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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

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激闘!?『変態コレクション(変コレ)』!

リアクション


【9】


 ほてほてと4人の小さな女の子が歩いていた。
 外見年齢でいうと5歳から12歳くらいの子たちだ。
 自分の置かれている状況がよく飲み込めてないらしく、困った顔で辺りをきょろきょろ見回している。
「……えぇと、ここどこ?」
 サリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)は不安そうにミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)を見た。
「まぁ、何かに巻き込まれたのは確かっぽいけど……」
「と言いますか、どうして変態さんがこんなにいっぱい居るんでしょう……?」
「よくわかんないの……。変態さんばかりなの……」
 徳永 瑠璃(とくなが・るり)及川 翠(おいかわ・みどり)も困惑している様子。
 しかしこんな子ども達、変態にとっては絶好の獲物である。人気のないところに入った途端、ぞろぞろと人相の悪い変ムスが集まって来た。
 ニタニタと笑うロリコンにボウガンを持った快楽殺人者、放置プレイが大好物の変態に人肉まんじゅう屋さん。
「なんだ迷子かい、お嬢ちゃん?」
「へへへ、子どもっていいよなぁ……。トロくって的にするにゃちょうどいいんだよなぁ……」
(放置プレイ中)
「獣も人間もまだガキのうちに食べるのが美味しいアル」
「おじさん達……変態さんなの……?」
 翠は言った。
「そうだよ、くくく……」
「変態さんは……」
「?」
「変態さんは! だめなのーーっ!!」
 翠とサリアの戦闘力が大幅に上昇した。
 ただのお子様と思ったら大間違い。2人にとって変態は天敵、彼女たちは変態に対して過剰に攻撃的になる変態バスターなのだ。
 ここに囚われたのもそれが原因である。
 AIは“変態をバスターする変態”として翠とサリアを、あと……巻き添えで瑠璃とミリアを連れて来たのだ。
 そしてこの世界では、相手のレアリティに応じてこちらのレアリティも変化するという特殊な性能を身に付けている。
 敵変ムスはロリコンが【レア】、残り3人は【アンコモン】。

 まず快楽殺人者と対峙したサリアのレアリティが【アンコモン】に変化する。
「むぅっ、変態さんなんて、やっつけるんだからぁ〜っ!」
「粋がるなよ、嬢ちゃん。同レアリティならただ強いほうが勝つんだ。てめぇじゃ俺に勝てね……」
 ドギュン!!
 快楽殺人者の持っていたボウガンがばらばらになって吹っ飛んだ。
 目をぱちくりさせる彼。
「は、はれ……?」
「べーだっ! 変態さんには負けないもん〜」
 機晶姫のようにも見えるが、サリアはギフト。左腕を『対変態ギフトスナイパーライフル』に変化させて狙撃したのだ。
「……え? じゅ、銃!? あ、あのちょっと待ってもらったりとか……」
「しないもん〜」

 こちらでは瑠璃が人肉まんじゅう屋さんと対峙している。
 別に彼女は変態バスターというわけではないのだが、雑なAIの仕事で2人と同じような性能にされてしまったようだ。
 よってレアリティが【アンコモン】に。
 とは言え、2人と違って好戦的ではないので、両手に出刃包丁を構えたまんじゅう屋さんの様子を見ている。
「なんだ、オマエ。人間かと思ったら獣人じゃないアルか」
「そうですけど……?」
 瑠璃は東京で生まれ育った狸獣人だ。
「しかも狸って。狸肉は臭いアルからなー。まんじゅうにするには向いてないアルヨー」
「むぅ……だったら、まんじゅうにしないでくださいよー」
「そういうわけにはいかないアル。四つ足のものは椅子だって食べるのが祖国の掟アル。しょうがないから我慢して食うアル」
「きゃっ!」
 ぶんぶん振り回される包丁から、瑠璃はちょこまかと逃げまわる。
「……もう! やめてくださいっ!」
 ファイアストームでまんじゅう屋を攻撃。
 火だるまになったまんじゅう屋がぴょんぴょん飛び回るその足元に、容赦なくインビジブルトラップを設置。
 トラップを踏んだ彼はバリバリと全身に走る激痛に「アイヤー!!」と飛び上がった。
 トドメにバニッシュ!
「邪悪な人はお帰り下さいっ!」
 聖なる光に包まれた邪悪なまんじゅう屋は「こりゃたまらんアルー!」と逃げていった。

 最後のロリコンに挑むのは翠。
 ロリコンと対峙した翠のレアリティが【レア】にまで上昇。
 デビルハンマーを振り上げてロリコンを攻撃する。
「一撃必殺なのーっ!」
 レア効果によってパワーアップした彼女の一撃は地面をクッキーのように粉砕、砕けたアスファルトが衝撃で空中に舞い上がった。
 間一髪、直撃だけは回避したロリコンが宙を舞うアスファルトを足場に飛び回る。
「……お嬢ちゃん、ただ者じゃないねぇ。でもね、おじさんもただ者じゃないんだよ」
 ロリコンはカッチャカッチャとベルトを外して、パンツごとズボンを脱ぎ捨てる。
「はぁはぁ……おじさんがいいものを見せてあげるからねぇ……」
「!?」
 それはロリコンの大技のひとつ『ホワイティレイン』の構えだった。
 どんな技なのか、ここで語るとたぶんリアクションに反映出来なくなってしまうので控えるが、とにかくヤバいのは確かである。
 おそらくこの技を食らっても、ちょっとあったかいぐらいなものでダメージはないだろう。
 だが、絵的には死んでしまう。
「はぁはぁ……イクよ……」
 翠はカッと目を見開く。
「変態さんはやっつけるの!」
 ハンマーを手にぐるぐると回転。遠心力を味方につけて、どっせぇーーーいっと真上に向かってハンマーを発射する!
 ロケットのように垂直に打ち上がったハンマーは、ホワイティレインの発射砲台に直撃!!
「はぁ……はぁ……イ……おごぉっ!!」
 白目を剥いたロリコンは真っ逆さまに地面に叩き付けられた。

「……あら、今回は出番なしみたいね」
 ミリアは肩をすくめた。
 一応、彼女にもレアリティ変動の特殊能力が備わっているのだが、基本レア以上の敵としか戦う気がない。
 放置プレイの変態は何もして来なかったので放置している。
 特にすることもないので、AIをよびつけた。
 目の前にAIの画面が開く。
「ちょっと仕事が適当なんじゃないの? 翠とサリアがアレだからって、私と瑠璃まで一緒くたにしなくても……」
『ミリア様は個別に変態認定されております』
「はい? 変態? 私が? どこが変態なのよ?」
 画面に、ぬいぐるみや小動物などもふもふしたものに頬を寄せる彼女の写真が何枚も出てきた。
 破顔した彼女の顔は、えへらえへら、という言葉で表すのが的確なほど幸せいっぱいに崩れている。
「……楽しそうな写真じゃない」
『もふもふマニア、ということで変態認定させて頂きました』
「もふもふマニア……だ、だってしょうがないじゃない。あんなに可愛くって触り心地がいいもの、他にないんだもの」
 自覚はあるようだ。
「あ、でも、もふもふと一口に言っても結構奥が深いのよ。柔らかさにも色んな種類があるの。毛質が固めで触り応えがある……」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、終わったの」
「え?」