いでぇぇ!!」
 社の叫ぶ声が聞こえるが、今は必死なので未散は突っ込むのを止めた。
「駄目! 押されてます! 未散さん、もっと力を出して!!」
「そ、そんな事言ったってぇぇ……コレが限界……」
 その時、ミノタウロス目掛けてセルシウスが槍を放つ。
「くらえ、ミノタウロス!!」
 セルシウスの脳内では、二人から気を逸らし、その間に決着をつけてもらおうとする完璧な計算が出来上がっていた。