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ハードコアフェスティバル

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ハードコアフェスティバル

リアクション

 セレンフィリティが退場し、僅かなインターバルの時間が設けられる。その間翼は自軍コーナーに寄りかかり呼吸を整える。
 インターバルの時間が終わり、花道に突如ローライダーが姿を現す。
 一体何事かと観客からざわめきが上がると、窓から選手が顔を出した。
 その選手の顔を目にした観客から上がったのは、歓声よりも戸惑いの色が濃いどよめき。

「キラッ☆ろざりぃぬだよ〜!」

 姿を現したのは魔女っ子ヒート ろざりぃぬこと長曽禰 ジェライザ・ローズ(ながそね・じぇらいざろーず)。プロレスリングハードコアの参戦経験もあり、先日行われたパラミタ某所の砂浜でのトーナメントに優勝した実力者である。
 だがそのトーナメントでろざりぃぬは現役引退を発表。あまりに唐突な事でファンを始め、各方面に衝撃を与えた。
 その引退したはずのレジェンド入り選手が、まさかの王座争奪戦にサプライズ登場。これを知っていたのは一部の関係者のみである。
「お、私のファンがいるね!」
 ろざりぃぬが観客席を見回し、戸惑う【ヒートネイツ】の姿を目にする。
「あのね、魔法少女の更なるパワーを求めてベルトの気配を探ってたらここに着いちゃいましたぁ〜☆ てへ☆」
 ろざりぃぬの言葉に、観客のどよめきは次第に歓声へと変わり、【ヒートネイツ】達からの「ヒート!」のチャントが連呼される。
 チャントに耳を傾け聴き浸るろざりぃぬ。やがてチャントが静まると大きく息を吸った。
「私のショーにこうご期待! 心ゆくまで堪能するがいい! ろざりぃぬ様の妙技をね!」
 歓声を浴びながらローライダーを降りたろざりぃぬは花道を歩きリングへと上がる。
 現王者対レジェンド。高まる期待に、観客から歓声が鳴りやまない中、ゴングは鳴り響いた。

