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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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「ふむ。今のところほとんど島らしい島が見つからないのでは、地図を埋めることにはなりませんな」
 これまで見つけた小島を地図に記入していきながら、魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)が言った。
 単純に小島の少ない場所なのか、あるいは気流が近くて岩が風化してしまったのか、あるいはもともと広大な雲海では言うほどに浮遊島に出会わないのかは分からないが、教導団として今後の雲海における作戦行動のために空図を作ろうと思っていたトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)にとっては、今回のルートはあまり役にたっているとは言い難い。もっとも、暗礁のない安全な空域を確定できたと言うことであれば、有用であるとは言えるのだが。
「こんなもんでいいのかよ?」
 やっと見つけた小さな岩塊に、目印となるビーコンを設置しながらテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が言った。
「オッケー、ちゃんと認識してるわよ」
 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が、それまで設置した数少ないビーコンとの相対位置を記録しながら言った。
「ないよりはましって言う状況だけど、やはり機材が少なすぎるか」
 移動しつつ三角測量でビーコンの位置を確認していきながら、トマス・ファーニナルはそれらのデータを地図に反映させていった。
「そのようですな。海などの比較的平面での測量はある程度楽ですし、近距離であればロープを活用するのが基本ですが、雲海はかなり勝手が違いますな」
「合成開口レーダーとか使えればかなり正確なんだが、まあ、ない物ねだりをしてもしかたないな。とにかく、できる範囲でやるだけだ」
 本来なら、もっと大規模に大型飛空艇とか人員を大量に配置すればもっと正確になるのだが、自らの位置が変化しやすい小型飛空艇では、やはりかなりの誤差が出てしまう。せいぜいが、このあたりはどんな状況だと記すのが限界で、正確な島や岩の位置となるとお手上げだった。
「気流を見つけたぞ。流れに乗る準備をしろ」
 ジャワ・ディンブラの声が響き、学生たちがそれを仲間たちに伝えていった。
「記録を魯先生」
 トマス・ファーニナルが命じた。
「あれが、その気流なのね」
 殿(しんがり)をレッサーワイバーンに乗ったグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーに任せ、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ、エシク・ジョーザ・ボルチェたちと共に綺麗に小型飛空艇の陣形を整えながら、ローザマリア・クライツァールが気流に近づいていった。
 雲海の雲の中に、一筋だけ他と様相の違う帯のような物が見える。周りの雲を巻き込みつつ、渦のようなうねりを生じさせていた。近づくにつれて、飛空艇などが風を切るのとはまた別の音が聞こえ始める。
「おっ、アヤシイ雲発見! 突っ込めー!」
 先頭を突っ走っていたアキラ・セイルーンが、躊躇することなくその雲の流れに突っ込んでいく。
「馬鹿者が、だからもうちょっと慎重に進まぬか!」
 中に何か潜んでいるのか分からないのに迂闊だと、ルシェイメア・フローズンが叫んだ。
「追いかけます」
 ほってはおけないと、セレスティア・レインがその後を追った。
「問題はなさそう?」
「問題ないように突入すればいいことであろう」
「そうね」
 ジュレール・リーヴェンディの返事に、カレン・クレスティアは注意を怠らないようにして気流に入っていった。
「なんだか、風でスカートが凄いことになりそう」
 近づくにつれて、ごうっと風の音が高くなる気流に、ノルニル『運命の書』がちょっと心配そうに言った。ちょっと期待したような顔でほくそ笑むのは国頭武尊である。
「大丈夫よ。ほら、遅れてるわよ、前に出なさい!」
「へいへい」
 ココ・カンパーニュに言われて、一番の心配事と決めつけられている国頭武尊がゴチメイたちに先んじて気流に飛び込んでいった。
「我らも行くぞ」
 ジャワ・ディンブラが、残った者たちをうながす。
「シェリル!」
 ココ・カンパーニュが、その手をのばした。
 ウィングシールドをサーフボードのように巧みに操りながら、アルディミアク・ミトゥナがココ・カンパーニュに近づいた。間近まで寄せると、ココ・カンパーニュの手をとってひょいとジャワ・ディンブラの背に飛び移る。
「いいわよ、ジャワ!」
 ココ・カンパーニュの声に、ジャワ・ディンブラがその巨体を雲の中へと突っ込ませた。弾き飛ばされた雲が水飛沫のように周囲に飛び散る。他の者たちも、次々に気流へとその身を投じていった。
「安定が……悪いで……あるな」
 まだ慣れないフライトユニットを必死に制御しながら、リア・リムが安定を図った。
 思っていた以上に気流の勢いが早い。まるで水中のような濃密な霧の中を、吹き飛ばされていくような感じだ。ノルニル『運命の書』が心配したように、スカートどころか衣服の裾が激しくはためき、ひらひらの多い服やミニスカートの者たちは結構凄いことになってしまっている。だが、さすがに、それを鑑賞するなどという余裕のある者は誰もいなかった。
「燃える、燃えるぜ。荒波ってえのはこうでなくっちゃな!!」
 実に楽しそうに、髭から露の雫を迸らせながら黒髭危機一髪が叫んだ。
「これなら、三下の空賊なんか、寄っても来られねえぜ!」
「そう願いたいものです!」
 大事な仮面を吹き飛ばされないように押さえながら、クロセル・ラインツァートが答えた。
「本当に大丈夫?」
 久世沙幸が、藍玉美海に訊ねる。
「今のところ、ディテクトエビルに引っかかるような者はおりませんわ! それよりも、漂流物などに注意してくださいませ!」
 藍玉美海が、風の音に負けないようにと大声で叫び返した。
「大丈夫、そのときはわしを装着すれば沙幸の身体は、わしが守ってやろう」
「身体だけですの?」
「あたりまえじゃ!」
 藍玉美海の突っ込みに、ウィンディ・ウィンディがさも当然と言ったふうに言い返した。思わず、この二人は何が目的なのかと、久世沙幸が人知れず溜め息をつく。
「とにかく、気をつけて……」
「あ〜れ〜」
 言い終わらないうちに、藍玉美海のすぐそばを、ビデオカメラを手にしたレムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)が流れていった。この状況下で撮影などしようとするからだ。
「おーい、レムテネル、待てよー!」
 追いかけるリア・レオニス(りあ・れおにす)だったが、こちらも追いかけると言うよりは吹き飛ばされているに近い。
「危ないであるな」
 流されるリア・レオニスたちをかろうじて避けて、コンスタンティヌス・ドラガセス(こんすたんてぃぬす・どらがせす)が言った。
「あれは、障害物として排除したらまずいですよね」
 危険物があれば粉砕しようと機関銃を構えていた白河 淋(しらかわ・りん)が、三船 敬一(みふね・けいいち)に訊ねた。
「さすがにそれは許可できないぞ」
 敵味方の判別はつけろと、三船敬一が白河淋に言った。
「あはは、何か面白い物が流れてきますわ」
 エイム・ブラッドベリー(えいむ・ぶらっどべりー)が、バランスを失って流されてくる者たちに物怖じすることなく手をのばして触ろうとする。
「こらぁ、エイムちゃん、変な物触っちゃいけませんですぅ!」
 あわてて、神代明日香がエイム・ブラッドベリーを装着して変なことをしないようにした。
「いやーん、つまらないですわー」
 両方の手甲に脚絆、そして草摺りのついた胴鎧という姿に変化させられたエイム・ブラッドベリーが文句を言った。