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ハードコアフェスティバル

リアクション

 続いて行われたのは、暫定王者となった涼介と挑戦者となるブラック・ジャガーこと神崎 荒神(かんざき・こうじん)
 試合は始まり既に数分が経過。現在リングでは手足を複雑に絡ませられたパラダイスロックで転がされた涼介と、ロープにもたれ掛ったジャガーが居る。
 パラダイスロックは完全に極まっていないがこの転がされた状態から自力で解くことは難しく、身動きが取れない状態の涼介であったが、ジャガーはただそれを眺めているだけである。
 本来ならばジャガーとしてはここから一気に責め立てたい所だが、出来ないのである。
 ジャガーは笑みを浮かべているが、大きく肩で息をしており攻め込むのは難しい。

――ジャガーの戦法は相手のカウンターを狙いつつも隙あらば大技を狙うという物であった。これは後の連戦を考えての事である。
 涼介の連続ジャブからの大ぶり気味のパンチに合わせて背後に回り込んだジャガーが高速ジャーマンを仕掛ける。だがこれをしっかりと受け身を取り最小限のダメージで涼介は立ち上がる。
 更にジャガーはキックを放ち牽制しつつ、隙を見つつ大技を仕掛けていく。多彩な技を見せるが、状況的に不利に追い込まれていたのはジャガーであった。
 しかし大技は奇襲で仕掛けても中々うまく決まらない。決まったように見えても涼介はまだ余裕があるためしっかりと受け身を取りダメージを抑えているのである。
 対してジャガーは大技の連続でスタミナ面に厳しさが見え始める。息は切れ始め、思う様に技を仕掛けられなくなってきている。
 そうなると悪循環に嵌る。仕掛けるべくスワンダイブ式の蒼魔刀(ダブルニーアタック)ことジャグリオン=ヤガーで飛び掛かるが、カウンターのスパインバスター、そしてシャープシューターを極められてしまう。これはロープが近い為に極まりきらずに命拾いをする。
 流れを断ち切るべく、ジャガーはパラダイスロックで捕らえている間にスタミナ回復を狙うのであった。

(情けないわね、しっかりしなさいよ!)

 息を整えるジャガーの頭の中から声が聞こえる。何事かと振り返ると、リングサイドにいるセコンドの青をベースとしたライオンマスクを被った神崎 綾(かんざき・あや)が腕を組み、睨んでいた。
(そんな情けない姿、これから生まれてくる子に見せるつもり!?)
 口を開かずに綾の声が脳に響く。【精神感応】によるテレパシーの会話だ。
(……ああ、確かにな。こんな情けない姿、生まれてくる子供に見せ――え?)
 会話で何か違和感があった。ジャガーの思考が止まる。
「こっ子供ぉ!?」
 会話内容を理解したジャガーが素っ頓狂な声を上げる。それに対し(落ちつきなさいっての)とあくまでテレパシーで会話する綾。
(あーもー、細かい事は良いから! と・に・か・く! かっこいい所見せなさい! あたしとお腹の子の為にもね!)
 混乱し頭を抱えていたジャガーだが、綾の言葉と腕を組んだ姿を見ると小さく溜息を吐いて立ち上がる。
「そうだよなぁ……かっこいい姿見せなきゃな!」
 そう叫ぶなり、絶賛パラダイスロック中の涼介に低空ドロップキックを放つジャガー。解放され、涼介が立ち上がる。
「こっちは負けられないんだよ! 生まれてくる子供の為にもなぁッ!」
 そう叫ぶとジャガーは蹴りを放ち、涼介をパワーボムで抱え上げて上空で止める。更にそこから頭を抱えてスープレックスのように投げればジャガープレックス(フェニックスプレックス)となる。
 しかしスタミナが完全回復しておらず、動きがもたついてしまったのが命運を分けた。涼介は拘束から逃れ、そのままジャガーの頭を掴むと膝を当てがい軽くジャンプする。着地時、ジャガーの顔面に涼介の膝の衝撃が伝わる。
 フェイスバスター・ニー・スマッシュで体を大きく仰け反らしたジャガーを素早く涼介はダブルアームの形で捕らえ、持ち上げて飛び上がる。先程とは違い両腕を拘束したままのペディグリーだ。
 前面からリングに叩きつけられ大の字になるジャガーを涼介がフォール。返す事が出来ずカウントは3。
「悪いね、こっちも奥さんと子供の為にもみっともない姿は見せられないんでね」
 起き上がれないジャガーに、涼介はそう言って笑みを浮かべるのであった。

