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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

リアクション

 
 

浮遊島

 
 
「ふう、なんとか辿り着けたみたいだけれど、結構バラバラにされちゃったなあ」
 なんとか気流から抜け出して浮遊島に上陸したココ・カンパーニュが言った。
「みなさん大丈夫でしょうか」
 ずいぶんと人数が減ってしまっているのを見て、アルディミアク・ミトゥナが心配そうに言った。
「大丈夫よ。あの連中は、殺したって死にそうにないもん」
 リン・ダージの言葉に、マサラ・アッサムがうんうんとうなずく。
「そうですね。シニストラさんたちが本気でしたら、メカ小ババ様を私たちの間に突入させてから自爆させたでしょうから」
 なにげに、アルディミアク・ミトゥナが怖いことをさらっと言う。もしそうされていたら、気流に落とされて離れ離れになるぐらいではすまなかっただろう。もし、重傷を負って、そのまま流されてしまっていたら、まず多くの者が助からなかったはずだ。
「ふう。でも、これでやっと落ち着いて記録が書けますね。私たちはついに幻の島に上陸したのであったと……」
 あらためて手帳とペンを取り出して、浅葱翡翠が冒険の記録を書きとめ始めた。
「ねえねえ、ココちゃん。ちょっと休憩しない? ほら、お腹が減ったら戦もできないってことわざもあるし〜。お弁当持ってきたから皆で食べよ♪」
 秋月葵が、用意してきたお弁当を取り出して言った。みんなの分を、エレンディラ・ノイマンが小型飛空艇の荷物入れから運び出す。
「そおですねぇ〜。みんな腹も減ったでしょう〜? オレたちも、たくさんサンドイッチ持ってきたからぁ、配るよぉい」
 月谷 要(つきたに・かなめ)の指示で、霧島 悠美香(きりしま・ゆみか)エレン・バスカヴィル(えれん・ばすかう゛ぃる)が、飛空艇から下ろしたサンドイッチをその場の者たちに配り始めた。
「コーヒーミルクもありますよ」
 淹れたてのコーヒーが入った紙コップを配りながら、エレン・バスカヴィルが、荒い気流を乗り越えて疲れ切った人々の間をかいがいしく動き回った。
「手が足りないわね。あの子たちにも手伝ってもらおうかしら」
 霧島悠美香が、連れてきたレイスたちの方を見て言った。
「それはやめなさぁい!」
 さすがに、月谷要が止めた。
 
    ★    ★    ★
 
「先行して着陸地点を確保する予定だったけれど、ずいぶん計算が狂ってしまったわね」
 妨害やトラブルがあることまでは予想していたが、ここまで本格的に迎撃されるとは思っていなかったとローザマリア・クライツァールが渋い顔をした。結局、どこに上陸するかという選択もなしに、バラバラに島に打ち上げられる形になってしまったわけだ。
「今度こそ、私たちで先鞭をつけましょう。行くわよ、ライザ」
 ローザマリア・クライツァールの言葉に、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーが静かにうなずく。まだゴチメイたちが身体を休めているうちに、二人は出発していった。
「うにゅっ、ローザがいない? トイレ……なの? まあ、いい……の」
 いつの間にかローザマリア・クライツァールたちがいなくなったことに気づいたエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァだったが、たいして気にもせずにリン・ダージのそばに遊びに行ってしまった。同様に、エシク・ジョーザ・ボルチェも、同じ剣の花嫁のアルディミアク・ミトゥナに挨拶をしていた。
 
