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エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)の一日】

 彼女、エレナは少し他の契約者とは違った場所にある学校へ通っている。
 天御柱学園の姉妹校『聖カテリーナアカデミー』。とても清らかな感じがする。
 アカデミーでのエレナの朝は早い、夜明けを告げる鐘の音と共に礼拝と瞑想。
 その後、ジナイーダ(富永 佐那(とみなが・さな))とソフィア・ヴァトゥーツィナ(そふぃあ・う゛ぁとぅーつぃな)と共に朝食をとる。
 朝食を済ませた後、ソフィアは小学校へ送られ、ジナイーダとエレナも座学をするために学校へ向かう。
 エレナの、聖職者に関する講義をジナイーダは噛み砕くよう、ゆっくりと聞くのだ。

 昼になれば座学とはかけ離れた、イコンでの模擬戦闘を開始する。
 普段はサブパイロットであるエレナも、ジナイーダと共に戦闘を行い、
 何が足りないのか、どこが弱点になりえるのか、様々な改善点を見つけてはその改善法を見出していく。
 模擬戦闘では被害が大きくなりすぎるような想定訓練ではシュミレーターを活用。
 ここでは更に緻密な戦術を、戦況に応じて瞬時に切り替えていく練習をする。
 また新しい戦術も検討して、イコン戦において万全の状態を確保できるように最善をつくしていく。
 今ほど二人の顔が、イコンパイロットとして相応しいものだろう。
 そんなやりとりの中で、ジナイーダがエレナに向けて本音を吐露する。
「あたしが、此処まで人間的にも成長出来たのも、エレナのおかげ。本当に感謝してるよ」
 ジナイーダの素直な気持ちに触れたエレナは、いつも通りの笑みを浮かべた。その笑みはまるで、聖人のようだった。
 それも束の間、イコン訓練はまだ続く。
 飽きるほど、弱音が弱音を吐くほど、何度も何度も続けられる。
 こうすることでエレナ、ジナイーダのイコン操縦の技術は更に磨きがかかり、自分たちを助ける力となるのだろう。

 ソフィアを迎えに行ってから、三人は協力してイコンのメンテナンスをする。
 頑張ってくれている愛機をいつでも最高の状態に、それが彼女たちに出来るイコンへの愛情表現に思えた。
 メンテナンスも完璧に終えると、三人はサッカーを観戦しに向かった。
 熱狂冷めやらぬうちに、夕食をとる。その席で、エレナの誕生日を祝った。勿論、サプライズだ。
 少しの間驚いた顔をしていたエレナは、すぐにいつも通りの微笑を携えて「ありがとう、二人とも」と感謝の言葉を紡いだ。
 全てが終わり、明日の始まりへと向かう間際、エレナは一日の最後に礼拝をする。
「……明日は、今日よりも更に良き一日となりますよう」
 エレナは珍しく、呟いた。それだけ祝われたことが嬉しかったのかもしれない。

 これがエレナ・リューリクの一日――