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リアクション
★ ★ ★
「ただいま戻りました、メニエス様」
一行からごく自然に離れたミストラル・フォーセットが、近くに潜んでいたメニエス・レイン(めにえす・れいん)と合流した。
「彷徨う島ねえ。どうせ、後世にあることないことつけたしているだろうから、たいしてあてにはできないだろうけれど。でも、潜雲する島ですって。ふーん、面白いじゃない。一般人を拒絶してくれるんだったら、あたしたちには好都合だわ。行くわよ、ミストラル」
「はい、メニエス様」
潜入させておいたミストラル・フォーセットの報告に、さらなる興味をかきたてられて、メニエス・レインは空飛ぶ箒でゴチメイたちの後を追跡していった。
★ ★ ★
「ロマンだからなっ! この雲海のどこかに空飛ぶ彷徨える島があるかもしれないだなんて、考えただけでもステキじゃないか!」
後続の小型飛空艇に乗ったルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)とセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)に話しかけながら、魔法の箒に乗ったアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は上機嫌だった。いや、もう舞いあがってしまっていると言ってもいい。
「おおっ、怪しい雲発見。たとえどれほどの困難が待ち受けようとも、どれだけの敵が立ち塞がろうとも! このドキドキと! ワクワクは! 誰にも止められやしないぜ!! いやっほぉぉぉぉぅ!!」
そう叫ぶと、先頭に立ってアキラ・セイルーンは立ちはだかる雲海に突っ込んでいった。
「まあまあ、アキラさんったら、はしゃいじゃって。でも、高い所から見る景色って凄く綺麗ですよね。それに、風も凄く気持ちいいですし」
「雲しか見えないのに、どこがいい景色なのじゃ。この煙が!」
のほほんと言うセレスティア・レインの頭を、ルシェイメア・フローズンがすぱこーんっとハリセンでひっぱたいた。
「いったあいー」
思わずセレスティア・レインが両手で頭をかかえた。
「あわわ、馬鹿、手を放すんじゃない……!!」
きりもみしかける無小型飛空艇に、ルシェイメア・フローズンが引きつった。髪の毛やスカートが盛大に乱れて暴れ回る。
あわててハンドルをつかみ直したセレスティア・レインが小型飛空艇の姿勢を立てなおした。
「ど、どいつもこいつも、ほら、気を入れて追いかけるのじゃ。あ奴が墜落してからでは遅いぞ!」
ルシェイメア・フローズンがセレスティア・レインを叱咤したが、どちらが先に墜落するかは疑問であった。
「大丈夫? スカート危なくないですか?」
クルクル回転してスカートを振り回したルシェイメア・フローズンとセレスティア・レインを見て、ノルニル『運命の書』が心配して周囲に声をかけた。
「なんだって、スカートがどうしたって?」
先頭に立って小型飛空艇ヘリファルテで飛んでいた国頭武尊が、何か楽しいことがあったのかと後方へ下がってきた。そのすぐそばをドラコンアーツの衝撃波が通りすぎていった。
「はい、そこ、もっと前に出る! でなければ、地上に墜落する!」
後ろにつけたココ・カンパーニュが叫んだ。
「うむむむ、ここは我慢だ。無人島に着きさえしてしまえば、俺の壮大な『迷っちゃったね、二人っきりだ、キャッキャウフフ作戦』が……」
国頭武尊は、再び先頭に立つと、まだ見ぬ彷徨う島に思いを馳せた。
「それにしても、リアのフライトユニットってごついよねえ」
高度をとりながらジャワ・ディンブラを追従するリア・リムに光る箒を寄せて、シュリュズベリィ著・セラエノ断章が言った。
「まだ慣熟飛行の途中なので、出力が最適化できていないのだよ。すまぬな」
機晶姫用フライトユニットと加速ブースターの出力を微調整しながら、リア・リムが答えた。
まだまだ、やっと一同は雲海へと飛び出したばかりだ。
雲海表面の雲の様子がよく分かるほどに接近しながら、一同はとりあえず互いの位置が目視できるポジションに散開しながら進んでいた。乗り物は、小型飛空艇あり、ワイバーンなどの飛行生物ありと様々だ。
その中でも、茅野 菫(ちの・すみれ)は一風変わったことを試していた。ペットの狼に空飛ぶ魔法↑↑をかけて雲海を渡ろうという無謀なことをしていたのだった。
「それでね、そのとき……」
ジャワ・ディンブラと並行して飛びながら秋月葵が話しかけていたとき、突然悲鳴をあげて上から何かが落ちてきた。
「ひやあぁぁぁ……」
ボンとジャワの腰のあたりでワンバウンドしてから、ペットともに落ちてきた茅野菫がさらに雲海に落ちかかる。
「うっ、な、なんだ!?」
突然の出来事に、ジャワ・ディンブラが何が起こったのかと後ろを振りむく。
「飛べ飛べ、ぷわぷわ、ぷっかぷか〜↑↑」
とっさに、秋月葵と神代 明日香(かみしろ・あすか)が、茅野菫と狼に空飛ぶ魔法↑↑をかけて救った。
「た、助かったじゃん……」
ふうっと、茅野菫が安堵の息をつく。
「やりましたね、葵ちゃん。りっぱな人命救助です」
ビデオカメラで秋月葵の飛ぶ姿を撮影していたエレンディラ・ノイマンがVサインを出した。
「ああ、すみません、すみません。うちの菫がまた御迷惑を」
あわてて、茅野菫のパートナーのパビェーダ・フィヴラーリがすっ飛んできた。
「なんで、私たちの上に墜落してくるんだよ」
さすがに、ココ・カンパーニュがちょっとむっとしている。もう少しずれていたら、頭の上に落ちてきて怪我をしたかもしれないのだからしかたない。
「いや、その、せっかく空飛ぶ魔法があるからさあ、もったいないと思うじゃん。だから、狼に魔法をかけて飛んでたんだけどさあ……」
最初の調子よかったころを思い出して、茅野菫がうっとりした顔をした。まさに、空をかける狼。雲を蹴散らし、風を追い越しという、実に気持ちよかったのである。魔法があっけなく解けるまでは……。
「それは無理というものですよお。魔法の持続時間なんてたかが知れていますからあ。機晶石のようなあ、人工のエネルギー源がなければあ、人の力ではそれほど長い時間飛んだりはできないですよお」
チャイ・セイロンに言われなくても、それは今、茅野菫が思いっきり実感したところだ。
「とりあえず、またおっこってきても困るからなんとかしてくれ」
ココ・カンパーニュに強く言われて、茅野菫はしぶしぶパビェーダ・フィヴラーリの空飛ぶ箒に乗ることになった。狼はしかたないので、魔法使いのマントでくるんで箒にぶら下げていくことにする。一気にお荷物にされてしまった狼の顔が情けないものになって、ちょっと可愛い。
「まあ、珍しい」
コウノトリのようだと、カメラ片手のランツェレット・ハンマーシュミット(らんつぇれっと・はんまーしゅみっと)が、その姿を撮影していった。そのまま茅野菫たちを追い越していくと、ランツェレット・ハンマーシュミットはジャワ・ディンブラにならんだ。
「よろしく、うふふ♪」(V)
挨拶をしつつ、ランツェレット・ハンマーシュミットはさらに先へと進んでいった。
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