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ハードコアフェスティバル

リアクション

「おいてめぇら! あたいを誰だと思ってやがる!? あたいは血に飢えた破壊神……ブラッディ・カーリーだぁッ!」
 花道に【すごいパラ実生】を引き連れ現れたのはマスクを被ったブラッディ・カーリーこと狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)。登場早々に【任侠の威勢】を使った【名乗り】に、観客が一瞬竦むも歓声で応える。
 歓声を浴び堂々とリングへと上がり、ある程度呼吸が整ったのか僅かに肩を上下するパンツマシンに目を向けるとコーナーに背を預けるカーリー。
 レフェリーがその様子を見てゴングを要請。開始の合図が鳴らされる。
「よっしゃぁくたばれやぁッ!」
 直後、駆け出したカーリーがパンツマシンの顔面を狙いケンカキックを放つ。咄嗟にガードするが、パンツマシンはその勢いでダウン。
「ひゃーっはっはっはっは!」
 狂ったような笑い声を上げながらカーリーがパンツマシンにストンピングを浴びせる。踏みつけるというよりも踏み潰す勢いで何度も何度も頭を狙い足を落とすカーリー。
 執拗な頭狙いのストンピングをパンツマシンは両腕でガードする。これを危険と見たレフェリーがカーリーを離しにかかる。
「あ!? おい何だよ邪魔すんじゃねぇよ! もっとやらせろよ!」
 パンツマシンから引き離されたカーリーが噛みつかんばかりの勢いでレフェリーに怒鳴りつける。一方、ガードしたため致命的なダメージは受けていないパンツマシンが起き上がる。
「おおよしよしそう来なくっちゃなぁ!」
 レフェリーを押しのけ、カーリーが駆けだすと腕を大きく振りかぶってラリアットを叩き込もうとする。
「そうだなそう来なくっちゃなぁ!」
 これに対しパンツマシンは屈んで躱すと背後に回り、バックドロップでカーリーの身体をリングに叩きつける。
 叩きつけられ後頭部を抑えるカーリーをパンツマシンが抑え込む。だがカウント1で跳ね返す。
 起き上がると両者が距離を縮めて向き合う。その姿は睨み合うようで、観客からは歓声が湧きあがった。
 睨み合いから先に動いたのはカーリー。アッパー気味に顎を狙い腕を振り上げる。
 咄嗟にパンツマシンが腕でガードするが、握り拳ではなく地獄突きのように手刀を作っていたカーリーの手はガードをすり抜け喉元へ。クリティカルヒットはしなかったものの、喉の一撃に苦しそうに喉元を抑え込むパンツマシン。
「吹き飛べやぁッ!」
 そのままロープへと走り、カーリーは再度ラリアットを叩きつけようとする。
「調子に乗るんじゃねぇ!」
 それに対しパンツマシンはカニ挟みで足を挟みカーリーを転倒させ、そのままSTFで絞め上げる。
 顔面の骨が軋む程の力をパンツマシンが腕に込める。カーリーは苦しそうに呻き声を上げつつも何とかロープエスケープに成功する。
 起き上がったカーリーはパンツマシンを睨み付ける。今のSTFで頭に来たのだろう。
 そこからカーリーが打撃の応酬を見せつける。しかしカーリーの見せる技はラリアットにアッパーカットと基本的に大ぶりな物が多く、その全てをパンツマシンはガード。逆にボディスラムやバックドロップを決められてしまう。
 ならばと最初にも決まったケンカキックを放つがこれも躱され、河津落としからのグラウンド卍固めを決められそうになる。こちらは抵抗して決まる前に逃げる事に成功。
 技の応酬による攻め疲れにパンツマシンの返し技。カーリーの方も息が乱れ始める。
 勝負を決めるべくカーリーがラリアットでガードごとパンツマシンを吹き飛ばす。ダウンしたパンツマシンはたまらず場外へエスケープする。
 これをすぐにカーリーは追いかけ、パンツマシンを捕らえるとその頭を脇に抱える。そして場外の床を指さしてから「くたばれ」と叫ぶと、DDTでパンツマシンの頭を叩きつける。
 床には一応マットが敷かれているが、リング上とは比べ物にならない衝撃に頭を押さえて蹲るパンツマシン。中々立ち上がれない姿を見て「ひゃっひゃっひゃ」と嬉しそうにカーリーが笑う。
 何とか起き上がろうと鉄柵に手をかけるパンツマシンの頭を、カーリーが捕らえる。
「おいおい何起きようとしてんだよ。ここで大人しく寝てろって」
 痛めつける事もそうだが、場外でのカーリーのDDTはリングアウト負けを狙ったものである。
「もう一丁!」と叫び、パンツマシンの頭を再度脇に抱えてDDTを放とうとする。だが放つ前に、パンツマシンがカーリーの身体を押して金網に押し付ける。
「ぐぅッ!? 野郎……ッ!」
 背中を叩きつけられたカーリーが再度DDTを狙おうかと考えるが、リングカウントは進んでおり仕掛けるほど時間は無い。パンツマシンを尻目にエプロンへと上がる。
 一方パンツマシンはダメージに膝をついていたが、カウントギリギリでリングへと滑り込む。
(……奴がいない?)
 相手のファイトスタイルから考えて何かしらしてくるだろうと身構えるパンツマシンだが、リング上にカーリーの姿は無い。
「こっちだ!」
 声がしたのはコーナーのトップ。そこにパンツマシンを待ち構えていたカーリーが居た。
 パンツマシンが振り返るのを見たカーリーは飛び上がり、フライングラリアットを放つ。ここからナラカドライブ(ツームストーンパイルドライバー)に繋げるのがカーリーの必勝パターンである。
 だが大振りのこの技をパンツマシンは潜る様に躱すと、着地し起き上がったカーリー目がけてパンツマシンラリアットを叩きつける。
 そのままフォールに行くと思われたが、パンツマシンはカーリーを引き起こすとその頭を脇に抱えもう片方の腕で片手をクラッチ。
 その体勢のまま、ブリッジでカーリーを叩きつける。必殺の魔神風車固めである。
 魔人風車を決められたカーリーは返せない。3カウントを取られ、終了のゴングが鳴り響いた。
 技を解かれた直後、すぐさまカーリーは立ち上がるがゴングの音で一瞬呆けたように動きを止める。だがすぐにリングを降り、パンツマシンを一瞥すると「ちっ、行くぞ」と【すごいパラ実生】を引き連れ、潔く花道を去るのであった。

○パンツマシン(9分38秒 魔神風車固め)ブラッディ・カーリー●