    ★    ★    ★
 
「ひとまず、無事にここまで辿り着けたことでココたちに感謝だ」
 リア・レオニスがどこから取り出したのか、青バラを一輪手に持って軽くその香りを確かめると、お弁当にぱくついているココ・カンパーニュに差し出した。
「えっと……、とりあえずありがとう」
 なんなんだと思いつつも、拒絶するのも悪いだろうということで、ココ・カンパーニュはそのバラを受け取った。
「それにしても、ここはまるでタシガンのようですね。いや、こちらの方が、霧深いと言うべきでしょうか」
 周囲を見回して、レムテネル・オービスが言った。かろうじて周囲の人々の顔は分かるが、今いる草原っぽい場所の先は、何があるのかさえはっきりとはしない。超感覚を使えば何か分かりそうだが、耳の形などからなんの獣人か揶揄されるのは嫌なので、レムテネル・オービスはそのままで周囲を見回した。
「さすがに、島の端から雲海に落ちることだけは避けませんと、危険ですな」
 敵よりも、その方が危険だと魯粛子敬が指摘した。
「とりあえず、目印となる物がある方がいいな。そうだ、こうしたらどうかな。ここにある小型飛空艇オイレに、このアーデルハイトひみつ写真を貼りつけておこう。これって結構なお宝だろう。だから、トレジャーセンスが使える人は、この写真のことを思ってスキルを使えば、この方向が分かるはずだ。それで、なんとか戻ってこられるんじゃないか」
 迷子対策に、トマス・ファーニナルがみんなに提案した。
「じゃあ、その桜井静香の生写真も私の空飛ぶ箒に貼っておいてください。これで、どちらの写真がどちら側にあるかで、より正確な位置が割り出せるはずです」
「そいつはいい。その写真を大幅に回り込まなきゃ、雲海に落ちる危険も減るだろうぜ」
 ミカエラ・ウォーレンシュタットのアイディアに、テノーリオ・メイベアが賛同した。ここにくるまでさんざん測量をやらされた経験が生きたというところだ。
「そうね。到着したらまず上空から地図を作ろうと思っていたのだけれど、この霧じゃあねえ。地道に歩いてマッピングするとするわ」
「ならば、わしと一緒に歩くのだぞ」
 水心子緋雨の残念な方向感覚のことを思って、天津麻羅がすかさず手を打った。一人で歩かせでもしたら、絶対に島の端っこから雲海に落ちるだろう。
「それにしてもお、ほんとおにい、こんな霧ではあ、とても住むのは無理ですねえ」
 ちょっと予想外だったと、チャイ・セイロンが言った。
「でも、神秘的で素敵じゃないでしょうか」
 ちょっとうっとりするようにペコ・フラワリーが言った。ずっと来てみたいと思っていた地に自分は今立っているのだと思うと、奇妙な感慨がこみあげてくる。
「でも、なんだか変な生き物とかが隠れてそうだよ」
「隠れてるんならお宝がいいなあ」
 リン・ダージの心配をよそに、マサラ・アッサムがのほほんと言った。
「この島でも何があるか分からないからね。充分に注意しないと」
 新たな島の冒険に備えて、安芸宮 和輝(あきみや・かずき)が言った。
「なかなか楽しそうな所じゃない。もっと楽しみましょうよ。観光よ、観光♪」
「えっと、クレア、あなたは私たちのそばを離れないでくださいね」
 危機意識の薄いクレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)に、安芸宮 稔(あきみや・みのる)が軽く釘を刺した。
「さすがに、海賊たちがまた襲ってくるかは分からないですから」
 用心は怠らない方がいいと、ペコ・フラワリーが言った。
「でも、あの二人、あんまりやる気なかったじゃないか」
「そうですね。シニストラさんたちが追いかけてくるかどうかは少し怪しいと思います。でも、この島にも他の敵か潜んでいないとは限らないと思いますよ」
 マサラ・アッサムの言葉を肯定しつつも、アルディミアク・ミトゥナが周囲に注意をむけた。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、俺たちはこの島のサンプルを採集するか」
 充分に休憩はとったと、イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が腰をあげた。
「はい。お供いたします」
 セルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)が静かにそれに従う。
「ちょっと待ってよ、まだ私はお弁当を食べている最中なのだよ」
 まだ口一杯にサンドイッチを頬ばったフィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)が、ちょっと待ったコールをかけた。
「だいたい、土いじりなど、そんなに急ぐこともなかろう。そんな物より、ここには綺麗どころがたくさんいるではないか。どうだ、イーオン、ゴチメイだったら誰が好みなのだ。このこのぉ」
 調子に乗って、フィーネ・クラヴィスがまくしたてる。
「やかましい。セル、フィーネを黙らせるのだ」
「はい、イオ」
 淡々とした口調でイーオン・アルカヌムに命じられたセルウィー・フォルトゥムが、ゆらりとフィーネ・クラヴィスに近づいてくる。
「ちょ、ちょっと待つのだ。黙る、黙るから!」
 冗談が通じないと見てとったフィーネ・クラヴィスが、あわててそう叫んだ。