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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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「いたっ。その服、ほしい……」
 ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナを見つけた漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)と一緒に二人に近づいてきた。
「いや、いきなりそんなこと言われても……」
 思わず自分の服を押さえて、ココ・カンパーニュが言い返した。
「その服、気に入った。ほしいの……。お金なら、ここにある」
「月夜さん、その財布は……」
 樹月 刀真(きづき・とうま)の財布を握りしめた漆髪月夜を見て、封印の巫女白花が突っ込んだ。
「いや、お金の問題じゃなくって、さすがにこれは一張羅なんで売るわけには……」
「そうですね。それに、これは自作なので売っていませんし……」
 アルディミアク・ミトゥナも、ココ・カンパーニュと共に困った顔をする。
「はーい、あたしが縫いましたあ」
 にこにこと、チャイ・セイロンが割り込んできた。
「じゃ、縫って……」
 漆髪月夜が、樹月刀真の財布の口を開いて言う。
「だから月夜さん、後で刀真さんに怒られますよ」
「大丈夫。刀真、怒れないから。足りなかったら、刀真を好きに使っていい」
「好きにですかあ」
 きらーんと、チャイ・セイロンが目を輝かせる。
「よせ、人体実験の材料とか、解剖とかされるぞ。とりあえず、布とかパーツとかは空京で買いそろえたから、こまめに探せば同じ素材は手に入ると思うよ。後は、自分で作ってよ」
 さすがにここでお金をもらったら後で揉め事になりそうなので、あわててココ・カンパーニュが止めに入った。
「しかたないですね。ここは、私たちの中でも家庭科の成績が一番いい刀真さんに縫ってもらいましょう」
「うん。そうする。刀真ー!」
 封印の巫女白花に言われて、漆髪月夜は樹月刀真を探して走りだした。ぺこりとココ・カンパーニュたちに一礼して、封印の巫女白花がその後を追いかけていく。
「アーちゃん、お久しぶりー」
 入れ替わるように、ノア・セイブレムがアルディミアク・ミトゥナに駆け寄ってきた。
「あまり、困らせるんじゃないぞ」
 メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)を従えたレン・オズワルド(れん・おずわるど)が、こらこらとノア・セイブレムに注意する。
「私はいいんだもん、ねー」
 アルディミアク・ミトゥナにくっついて、ノア・セイブレムが言い返した。懐かれすぎてちょっと苦笑はするものの、さすがにアルディミアク・ミトゥナはその手をふりほどくようなことまではしない。
「私もレンさんも、空峡で空賊と戦った経験のある空の戦士なんだから、空中戦に慣れていないアーちゃんたちは大船に乗ったつもりで私たちに頼るといいよ! 敵はぜーんぶレンさんにやっつけさせるからねー」
 自慢げに、ノア・セイブレムが言った。
「おい、空賊とかが出たら、全部俺がやっつけるのか?」
「当然でしょ。私はギルドマスターなんだから。命令よ」
 やれないことはないが、やらなくちゃいけないのかと反論するレン・オズワルドに、ノア・セイブレムは当然よというふうに言った。
 さすがに、空中戦は、五千年前に中型の戦闘飛空艇を駆り、海賊たちと共にウィングシールドを乗りこなしていたアルディミアク・ミトゥナの方が一日の長があるのだが。ココ・カンパーニュだって、ジャワ・ディンブラとの連携で空中戦は得意中の得意だ。
「いつぞやは失礼いたしました」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)も、アルディミアク・ミトゥナとココ・カンパーニュに挨拶と共に謝罪をしにきた。
「以前、海賊に協力しながらアルディミアクさんを守ろうとしましたが、結果はココさんの邪魔となってしまいました。そのことについては、一度謝っておきたかったのです」
 一緒にくっついてきた、リア・リム(りあ・りむ)シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)も一緒に頭を下げる。
「邪魔なんかされたっけ?」
 ココ・カンパーニュがちょっと小首をかしげた。海賊に与していたというのであれば、ココ・カンパーニュの見ていない所で何かをしていたのかもしれないが、彼女としては落下したシェリルのカプセルを無事受けとめてくれたという認識しかない。
「パラミタじゃ、昨日の敵は今日の友なんて茶飯事だものねえ。今敵対しないんなら、私はあまり気にしないよ」
 さばさばとココ・カンパーニュが言う。
「ええ。細かいことを言ったら、私だって……。細けえことはいいんだよ――ですよね、お姉ちゃん」
 アルディミアク・ミトゥナが、ちょっとおどけて言った。
 
