リアクション
第二十六試合 『不戦勝が続きましたが、それほど、激戦が続いているということでもあります。 さあ、長らくお待たせしました。続いては、先ほどの樹月刀真選手のパートナー、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)選手対、エリエス・アーマデリア(えりえす・あーまでりあ)選手の戦いです』 「刀真、酷い……」 『おおっと、何か、漆髪月夜選手、怒っています。先ほどの樹月刀真選手の戦い方が気に入らなかったのでしょうか。何か、エリエス・アーマデリア選手にとばっちりがいきそうです』 「どちらにしても、私の方が上だってことを教えてあげるわ」 『試合開始です。エリエス・アーマデリア選手、素早くティアマトの鱗を投げました。サイコキネシスで微妙に弾道を変えながら漆髪月夜選手の首のリボンを狙います。 おおっと、漆髪月夜選手、大技を出しました、剣の結界です。エリエス・アーマデリア選手の投げた鱗をあっけなく粉砕し、雨霰と降り注がせます。その一つが、エリエス・アーマデリア選手の薔薇飾りを破壊した。 漆髪月夜選手の勝利です』 「こんな所で負けてしまうなんて。えええっ、リベルはまだ勝っているですって!? それじゃ、私の方が上だって証明できないじゃないの」 『エリエス・アーマデリア選手、何か他の理由でがっくりと肩を落としました。よく分かりませんが、頑張ってください』 第二十七試合 『緋桜 ケイ(ひおう・けい)選手の不戦勝です』 第二十八試合 『さあ、参りましょう、水橋 エリス(みずばし・えりす)選手、シエル・セアーズ(しえる・せあーず)選手の登場です』 「きゃー、エリス、頑張ってー!」 相変わらず、ニーナ・フェアリーテイルズが大きな応援旗を振って声援を送っている。 『客席からも、黄色い声援が飛びます。水橋エリス選手、軽く手を掲げてそれに応えました。 対するシエル・セアーズ選手、一回戦のアイドル衣装とは違って、グレイスフルローブで登場です。本気度がアップしています。これは、端から激戦の予感か。 さあ、試合開始です。 水橋エリス選手、一回戦で決め手となった雷弾攻撃を放ちます。シエル・セアーズ選手、蒼白の杖でそれを凌いだ。逆に、炎の聖霊を解き放ちます。 水橋エリス選手が炎につつまれた。けれども、なんとか火術で炎を振り払いました。大地の祝福で、ダメージを回復します』 「そんな暇なんか与えないんだもん」 『おおっと、シエル・セアーズ選手、バニッシュで連続攻撃です。水橋エリス選手、これにも耐えますが、かなりのダメージがいったようです。たまらず、大型騎狼に飛び乗って、回避を高めます。 シエル・セアーズ選手、怒濤の攻撃です。凍てつく炎を放ちます。水橋エリス選手、大型騎狼の動きに助けられながら、指パッチンで火球を弾き飛ばして応戦します。おお、シエル・セアーズ選手の方も、ペットのパラミタペンギンが自ら盾となって火球を防ぎました』 「我は射す光の閃刃!」 『おおっと、大技です。シエル・セアーズ選手の攻撃が大型騎狼にダメージを与えた。水橋エリス選手の動きが止まります。さらに、その身を蝕む妄執で追い打ちをかける。水橋エリス選手、何かを見て苦しんでいます。これは、ピンチです。 おおっと、水橋エリス選手、何かを口に持っていった。牧神の笛です。うわ、この音は酷い。思わずシエル・セアーズ選手も耳を塞いでしゃがみ込みます。 さあ、もう時間がありません。 両選手、最後の力を振り絞ってなんとか攻撃を繰り出します。 ああ、空が割れて崩れ落ちてきます。水橋エリス選手の崩落する空です。輝く破片が、シエル・セアーズ選手の上に降り注ぎます。 しかし、割れた空から閃光が走りました。シエル・セアーズ選手の天のいかづちです。 なんと、ダブルノックアウトです。両選手、倒れたまま動けません。はたして立ちあがれるか……。 ダメです。両者起きあがれません。相討ちです。 救護班、武舞台にむかってください』 第二十九試合 『フォン・ユンツト著 『無銘祭祀書』(ゆんつとちょ・むめいさいししょ)選手の不戦勝です』 第三十試合 『ミルゼア・フィシス選手の不戦勝です』 第三十一試合 『壮絶な魔法合戦の後、不戦勝が続きましたが、お待たせしました、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)選手と、初登場、 魔導書 『複韻魔書』(まどうしょ・ふくいんましょ)選手です』 「ふふふ、わらわの力見せてくれよう」 魔導書『複韻魔書』が、周囲にスパークを撒き散らしながら武舞台に現れる。