校長室
合コンしようよ
リアクション公開中!
★ ★ ★ 「ダイヤモンドの騎士さんも、ゆる族なんですよね。さ、サインください!」 全参加ゆる族制覇を目指す立川るるが、ダイヤモンドの騎士に色紙を差し出した。 「これでいいですか」 「ありがとうございます。出汁はかつおだしが好きなんです!」 キュッキュッとマジックの音を響かせてサインしてもらうと、立川るるができあがったばかりのサイン色紙をだきしめてよく分からないアピールをした。 「もしよろしければ、これ、るるの名刺です。もし、第三竜騎士団の方でなんか人員補充とかの話が合ったら、よろしくお願いします。それじゃあ」 しっかりと就職活動まで行ってから、立川るるが去って行った。 入れ替わりにやってきたのはファトラ・シャクティモーネだ。ころころとミニサイズのビール樽を転がしてくる。 「ちょっと、全部持ってかれたの!?」 それを見たシャレード・ムーンが、今日のアシスタントたちを問い質した。フリードリンクとは言え、限度というものがある。 「しりませーん」 「見てませーん」 「いいんじゃないの、好きにすればさあ」 なんとも、いいかげんな返事ばかりが戻ってくる。 「これは、帝国名物の一気飲みが見られるかもー」 ティア・ユースティが、ちょっとわくわくしながら言った。 「そんなこと、帝国名物にありましたっけ?」 聞いたことがないと、シャレード・ムーンが聞き返す。 「今決めましたー」 しれっと、ティア・ユースティが答える。 「お近づきの印に、いかがかしら、一樽」 ファトラ・シャクティモーネが、ドンとビールの樽をテーブルの上においた。 「これは、かたじけない。いただきます」 軽く礼を言うと、ダイヤモンドの騎士が、ビール樽にストローを突き刺してチュウチュウ吸いだした。フルフェイスの騎士兜を被っているので、いたしかたないというところだ。本当なら、兜は脱いで飲食したいところだが、ゆる族である以上着ぐるみの一種である鎧兜は脱ぐことができなかった。 それにしても、思いっきり酔いやすい特殊な飲み方をしているのに、ダイヤモンドの騎士は別段酔った様子もない。もっとも、鎧兜の中はどうだか分からないが、それはうかがい知れようもなかった。 「ふふふ、いい飲みっぷりですね」 しきりと秋波を送りながら、ファトラ・シャクティモーネが言った。 「さすがは、帝国第三騎士団でも、帝国の盾と称される強者ですね。あなたと創龍のアーグラ様がいれば、帝都の守りは完璧ですわ。そういえば、第三竜騎士団には、あなたの対極である帝国の矛とも呼べるキリアナ・マクシモーヴァ様という騎士がおられるとか。プリンス・オブ・セイバーの再来とまで言われているようですから、さぞかしお強いのでしょうね。故アスコルド大帝の娘であるアイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)様と比べたら、いったいどちらがお強いのでしょう」 ファトラ・シャクティモーネが、ダイヤモンドの騎士の話しやすそうな話題を慎重に選んで話しかけた。 「キリアナ卿とアイリス卿ですか。そうですね、力のアイリス卿、技のキリアナ卿というところでしょうか。実際に戦えば、どちらが勝つとも言えませんね。そのときの状況と、時の運というところでしょうか」 さすがにどちらが勝つと断言はできない立場なのか、ダイヤモンドの騎士が、両者を褒め称えて受け流した。 ダイヤモンドの騎士がチュウチュウしている酒樽に自分もストローを差し込んで飲みながら、ファトラ・シャクティモーネが愛想よくその話を聞き続けた。しかし、こちらはそんな飲み方をしては、もろに酔いが回ってしまう。 「キリアナ様は、絶世の美少女とうかがいますが、ダイヤモンドの騎士さまは、キリアナ様とアイリス様とを比べて、どちらがお好みですか? やはり、胸の大きい方でしょうか。そういうことでしたら、私も脱いだら凄いんですのよ」 だんだんと酔っ払って大胆になったファトラ・シャクティモーネが、ダイヤモンドの騎士にもたれかかりながら訊ねた。そのまま、答えなどまともに聞かず、ダイヤモンドの騎士の身体のあちこちを触りまくる。 「本当に、全身がとても固いのかしら……」 などと言いつつ、ファトラ・シャクティモーネがダイヤモンドの騎士の股座まで手をのばすと、突然、その身体が軽く吹っ飛ばされて椅子から転げ落ちた。 「あいたたたた……」 「大丈夫ですか?」 あわてて、ダイヤモンドの騎士がファトラ・シャクティモーネを助け起こす。 「固いのはあたりまえです。なにしろフルプレートアーマーですから。頭の先から足の先まで、たとえ股座を蹴りあげられようとも、すべて跳ね返してしまうのですから。おいたはいけませんですよ」 そう言って、ダイヤモンドの騎士が、ファトラ・シャクティモーネを軽くたしなめた。 ★ ★ ★ 「ただいまですうさ。あれっ、鉄心がいない?」 ホレーショ・ネルソンのサインをもらったティー・ティーがパビモンたちのいるテーブルに戻ってくると、ちっちゃいキャラたちの保父さんをしていたはずの源鉄心の姿が消えていた。 「鉄心なら、黎明華に連れて行かれたましたわ。エロいウサギよりも、黎明華の方がいいようですわね」 「ウサギは、エロいっていう人の方がエロいうさー。だから、エロいのは鉄心うさー」 イコナ・ユア・クックブックに説明されて、ティー・ティーが言い返した。 「まあまあ、お菓子ばっかり食べている者たちの世話よりも、そちらの方がよかったんだろうリラ」 「ミラ?」 「こば?」 リラードに言われて、お菓子を頬ばっていたミラボーと小ババ様が何か言われたのかと振り返った。 「ふふ、ここにいい女がいるというのに、気がつかないとはだめだめナウ」 「トレリン、難しいことは分からないリン」 ナウディはまだちょっと合コンの意味を分かっているようだが、トレリンは未だによく分かってはいないようであった。 「まあ、たまには、のびのびとさせてあげましょうよ」 なぜか、源鉄心と入れ替わるようにパビモンたちの世話をしている鬼龍貴仁が言った。 「イコナちゃんもどうですか、新しいお菓子が来ましたよ」 「もちろん、いただきますわ♪」 ジャージに着替えた紫月唯斗がおいていったお菓子を鬼龍貴仁が勧めると、イコナ・ユア・クックブックは二つ返事で飛びついた。 一緒にお菓子をみんなで食べながら、なんだかほっと落ち着いてしまう鬼龍貴仁であった。一応、ちっちゃい者たちにはお菓子のおかげでモテモテである。 「リラードさんも、お菓子どうですか。ウサギサブレがありますうさ」 「いただくリラ」 ウサギの形をしたサブレをティー・ティーから受け取ると、リラードがポリポリとそれを嘴でついばんだ。 「知ってますうさ? ウサギは一羽二羽と数えますうさ。ウサギは、鳥のお仲間さんなんですうさ。私たちも、仲間同士仲良くしましょううさ。うさささささ……」 言いつつも、ティー・ティーの口許がでへへっとゆるんでいる。 「ウサギって、肉食系でしたっけ?」 下心は隠しなさいよと、イコナ・ユア・クックブックが心の中でつぶやいた。