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「アヤも、ユーリさんも、二人とも、ジーッとゴチメイさんたちの方ばっかり見て。そんなにゴスロリとメイドが好きなんですか?」
 クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が、ココ・カンパーニュたちの方を注視している神和 綺人(かんなぎ・あやと)ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)を見て、そう訊ねた。
「ええっ、そうなのですか? まさか、私たちにも、ああいった格好をしてほしいとか、メイドに転職してほしいとか……」
 神和 瀬織(かんなぎ・せお)が、どうしようという顔で神和綺人を見た。
「いいや、そっち方面で気にしているわけではないよ」
 素っ気なく神和綺人が答えた。そのとおりだと、ユーリ・ウィルトゥスがうなずく。
「じゃあ、どうしてですか?」
 クリス・ローゼンが、再度問いただした。
「うーん、ちゃんと制服として統一されてるなあって。でも、よく見ると細かいデザインはみんな違うんだよね。テーマコンセプトが統一されているのかなあって」
 ほおうっと、今さらそうなのかと気がついたように、ユーリ・ウィルトゥスがあらためてまじまじとゴチメイ隊の方に目をむけた。
「私たちも、統一した方がいいですか?」
「いや、それなりに統一されていると思うけれど……。ユーリが、瀬織みたいな格好したらちょっと……」
 神和瀬織に言われて、神和綺人がそう答えた。
「なぜ、そこで綺人ではなく、瀬織になるんだ……」
 さすがに、ユーリ・ウィルトゥスが突っ込む。
「それはおいといて、冒険にはチームワークが大切なんだってあらためて思ったというだけのことだよ」
 そう言うと、神和綺人は三人の顔を順に見渡した。
 
    ★    ★    ★
 
「ジャワちゃん。こんにちはー。んーとね、ジャワちゃんについて行くからよろしくね〜♪」
 ジャワ・ディンブラに駆け寄った秋月 葵(あきづき・あおい)が、ぎゅっと彼女の首にしがみついた。
「いいツーショットです……あら?」
 ビデオカメラを持ったエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)は、そんな秋月葵とジャワ・ディンブラの姿を撮影していたのだが、ふいに何かに気づいたようだ。
「あれっ? 何か頭の上にいる?」
 ちょっと迷惑そうな顔のジャワ・ディンブラに気づいて、秋月葵が上を見あげた。
「にゅ、じゃわはじゃわなのですよー。謎生物じゃないのです」(V)
 ジャワ・ディンブラの頭の上にちょこんと乗ったあい じゃわ(あい・じゃわ)が、ちょっと頬をふくらませて言った。
「おこんにちはなのです」
 挨拶しようとして身を乗り出したあいじゃわだったが、そのとたんにちょっとバランスを崩してジャワ・ディンブラの頭から後ろへと転げ落ちた。ジャワ・ディンブラの頭から、首、背中、尻尾へと、ころころと滑り台のように転がり落ちていく。
「おっと」
 待ち構えていた藍澤 黎(あいざわ・れい)が、しっかりとあいじゃわを受けとめる。
「ああ、こんな所にいましたです」
 一同がジャワ・ディンブラの周りで遊んでいると、ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)が、トコトコとそこにやってきた。
「こんにちは」
 ぺこりとお辞儀をする。
「あのー、竜殺しというお酒があるらしいんですけれど、ジャワさんは知ってます? できたら、どこで買えるか知りたいんですが」
「なんで、そんなことをわしに聞く?」
 ノルニル『運命の書』の質問に、ジャワ・ディンブラが困惑する。内心で、そろそろ出発して開放されたいとつぶやくジャワ・ディンブラであった。