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リアクション

 破竹の勢いで勝利を重ねるパンツマシン。しかしその姿をよく見ると、息を切らし軽く肩が上下している。あまり苦戦はしていない物の、連戦により徐々に疲労の色が見え始める。
 だが現在パンツマシンに流れが向いているのは確かである。その流れを止めるべく現れたのはキマクの穴出身ビリー・ミラーこと弁天屋 菊(べんてんや・きく)
 試合前にエネルギーを蓄えるべく、挽擂料技で胡桃をきめ細かく挽いて作った鴨肉ソテー・クルミソースを摂ったビリー・ミラーは気合も充実した様子でリングに上がる。
 ビリー・ミラーは前半戦の棺桶マッチにて敗北こそしたものの、己の挽擂料技を使ったファイトを見せた。
 その試合から見ていた観客は、リングに上がったビリー・ミラーの構えを見て首を傾げる。
 リズムを取るように軽く跳びながら構えるビリー・ミラー。その姿はまるでルチャのそれである。
 やがてゴングが鳴り響くと、観客はそのファイトスタイルに驚くことになる。
 軽快なステップで間合いを測りつつ、ロープにもたれ掛るとパンツマシンへと駆けだす。
 向かってくるビリー・ミラーを受け流すパンツマシンに、勢いそのままに反対のロープへと身体を預け、反動を利用して向かう。するとビリー・ミラーはスライディングで滑りこむ様に、身構えるパンツマシンの股の間を潜り背後へと回る。
 振り返ったパンツマシンに向かい、ビリー・ミラーはパターダ(蹴り技)を放つ。捕まれない為の対策か、素早くしなるような蹴りをパンツマシンはガードし、ミドルのパターダを掴むと軸足を刈り取る。
 そのままジャイアントスイングへと移行しようとするが、ビリー・ミラーは上半身を跳ね上げて足を抜くと、その足でパンツマシンの頭を挟み自身の頭で倒立する姿勢になる。すると身体を捻り、元に戻した反動でパンツマシンを放り投げた。コークスクリュー・ヘッドシザーズである。
 振り回される勢いを利用しつつ場外へエスケープするパンツマシン。それを見るとビリー・ミラーは感極まったように叫ぶ。

「あたしは……あたしは、実はルチャドーラになりたかったんだぁッ!」

 直後、反対に走りロープの反動を利用して勢いをつけると、そのままパンツマシンに向かって駆け出し、セカンドとサードロープ間を頭から滑り込む様に潜り抜ける。
 頭からぶつかるトペ・スイシーダ――と見せかけ、当たる直前パンツマシンにエルボーを放つ。エルボー・スイシーダである。
 このエルボーを食らう直前に腕でガードするが勢いがあるため吹き飛ばされ、パンツマシンは観客席との境になる鉄柵に背中を打ち付ける。
 ビリー・ミラーはさっと起き上がるとリングへと戻る。パンツマシンは背中を抑えつつ、呼吸を整えると様子を伺いリングへと戻った。
 上がったのを確認すると、ビリー・ミラーはロープへと駆け出し反動を利用して側転。勢いそのままに飛び上がりボディアタックを放つ。
 パンツマシンは反応できず身体を浴びせられそのままフォール、と見せかけてその勢いを利用しビリー・ミラーごと後転。逆に抑え込むと言った芸当を見せる。これはロープエスケープで解除される。
 ビリー・ミラーの素早い動きに苦戦させられるパンツマシンであったが、パターダを食らいながらも強引にキャッチして押し倒すと、今度はSTFを仕掛ける。足と顔面を絞り上げ、あわやギブアップかと思われるもパンツマシンの身体を引き摺りロープエスケープ。
 だが起き上がったビリー・ミラーを襲ったのはパンマシンラリアット。更にフォールを仕掛けるがカウント2。
 ビリー・ミラーの呼吸も乱れだしたが、素早い動きについていこうとするパンツマシンも肩で大きく息をする姿が見られるようになった。
 再度駆け出したビリー・ミラーはパンツマシンの股を潜り背後に回り込む。そして立ち上がりパンツマシンの足を払い尻餅をつかせると、そのまま両腕を捕らえサーブボードストレッチへと持ち込もうとする。このまま絞り上げてこの体勢から入る必殺のサンティートで勝負を決めようと試みたのである。
 だがビリー・ミラーが絞り上げる前に、パンツマシンは立ち上がると腕の力を使って強引に技を解く。
 マスク越しでも驚きを隠せないビリー・ミラーの背後を回り込むと、パンツマシンは河津落としで倒れ込む。そして捕らえたままグラウンドでの卍固めを極めた。
 完全に極まりビリー・ミラーは身動きが取れない状態になる。だがレフェリーに言われてもギブアップする意志は見せず、首を横に振り拒否する。
 それを見て尚も絞り上げるパンツマシン。苦しそうに呻き声を上げるビリー・ミラーの身体からぐったりと力が抜ける。
 その様子を見て、レフェリーはゴングを要請した。恐らくビリー・ミラーはギブアップはしないと判断し、危険だと見た為である。
 ぐったりした様に大の字になるビリー・ミラー。レフェリーの呼びかけに身体を起こすと、負けたことがわかったのか溜息を吐く。
 しかしふらつきながらもリングを降り、自分の足で花道を去る。そのビリー・ミラーの背をパンツマシンはコーナーで息を整えながら、見えなくなるまで目を離さなかった。

○パンツマシン(8分47秒 レフェリーストップ※グラウンド卍固め)ビリー・ミラー●