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リアクション
【リネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)の一日】
「本当に、全部、とるの?」
―ええ。もちろん。
リネンの困ったような表情に、我々は一切動じずに答えた。
諸事情により新婚生活を撮影することになったリネンには悪いが、そういう話しがあったのは事実。ならば、撮影するのが我々のルールだ。
いや別に、困りあぐねているリネンの表情をもっと見たいから、等と言う私情は、まったくない。
「え、えーと……それ、じゃ。よろしくお願い、します……」
リネンの許可も得て、いざ愛の巣へと向かう。
二人とも冒険家ということで、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)はいないと思っていたが、今日はたまたまいたらしい。
「ん、その人たちは?」
「その、テレビ撮影の人たち……ごめんね、いきなり」
「へぇ。私は平気よ。むしろリネンのほうこそ、こういうの平気なの?」
フリューネに尋ねられたリネンは「慣れていこうと思って、あはは」と少しだけ笑って見せた。
昼になり、一旦フリューネと別れたリネン。
彼女が向かったのはガーディアンヴァルキリー。
そこにはミュート・エルゥ(みゅーと・えるぅ)の姿があった。
「おはよう」
「おはようございまぁす。昨夜はお楽しみでしたかぁ?」
「べべ別に何もないわよ!」
顔を真っ赤にするリネンを見て、ミュートはのんびりとした口調で続ける。
「冗談はさておいて。こちらは特に滞りなく……まぁまだ空賊団の印象が強いですかねぇ。再編には親しみやすさが足りないかも……」
「親しみ、ね……制服でも作る?」
「フリューネさんの衣装ですかぁ?」
「なんでそうなるのよ!」
軽快な二人のやりとり。なんというか見ていて痛快だ。
と、艦に一つの救難信号が届く。
「あららぁ」
「ちょっと行ってくるわね」
リネンが救難信号が出た場所に向かうと、そこには空を飛ぶ化物が飛空艇を襲っていた。
化物はそれなりに大きいが、リネンはまったく怯まず突撃。その逆方向から、白き翼が。
「フリューネ!」
「ミュートに聞いてきたわ。話は後よ!」
「ええ!」
我々はカメラのズーム倍率、そしてその処理能力に感謝しつつ、二人の勇姿をカメラに収める。
二人が互いに背中合わせになり、空中できりもみし、二人の武器で敵を貫く連携技を炸裂させる。
当然攻撃を受けた化物は、容易く地上へと落ちていく。
二人はハイタッチをして、艦へと戻っていった。
夜になると、リネンは蒼空学園の夜間講義に顔を出していた。
礼儀作法や社交などの上流階級の知識を勉強。愛ゆえに猛特訓もなんのその。
―昼の連携も、愛ならではですね!
「い、いえ、あの技は結婚する前から使えていたし……。
でも、確かに、前よりも更に息はあっていた、気が」
我々全員の顔がにんまりとなる。それを見たリネンが顔を真っ赤にした。
「……でも、こういうのも、悪くない、かな」
それが彼女の最後の言葉だった。
これがリネン・ロスヴァイセの一日――