頭の上には、毒林檎がシンボルとして載っていた。 「いい試合にしましょうね」 自信満々の魔導書『複韻魔書』に対して、六本木優希が声をかけた。 『さあ、試合開始です』 「焼き尽くしてくれよう」 魔導書『複韻魔書』が、火球を六本木優希にぶつけてきた。 「この程度なら……!」 六本木優希がヴァーチャーシールドでそれを受けとめる。 「行きますっ!」 今度は、六本木優希がライトニングランスをしかける。 「極光輝!」 素早く、魔導書『複韻魔書』が光術で目くらましをして逃げる。 「見切りましたよ。次は外しません」 視力の回復した六本木優希が、魔導書『複韻魔書』を見据えた。 「なんの、アブソリュートゼロ!」 魔導書『複韻魔書』が、今度は氷術を放つ。 「見切ったと言って……あうっ!?」 狙いの甘い攻撃をバーストダッシュで避けた六本木優希の足が滑った。魔導書『複韻魔書』の攻撃が、武舞台の床を広範囲に凍らせていたのだ。 「ね、狙い通り……なのだよ。止め、わらわにしるされし特大魔法、メテオライト!」 魔導書『複韻魔書』が、自身の本体である魔道書を開いて唱えた。頭上に極大の火球が出現する。 「とりゃあーっ!!」 魔導書『複韻魔書』が、火球を六本木優希に投げつけた。 足許の滑る六本木優希が避けきれずにシールドで受けとめようとする。シールド表面で、激しく火炎が飛び散った。それが飛び火し、六本木優希の腕章が焼け落ちる。 『勝者、魔導書『複韻魔書』選手です』 「やられちゃいましたね」 服のコゲをパンパンと叩いて落とすと、六本木優希が魔導書『複韻魔書』に握手を求めた。 第三十二試合 『さあ、第二回戦も最終試合となりました。ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)選手対、鑑 鏨(かがみ・たがね)選手です』 「先ほどはたわいない試合となってしまいましたが、今度は真剣勝負と行きましょう」 ウィング・ヴォルフリートが挨拶をしたが、鑑鏨は静かにたたずむだけであった。 奇しくも、二人共胸に下げた鏡をシンボルとしている。 「まずは、小手調べです」 ウィング・ヴォルフリートが、電光石火で真空波を放った。鑑鏨のレッドラインシールドが直撃を受けて粉々に砕ける。 その攻撃に続くように一気に踏み込んだウィング・ヴォルフリートが、ドラゴンスレイヤーで鑑鏨に斬りつけた。だか、鑑鏨が、鈍でそのドラゴンスレイヤーを叩き折る。 互いに武器と防具を一瞬にして失う。 それに臆することなく、鑑鏨が足払いをしかけた。ジャンプしたウィング・ヴォルフリートが、大上段にもう一本のドラゴンスレイヤーを打ち下ろす。 難なく避けたかに見えた鑑鏨が、背後からウィング・ヴォルフリートの首筋を狙って回し蹴りを放とうとしたが、突如その足許が割れて溶岩が噴きだした。あわてて後ろに飛び退いて距離を取る。 「これは避けられますか? 枢孔閃燐剣!!」 再びウィング・ヴォルフリートが真空波を乱舞させた。鑑鏨が鞘を使ってなんとかそれをさばいていく。 『さあ、もう両者時間がありません。決着は……』 時計を見て、シャレード・ムーンが叫んだ。 それを聞いた鑑鏨が、決着をつけるべく、呼び寄せたシルバーウルフたちと共に突っ込んでいった。 「これで決める。我が剣の下、那由多に散れ! 飛燕剣奥義、枢孔飛燕剣!!」 迎え撃つウィング・ヴォルフリートが、多段の剣技を繰り出した。連続してシルバーウルフを排し、鑑鏨を斬りつける。だが、鑑鏨も、双つ燕と自らが呼ぶ切り返し技を放っていた。 ウィング・ヴォルフリートのタイラントアーマーはなんとか斬撃を防いだものの、胸の神獣鏡は真っ二つになっていた。だが、ウィング・ヴォルフリートの剣も、鑑鏨の鏡を突き、罅を入れていた。 『両者、相討ちです!』 「やはり鈍ってますね。新天地で鍛えなおすとしましょう。いい勝負でした。また戦いましょう。今度はさらなる真剣勝負でね」 二つになった神獣鏡の破片を拾いながら、ウィング・ヴォルフリートが鑑鏨に言った。 |
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