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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—

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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—
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【おやすみなさい】


 夕方を過ぎると、あれだけ騒がしかった工房の中がしんと静まり返った。
「皆帰っちゃったわね」
 皆が通った後の扉を見つめてジゼルが呟くのに、さっきまでそこで皆を見送っていたクロエが頷く。
「なんだか、ちょっとさみしいわ」
「今日はとても賑やかでしたからね。終わっちゃうのは寂しいですけど、これでおしまいじゃないです。
 クロエさん、また皆さんで一緒に遊びましょう」
 豊美ちゃんがそう言い終わると同時に、扉が開いて破名と紺侍、アレクが帰ってくる。皆が手伝ってくれたプレゼントは、当初予定していたものよりもはるかに豪華に?大きくなり、車には到底収まりきらなかったのだ。
「配送の手続き、終わった?」
「ああ」
 リンスの質問に頷いた後、破名は彼とクロエを交互に見、口を開いた。
「今日は本当に世話になった。この恩をどう返していいかわからない。
 けれど、よければ一度院に遊びに来てはくれないか?」
 破名の持ちだした提案に誰よりもキリハが驚いた。振り返って「いいのですか」と聞き破名に頷かれて、キリハはリンスに向き直る。
「荒野なのでこちらのように遊べるようなところはありませんが、その時には、精一杯お持て成しさせていただきます」
「場所は覚えたから、その気になったら連絡一つあればいい。待たせず迎えに来る。今日は本当にありがとう」
「こちらこそ。院には今度お邪魔させてもらうよ」
 大人のやり取りをじっと見ていたクロエに、ジゼルが笑いかける。
「凄いのよ、破名と手を繋ぐと、何処へでも行けちゃうんだから」
「えっ、そうなの? はなおにぃちゃんってまほうつかい?」
 口を開きかけた破名に何も言うなと牽制するような視線を送りながら「はい」と即答したキリハだったが、直後背伸びをしてアレクの耳元で「ここはこの流れ的にそう言ったほうが無難です、よね?」と付け足してくる。
 そんな部分が聞こえていないクロエの無邪気な感嘆の声のあとに優しい沈黙が訪れると、アレクが豊美ちゃんに「そろそろ」と声を掛け外を指差した。日は落ちかけて辺りが暗くなり始めているのだ。
「はい、アレクさん。……リンスさん、クロエさん、今日は本当にありがとうございました。
 お二人にも素敵なクリスマスが訪れますように」
「ありがとう」
「くるま、おいてあるところまでおくるわ! こんじおにぃちゃんは? かえる? おくる?」
「あー、オレは」
 紺侍が何か言うより早く、アレクが紺侍の首根っこを掴んで引っ張った。
「乗ってけ。あと二人乗れる」
「いやいや。ひとりで帰れますンで」
「I see...(*はいはい……)」
 と承諾するアレクと視線が合った瞬間、紺侍の身体かた力が抜けへたりとその場に座り込む。
「紺侍! 大丈夫? やっぱり車に乗っていきましょう? お家まで送るから」
 突然の出来事におたおたしながらも腕を掴んで紺侍を起こそうとしてくれるジゼルの顔を見ていたら、どこからか鼻の奥に広がった甘い香りに紺侍の頭がぐらりと傾いた。
「だから『あと二人』乗れるんだって。呼び戻してやるよ。可愛い恋人に介抱して貰え。な?」
 端末を耳に当てながら唇を歪ませるアレクの故意の、セイレーンの能力を無自覚に行使するジゼルの連携を喰らって、紺侍は車に詰め込まれる事に決まってしまった。