○涼介・H・フォレスト(6分2秒 体固め※ペディグリー)ジャガー・マスク●

 ※  ※  ※ 


『――蛇界転生』

 突如会場内に響き渡る言葉。直後に鳴り響くガラスの割れる音と共に現れたのはローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)
 某伝説のダンボール大好き傭兵に扮した格好でずた袋を担いで花道を歩くローザマリアはローザマリアであってローザマリアではない。
 今リングに向かっているのは過去色々とやらかした悪徳GMローザ・ビショフがナラカの瘴気に中てられて蛇界のプリンセスポイズンJULIETロー蛇と変貌した姿――というギミックである。
 その隣ではセコンドのフランシス・ドレーク(ふらんしす・どれーく)が赤い頭巾にホッケーマスクを被った物凄く昭和(のプロレス)臭漂う海賊男ジェリー・ロジャーというギミックで従っている。
 ローザ……でなくロー蛇はリングに上がりずた袋をコーナーに置くと、何処からかマイクを取り出す。
「先程のタッグ王座戦……よくも我ら蛇界の邪魔をしてくれたな……お前、地球人のフリをした涼介星人だろ!?」
 涼介に指を突きつけ、高らかに叫ぶロー蛇。呆気にとられる涼介に「隠したつもりでも解る」とロー蛇は一人で頷く。
「こうなったら、蛇が宇宙人退治だ! 此処からは、お前と私の『宇宙大戦争』の開戦蛇〜!」
 そう叫ぶとマイクをリングに叩きつけ、ロー蛇が身構える。スイッチを切らなかったせいか、落下した音が会場内に響き渡る。
 そして会場中の人間が「え、一体何が始まるんです?」と戸惑っていた。これストロングスタイル王座戦でしたよね?
 戸惑う様にレフェリーも涼介を見るが「構わないで始めちゃって」というように頷くと、そのままゴングを鳴らす様に要求した。そうしないと何時まで経っても始まらないからである。

