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リアクション
■予選 百合園女学院 2
「気を取り直して、行くよ!」
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が、
自分より大きなアインマンラムを構え、龍飛翔突での突撃を仕掛ける。
闘技場の中央に立っていた、
シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)を狙い、ミルディアの攻撃が放たれる。
「むっ!」
しかし、固められた防御によってかわされてしまう。
「真ん中で突っ立っていると狙われちゃうわよ!
いくら強くても、皆で攻撃すれば、恐くないわ!」
桜月 舞香(さくらづき・まいか)も、
中央で一人で立っているシーマを狙い撃ちにすべく、
バトン・チアリーディング部【応援舞闘術】により、
軽やかな跳躍で蹴りを叩き込む。
「アンスコだから恥ずかしくないわよ!」
ミニスカートをひるがえしつつ、舞香は、ヒットアンドアウェイで翻弄する戦術をとる。
「ここは、あたしも行くよ!」
戦況を冷静に分析して、ネージュも、強敵であるシーマを集中攻撃する。
「力振るわねば、守れぬ時もある……参る!」
女王を守る力を試すため、
出場しているシーマだが、むしろ、この状況は願ったり叶ったりであった。
ソードプレイにより、
法と秩序のレイピアを繰り出し、反撃を仕掛けるが。
「ふふ、どんどん殴ってきていいよ!
そういうのも好きだし♪」
ミルディアは、龍鱗化により、防御力を高め、シーマの攻撃を受け止める。
「あたしは、殴られれば殴られるほど強くなるんだよ!
どっちが打たれ強いか、勝負しよう!」
「ボクも、女王に仕える身。負けるわけにいかない!」
ミルディアにシーマがさらに攻撃を加える。
また、舞香も、シーマのレイピアの攻撃にさらされていたが、
チアの華麗なステップで回避し、
アクロバティックな動きで、反撃の機会を伺っていた。
(ダメージを蓄積しあってくれるのなら、その方が好都合だわ。
隙を見て、一気に落とさせてもらうわよ!)
■
シーマのパートナーの牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)と、
ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)、
ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)たちは、
その様子を、観客席でのんびりと観戦していた。
「しかし、解せませんわね。
どうして、シーマはここまで張り切って試合に参加しているのでしょうか」
首をひねるナコトに、アルコリアが
ポップコーンとアイスティーを手に答える。
「ああ、シーマちゃんは一般的なパラミタっ子だから、女王万歳でしょー?
女王陛下の思し召しならって、馳せ参じるってやつ? 真面目よねー」
「なるほど! その通りですわ!
では、なぜ、マイロードは参加なさらなかったのですか?
マイロードであれば、優勝間違いありませんのに。
一撃必殺、最強の……」
ナコトに、アルコリアは、ポップコーンの塩で汚れた手をねぶり、答える。
「ん? 私は弱いから駄目じゃない?」
「何をおっしゃいます、マイロード。
マイロードは……」
ナコトに、アルコリアは、なんでもないことのように続けた。
「あら、付き合い長いから知ってるかと思ったんだけど。
……私って勝つことに対して情熱弱いから、勝負には弱いと思うよ?
殺し合いなら、自分も死ぬし相手も死ぬしの精神でやるけど、
こういう催しはちょっと雰囲気違うじゃない」
「なるほど !その通りですわ! マイロードはいつでも、最高最強ですわ!!」
「勝つ事で、勝たないと得られない結果が嫌いなのよ。
力尽くで何かを手に入れるのが嫌い。
そういうことに意志を向けられない。弱いでしょ?」
「なるほど、その通りですわ!
マイロードのおっしゃる通りですわ!!」
「やると決めた時しか、マトモに戦えないのよ。
敵が実は友達だった、倒せば皆が不幸になる、
大切な人が死ぬ、自分が死ぬ……何だろうとそうする。
そう決めればもう迷わないでしょう?
そこまでしなきゃ戦えない意志薄弱よ。
自らに解けない呪いをかけなきゃ突き進めない」
「なるほど、その通りですわ!
マイロードは素晴らしい」
一方、ラズンは、ひたすら、みかんの皮をむいていた。
その様子は、ひたすら芸術的であり、
みかんの周囲の繊維を少しも残さず、綺麗に取り去っていた。
ラズンの意識は、みかんと一体化していた。
もはや、ラズンはみかんであり、みかんはラズンであった。
アルコリアは、ラズンの隣に置かれた段ボール箱から、みかんをひとつ取出す。
「ラズンちゃん、1個もらうね。
バナナもいいけどやっぱりみかんよね」
「なるほど、その通りですわ!
マイロードのおっしゃる通りですわ!!」
壊れた蓄音機のように、称賛の言葉を紡ぎ続けるナコトに、アルコリアが言う。
「ナコちゃん、それ聞いてないのと同じよ」
「なるほど、その通りですわ、わたくしは聞いていない……いな?
そ、そんな馬鹿なことが……わたくしがマイロードの話を聞いてないなど……。
しかし、マイロードは常に正しくて……え?
いえ、そんな……え? あれ?」
ナコトは思考のショートを起こし、混乱し始めた。
アルコリアは、再び、気だるげな視線で、闘技場を見つめる。
アルコリアの本心を知ってか知らずか、ラズンは、目の前のみかんに集中している。
■
一方、シーマは、ネージュとミルディア、舞香の攻撃を受け続けていた。
「はあっ、はあっ……!」
シーマの息遣いは乱れている。
複数の実力の高い契約者を相手に、防御特化で単身戦うのは、やはり難しかったのだ。
シーマは、続けて攻撃を受け、
ついにリングアウトしてしまう。
「女王陛下……!」
シーマがリングアウトした、次の瞬間、
ミルディアも、巨大なアインマンラムを振り回す。
「きゃああっ!?」
ネージュも、続けてリングアウトしてしまう。
「さあ、まだまだ全力で行くよ!」
ミルディアは、さらに、祥子に攻撃を仕掛ける。
「……っ!」
祥子は、教師という立場から、生徒を傷つけたくないと考え、
なるべく武器を使わず、使う場合も峰撃ちでとの戦術で挑んでいた。
しかし、本気のミルディアや舞香の、
続けざまの攻撃により、ついにリングアウトする。
「今よ!」
舞香は飛びすさって、今度はミルディアに蹴りを放つ。
「まだまだ!」
攻撃を受け止めるミルディアだが。
シーマの攻撃の蓄積もあり、
ヒットアンドアウェイ戦術で、
直接のダメージはあまり受けていない舞香との戦闘により、やがて、倒れる。
「みんな、強いね……」
ミルディアは、舞香の蹴りにより、場外へと出された。
高くあげられた舞香の脚が下ろされる。
「これで、残るは、あと一人……!」
舞香が振り返った時、
上空からロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が、
槍を手に突撃してきた。
競技場の端に立っていた舞香は、衝撃により、吹き飛ばされ、場外となった。
舞香は空中で回転して、地面に着地する。
「悔しいけど、全力は出させてもらったわ」
「皆さん、おつかれさまでした」
ロザリンドは、一同に礼をした。
■
優勝したロザリンドは、校長の静香から、百合園女学院の旗を手渡される。
「この戦い、静香さんに捧げます」
「ありがとう、頑張ってね」
静香は、柔らかな笑顔を浮かべ、ロザリンドを送り出した。
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