*...***...*

 
 冬の寒さで凍る地面に、ゆっくり足を進めながら駐車場へ向かっていく。
 街灯に照らされ笑顔で言葉を交わしていると、俄に視界が明るくなった。繁華街の建物が一斉に、クリスマスのイルミネーションに輝き出したのだ。
「わぁ」
 と、感嘆の声があちこちから響く。往来を忙しく歩いていた歩行者の足が、皆止まっていた。
「綺麗ね、とっても素敵だわ」
「でしょう? ヴァイシャリーのイルミネーションはすごいのよ!」
 賞賛を口にするジゼルにクロエが何処か得意げに言うと、静かに歩いていたリンスが口を開いた。
「毎年この時期は、ね。他もそう?」
「豊浦宮の近くの並木道も結構派手だったよな」
 アレクの言葉に豊美ちゃんが「はい、空京のも素敵です」と笑顔で同意する。
「蒼学近くもそっスね」
 そう言う紺侍の隣で、ジゼルが「眩しいくらいよね」と頷いた。
「でもここのは向こうとまた違っていて、どちらも素敵だと思います。
 讃良ちゃん魔穂香さんとも一緒に見に来たいです」
 豊美ちゃんが目の前の幻想的な光景を、心のフィルムに焼き付ける。皆がしばしイルミネーションを見入っている。そんな中でキリハは呟くように破名に言った。
「綺麗ですね」
「ああ」
「……不安ですか?」
「少しな。でも、何かあればアレクがいるし、なんとかなるだろ」
「そんな言い方は怒られますよ?」
「俺はあの子達が何も知らず幸せなまま寿命を迎えて欲しいだけだ」
 破名の真意を知るのはこの場ではキリハだけだった。だからこそ魔導書は諦めに両肩を落とす。
「全く素直じゃないんですから」
 呆れるような苦笑のような、そんなキリハの言葉は、誰に聞かれる事も無く冷たい夜の空気の中へ消えていく。そして見上げれば広がる暗闇にも、目の前にも星々は輝くのだ。
(この灯りに照らされていれば、あなたの不安も消えてしまうでしょう)
 だからきっと今年のクリスマスは、楽しい一日になるだろう。

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

 本シナリオに参加頂いた皆様、読んで下さった皆様、どうも有り難う御座いました。

【東 安曇】
 東です。『一会→十会シリーズ』では毎回編集を担当しております。
 今回は30頁を超えるリアクションとなりましたが、完全に一人一頁ではなく、複数箇所に登場するPCさんがいらっしゃる為、敢えて目次を作らず、クッション的なシーンを挟みながら流れを作ってみました。
 ご自分の登場シーンを探すのが大変かとは思いますが、此処は一つ温かい飲み物でも片手にゆったりと、皆様のクリスマスの様子を楽しんで頂けたらと思います。

【灰島 懐音】
 こんにちは、灰島です。
 まずは、ご参加いただきましたみなさまに多大なる謝辞を。
 色々なアクションにほっこりし、ひとあし早いクリスマスプレゼントをいただいた気分です。
 ありがとうございました。
 みなさまも、ほっこりとした気持ちになっていただけましたら幸いです。
 参加してくださったプレイヤーさま、一緒に執筆してくださったマスターさまに改めて感謝を。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【保坂 紫子】
 もうすぐクリスマスですね。
 プレゼント作成に焦点を当てた今回、皆様如何でしたでしょうか。
 皆様の素敵なアクションに、少しでもお返しできてれいば幸いです。
 どうぞ今年のクリスマスも皆様にとって、素敵な思い出になりますよう。
 そして、こんな素敵なシナリオに参加させてくださった猫宮 烈MS、東 安曇MS、そして、灰島 懐音MSの皆様には大変お世話になりました。
 この場をお借りしてお礼申し上げます。有り難うございました。

【猫宮 烈】
 猫宮です。シナリオに参加していただき、どうもありがとうございました。
 プレゼント作成シナリオを企画させていただきましたが、まあ色々と難しい点があったり練り切れてなかったりのような気がして、皆さまには申し訳ない限りです(反省

 少しでも楽しく、思い出に残るお話であったなら、自分としても幸いです。
 これからも『一会→十会』をどうぞよろしくお願いいたします。


 それでは、皆様楽しいクリスマスをお過ごし下さい。



※※※プレゼントアイテムは後日、ご指定のお相手へ配布させていただきます※※※