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ハードコアフェスティバル

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ハードコアフェスティバル

リアクション

「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!」
 皆無が(賢者になっている間に)強制的に引きずりおろされ、リング上に残されたハデスがお約束の名乗り口上から高笑いする。
「ククク、先程から最弱とかわけのわからない単語が聞こえるがついに、この【悪の天才科学者】の力を世に知らしめる時が来たようだな! 我らがオリュンポスの力を見せつけてくれよう! ゆくぞペルセポネよ!」
 自信満々にハデスが叫ぶ。

『さて自信満々のハデス選手ですが、どうやら最弱決定戦というのを理解していないようです』
『間違えているのかもしれませんね』

 ハデスは自分たちオリュンポスの実力を世に知らしめ、 世界征服に役立てる為にペルセポネとタッグを組んで王座決定戦に参戦するつもりであった。
 だがその申し込みの際、何処をどう間違えたのか(恐らくちゃんと募集要項を読まなかったのだろう)最弱王決定戦にエントリーしたのである。
「さぁ我が真の姿を見るがいい!」
 そう叫ぶとハデスは【魔力解放】により所謂第二形態に変貌する。

『おっとハデス選手に変化が見られましたね。眼鏡がサングラスに変わりましたよ!』
『視線からは殺気がビンビンと感じられますね。これ本当に間違えたのかもしれませんよ?』
『いえ、良く見てくださいザ=コさん。ハデス選手が持っている物を』

【魔王の目】による睨み付けと共に、ハデスの手には【武器凶化】によって強化された【ゴッドスレイヴ】が握られている。

『そもそもハデス選手はプロレスを理解していないようですね』
『あんなもの持ってたら一発で反則負けですからね、凶器有りルールでも』

「ククク……驚いているな? ならば更に、第三形態も披露してやろう!」
 ハデスが叫び【ユニオンリング】を掲げる。すると【ナノマシン拡散】で不可視状態になっていたハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)が「了解シマシタ、どくたーはです。めかはですニ合体シマス」と言って実体化。
 ハデスと発明品が合体し、現れたのは半身が機械の身体となり、多数の【機械の触手】を生やした不気味な姿に変貌したのである。
「さあ、ペルセポネよ! 我らオリュンポスの力を見せるため、パワードスーツを纏いリミッターを解除するのだ! 敵を殲滅するぞ!」
「了解しました、ハデス先生っ! 機晶変身っ!」
 ペルセポネはそう叫ぶと、パワードスーツを装着し【潜在解放】【機晶解放】【調律改造】によりリミッターを解除。
「こんなところに長居は無用です! 我々の強さを見せつけてあげましょう!」
「フハハハ! その通りだペルセポネ! 我ら秘密結社オリュンポスこそが、最強であると証明してみせよう!」

『あー完全に間違ってますねザ=コさん』
『殲滅させる敵もいませんね』
『ただペルセポネ選手、凄まじいスピードですね』

 リング上でペルセポネが凄まじいスピードで動き回っていた。
「どうですか!? この動きについてこれますか!?」
 目にも留まらないスピードでリング上を縦横無尽に動き回っていた。一人で。戦う敵がいないからである。
 これをペルセポネが疑問に思わないのはハデスに『敵は見える者だけとは限らない』と丸め込まれたからだ。確かに見えない敵と言うのはいるにはいる。例えば現実とか。
「フハハハ! ペルセポネのスピードに驚いてもらっては困る! それでは我が必殺技グレート・オリュンポス・スラッシュをお見せしようか!」
 そう叫ぶとハデスはメカハデスとしての力をフルで解放する。メカハデスの原動力となっている発明品の「めかはですノふるぱわーヲ解放シマス」という言葉と共に、【エナジーコンセントレーション】で体内の動力炉をフルで稼働させる。

「えらーガ発生シマシタ」

 そしてオチへと一直線である。
 お約束の動力炉が暴走し、自爆という名の【ハルマゲドン】が発動。

『おーっと! 凄まじい爆発です! 爆風がリングを覆って何も見えません!』

 半径100m程の距離――だと流石に拙いと空気を読んだ動力炉がリング上に収まる程度の規模で爆発炎上。メカハデスは汚い花火と化した。
 リング上に残されたのはミンチより酷い有様のハデスと最早再起できるか解らない発明品。
「いてててて……」
 そして爆風に巻き込まれながらも【プロフィラクセス】の効果により辛うじて無事だったペルセポネである。
「いきなり爆発ってどういう事ですか――ってなんで私裸なんですか!?」
 ペルセポネが慌てて身体を隠す。ペルセポネのパワードスーツはリミッター解除によるオーバーヒートでパージされてしまう。
 ちなみにペルセポネはパワードスーツを素肌の上に直接装着している。後は御覧の有様となる。
「リ、リングの上で裸を見られるなんて……もうお嫁にいけませぇぇぇぇぇん!」
 身体を隠して泣きながらペルセポネが走り去る。

『はいポロリいただきました! この煙は円盤化したら消える予定です! ナラカTVの技術を甘く見てはいけません消してみせます!』

 技術の無駄遣いもいい所である。

『しかしこれで勝負は解らなくなりました。現在リング上でボロ雑巾になっているハデス選手が最弱王になるんでしょうかザ=コさん……ザ=コさん?』

 先程から全く発言しないザ=コの方を向く阿部P。
 そこ居たのは、爆発の衝撃により吹き飛ばされたペルセポネのパワードスーツの一部が額に刺さってこと切れているザ=コであった。

『――最弱王はゲストのザ=コさんに決定しましたぁッ!』

 戦ってもいないのに死ぬという芸当をやらかしたことにより、最弱王はザ=コという事に決まった。

『それでは今回事前に頂いていた選手の辞世の句をお届けして幕を下ろそうと思います』

――ククク、失敗は成功の母! 俺はこの失敗を乗り越え、次こそ勝利してみせよう!

『以上ハデス選手の辞世の句でした。この後はメインイベント、王座争奪戦ガントレットマッチを行います。それでは一度休憩に入ります』

最弱王者決定戦
●ザ=コ(6分34秒 死亡※【ハルマゲドン】による破片の巻き添え)
※ザ=コが最弱王者となる。
他の参加者は尾瀬 皆無、ドクター・ハデス、ペルセポネ・エレウシス