 試合が始まると、ろざりぃぬのムーブは至極真っ当な物であった。王座戦のルール上、ろざりぃぬの普段の戦法である『ズルして頂き』は中々成立しない為であろう。
 そしてこの対戦相手は現王者である。手を抜く事などできない、という事なのだろう。そしてそれほどまでに王座を狙っていた。
(いやーまさか息抜きに参戦したら2番手とか驚いたー。折角だから王座狙ったろ)
 実際の動機はこんなもんであるが。
 さて、試合内容である。互いにルチャリブレの要素が強いファイトスタイルである為、飛び技が多く見られる。
 交互に繰り広げるハリケーンラナとヘッドシザースホイップの打ち合いからの、打点の高さを競うようなドロップキック合戦。関節の取り合いではフィギュアフォーレッグロック(足4の字固め)をろざりぃぬが仕掛ければ、決まる直前にスモールパッケージホールドで翼が丸め込む。どちらも一歩も引く事がない攻防が繰り広げられる。
 その中で所々、レジェンドとしての試合巧者ぶりをろざりぃぬは見せつけていた。場外に落下した翼にろざりぃぬはトペ・コン・ヒーロで追い打ちをかける。そのお返しにろざりぃぬが落下した際、翼がラ・ケプラーダで空を舞えば、決まる直前に身を翻して自爆させる。
 リング内でもダウンしたろざりぃぬに翼がその場跳びのムーンサルトプレスを放つが、これを膝を立てた剣山で迎撃。コーナー上からのファイヤーバードスプラッシュも体を捻って躱す等、徹底として現王者得意のダイブ技を食らわないようにして流れを自分の物にしていた。更に所々でフォールで抑え込み、返させる事で体力の消耗も狙う。
 だが現王者も最初は苦しめられたが、ムーンサルトプレスを躱されても着地してからフットスタンプ、ファイヤーバードスプラッシュは更に捻りを加え回転数を上げてエルボーとして叩き落とす、と徐々に順応していった。
 ならばとろざりぃぬはラダーを持ち出した。見栄えの良さもあるが、動きの幅が広がるためである(どちらかと言えば見栄えで選んだ節があるが)。
 バックドロップで翼をダウンさせると折り畳んだラダーに乗せ、エプロンからトペ・アトミコで頭から襲い掛かる。
 すぐさまフォールにかかるが、翼は肩を上げて返す。最初は身体を跳ね上げるようにして返していたが、体力の消耗を抑えての事だろう。
 そのような事をする必要がある程、翼には消耗が見え始めている。逆にろざりぃぬは【リジェネレーション】を使い、体力の消耗を抑えている。
 流れは自分に向いている。そう確信したろざりぃぬはラダーを組み立てると少々低空気味だが速度の速いブレーンバスターで翼を叩きつける。
 一発で拘束を解かず、身体を捻って起き上がるともう一発、更にもう一発とスリーアミーゴスが決まる。
 仰向けで天を仰ぐ翼を見て、ろざりぃぬは勝利を確信したようにラダーを駆ける様にして上がる。
 ラダー最上段に立つと観客に大きく見えを切り、歓声を浴びながら飛んだ。
 空中で身を縮めてから大きく広げるフロッグスプラッシュ。スリーアミーゴスからのスプラッシュというろざりぃぬのフィニッシュムーブである。この一連の流れで、ろざりぃぬは自身の勝利を確信していた。
(ふっふっふ、現王者からの勝利いただきぃッ! このままベルト取って旦那の枕にしてやるわぁッ!)
 何故枕にする。
「もらったぁごほぉッ!?」
 だがスプラッシュによって得た物は、勝利ではなく苦痛。待ち受けていたのは翼の膝剣山であった。
「散々やられたお返し」
 翼はそう言うと、苦しみながらも立ち上がろうとするろざりぃぬをヘッドシザースでセカンドロープとサードロープの間を通る様に放る。ロープにもたれ掛るろざりぃぬの顔面を、翼はロープ間を器用に潜り抜け617を叩きつける。
 吹き飛ばされるろざりぃぬを尻目に、翼は場外から長テーブルを持ち出し組み立てると、ろざりぃぬを横たわらせる。そして今度は翼がラダーを上る。
 最上段へと上がろうとした時、ろざりぃぬはさっと起き上がると、ラダーを駆けあがり翼の顔面に拳を叩きつけた。
 その一撃で落下しないよう堪える翼の頭を掴むと、ろざりぃぬはラダーの最上段部に叩きつける。
 翼の動きが止まったところで、今度は胴体に腕を回す。そして最上段に上がると翼の身体をパワーボムの形で持ち上げる。
 その状態でろざりぃぬ自身も落下しつつ、リングに叩きつけようと振り下ろす。
 だが落下の最中、その勢いを利用し翼はパワーボムをフランケンシュタイナーで切り返していた。
 翼はリングへ着地し、勢い余ったろざりぃぬは場外に叩きつけられていた。
 弾むようにバウンドし、大の字になったまま動けないろざりぃぬを場外に降りた翼はリングへと戻し、再度長テーブルへ横たわらせる。
 ラダー最上段へ上り、動けないろざりぃぬを確認すると翼は足場の上に両足で立ち、両腕を横に広げ見えを切る。
 そして、ろざりぃぬ目がけて飛んだ。空中で一回転し、背中からその身を叩きつけるスワントーンボム。
 ダメージが大きく動けないろざりぃぬに避ける事は出来ず、スワントーンボムを受ける。テーブルは真っ二つに折れて破壊。
 そのまま翼はろざりぃぬをフォール。フォールを返そうとろざりぃぬが体を動かそうとするが、そのダメージは【リジェネレーション】の回復でも間に合わないほど大きかった。
 レフェリーが3度リングを叩き、試合終了のゴングが鳴り響いた。

○天野 翼(10分43秒 片エビ固め※スワントーンボム)魔女っ子ヒート ろざりぃぬ●