 試合は涼介の攻勢から始まった。涼介のペースを掴むための右ジャブをロー蛇はただ只管受ける。
 ある程度受けた所で、ロー蛇はニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべつつ行動に出る。
 ロー蛇のファイトスタイルはランカシャーレスリングという関節技、絞め技と相手から降参を奪うサブミッションを主体にした技術に裏打ちされた正に蛇の様なねちっこいスタイルである。
 背後に回りコブラクラッチ(ロー蛇はミリオン蛇ラー・ドリームと呼んでいる)で涼介をねちっこく絞め上げる。そのまま投げ捨てるミリオン蛇ラースープレックスへと移行しようとするが、これは涼介が逆に背負い投げで返す。
 だが笑みを浮かべつつロー蛇はサブミッションに持ち込もうとする。コブラツイストを仕掛けてくるが、こちらは涼介もアブドミナル・ストレッチで返す(どちらも同じ技だが)。
 両者同じ技を仕掛け合い、最終的にはロー蛇が仕掛けてすぐにグラウンドコブラでフォールを狙うがこちらはカウント2。
 ここで立ち上がった涼介がペースを引き寄せるべく、ジャンピングハイニー。これを食らったロー蛇は場外へと転がりエスケープ。
(逃げたか……あっちも不気味だが、追わないわけにはいかない)
 一瞬追うのをためらう涼介。リング外にはドレークが怪しげにうろうろと周囲をうろついているのである。今のところ何かしてくる様子はないが、その姿が不気味であった。
 だが畳み掛けるべくリングへ下りる涼介。ロー蛇を捕らえようと手を伸ばすと、振り返ったロー蛇が身構え、何やら呪文を唱え始める。
 すると涼介の腕が動かなくなる。何の意味もなく出鱈目な言葉を唱えつつ【サイコキネシス】で金縛りにあったように見せかけているだけである。
「で、出番! 出番がありましたよ!」
 観客席でフィリッパ・エリナー・アッサム(ふぃりっぱえりなー・あっさむ)が感涙しつつマラカスを振り、ガラガラヘビが放つような音を真似ている。どうやらロー蛇側の仕込らしい。だが出番はこれだけだ。
 動けない涼介にロー蛇がじわりじわりと近寄り、伸ばしかけた腕を掴むと強引にテイクダウンを奪いアナコンダバイス(袈裟固めとアームロックの複合技)で絞めつける。
「どう蛇! アナコンダの噛みつきは苦しいん蛇!」
 嬉々として絞り上げるロー蛇であったが、ここで気付いた。今回のルールではリングアウト裁定がある事に。
 レフェリーのカウントが進んでいる事に気付き、慌てて技を解きリングへと戻る。涼介もアナコンダバイスのダメージに顔を顰めつつも、ギリギリでリングへと戻った。
 涼介がロープを潜った直後、ロー蛇が笑みを浮かべて地獄突きを仕掛けようとする。その手には蛇の顔がプリントがされたソックスがはめられていた。
「アナコンダの次はコブラを食らうん蛇!」
 だが涼介は自ら距離を詰め、そのままロー蛇の身体を抱えると持ち上げて旋回してのスパインバスターで叩きつける。
「そっちはサソリの毒で苦しむんだな!」
 そのまま涼介はシャープシューターで絞め上げる。苦しむ呻き声を上げるロー蛇にレフェリーがギブアップを問う。それに対し首を振り否定するロー蛇が身を引き摺りロープブレイク。涼介もすぐに技を解いた。
 這うようにコーナーへ逃げるロー蛇を追いかける涼介。ここでロー蛇は持ち込んだずた袋を引っ張り、中身を引き出す。
 現れたのは、ニシキヘビであった。
「どう蛇! 可愛いサンドウ(♀)蛇ぁッ!」
 そう叫ぶとニシキヘビを涼介に投げつけるロー蛇。

――ここでゴングが鳴り響いた。

「「……は?」」
 呆気にとられた様子で、涼介とロー蛇がレフェリーを見る。

――レフェリー曰く、ニシキヘビを凶器として扱ったようである。
 今回のルールは凶器の使用はNG。見られたら即反則負けとなるのである。
 これに対し抗議してきたのはドレークであった。エプロンへ上がり、身を乗り出してレフェリーを罵倒する。
 そんなドレークにレフェリーが対応している時であった。
「ま、まだ蛇! 蛇界はこの程度では終わらないん蛇ぁッ!」
 ロー蛇はそう叫ぶと涼介に再度、呪文を唱えようとする。
「甘いッ!」
 だが涼介も学んでいた。【氷術】で作った氷塊を鏡に見立てて翳すと、逆にロー蛇が動きを止めた。即座に抱え込み、ペディグリーで沈める。
 そして涼介がドレークに視線を向けると、怯えたような表情を浮かべる。そのまま追いかけて場外に降りると、ドレークは涼介から逃れようとリングの周りを走り出す。
 だがリングを一周したところで戻る場所は同じ。待ち受けていた涼介からキツい場外ペディグリーで沈められるのであった。

○涼介・H・フォレスト(7分56秒 反則※ロー蛇の凶器持ち込み)ポイズンJULIETロー蛇●