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冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/全3回)

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冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/全3回)

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第5章 カレーが好きな奴に悪い奴はいない・その4



「じゃあ、私からも質問です」
 そう言って、小林 恵那(こばやし・えな)は奴隷都市で何が起こったのかを尋ねる。
「どうしてここに閉じ込められているのか不思議だったんです。もしかしてですけど、その訪ねてきた誰かに対してガネーシャさんは反対の意を唱えたんじゃないですか。だから、敵対するガルーダさんに捕えられている……とか?」
「ふん、よく状況を理解しておるではないか」
 気に入らなさそうに言った。
「ある日、あの者がアブディールを訪ねてきた。そして、こんな取引を持ちかけたのだ……」

 もうじきここに御神楽環菜と言う娘が落ちてくる。
 しかし、油断ならない女だから何か復活する方法を企んでいるはずだ。
 だから、おまえ達に環菜の完全抹殺を頼みたい。代わりに人知を越えた超常の力を授けよう。


「無論、余は拒否した」
「どうして断ったのですか?」
「冥界の支配者たるもの誰の指図も受ける気はない。ハヌマーンとタクシャカは違ったようだがな……。そんな余の態度が気に食わなかったのだろう、あの者ははるか昔に余が始末したガルーダを復活させた。妙な能力と一緒にな。その後はあっという間だ。さしもの余も奈落人を三人も相手に出来るわけがない。敗北し今は虜囚の辱めを受けておる」
「あの……、他の奈落人はどうして取引に応じたのでしょう?」
 若年寄浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)は尋ねた。
「特にハヌマーンは取引に応じるようには思えません……、殺してでも奪い取る、みたいな力押しの性格ですし」
「一見そう思えるかもしれん。だがあやつが求めるのは『強さ』だ。強さを手にするためなら手段を選ばんところがある。タクシャカは言わずもがな、あの通り狡猾な性格だ。余やハヌマーンを出し抜くためには当然取引に応じるだろう」
「では、ガルーダは?」
「おそらくあの者はガルーダにこう持ちかけたのだろう。復活させてやるから、小娘の始末に協力しろとな」
「そのガルーダさんのことでおしえて欲しいことがあります」
 火村 加夜(ひむら・かや)が言った。
「ガルーダさんと交戦中の隊から連絡があったのですが、彼女の正体は行方不明のルミーナさんだったようです」
 まだ情報受け取ってなかった仲間にどよめきが走る。
「どうして彼女がここにいるのでしょう。何か理由があるならおしえてください。それと真の目的も……」
「ちょっと待て娘。そのルミーナと言うのは誰だ」
「ご存じないのですか?」
「奴の計略は聞かせれておらんし、そもそも興味などない。詳しい話をおしえろ。余も情勢を知っておきたい」
 要点だけつまんでかくかくしかじかと話す。
「なるほど。その感じでは、ガルーダの肉体はおそらく奴が与えたものだろう」
「となると……、黒幕にとっては環菜さんだけでなく、ルミーナさんも邪魔だったと言うことでしょうか?」
「そうなるだろう」
「あの、もうひとつだけおしえてください」と恵那。「ガルーダさんとはどんなご関係なんですか?」
「関係だと……?」
「きゃあ!」
 ガネーシャの目が光る。
 またもや牢獄の中がガタガタと揺れ始めた。
「奴とは数千年来の敵同士。ハヌマーンのような戦闘狂でもなく、タクシャカのような小ズルい奴とも違う。冥界の炎の使い手のくせに性格は冷静で冷徹で冷酷……、それでいて秘めたる力は底が知れん。まあ、余ほどではないがな」
「でも、負けちゃったんですよね?」
 空気を読まずに翡翠が問う。
「あれは不意を突かれただけだ! 幽閉されてる間に打ち破る算段は考えついておるわ!」
「え、本当ですか? ちなみにそれはどんなものなんです?」
「まあ待て、まずは奴の能力からおさらいからだ。余の見立てではあれは『未来』を見る能力だろう。おそらく身の回りに起こることを予知しているのではない、その目で見た人間がこれからしようとしている行動を予知出来るのだ」
「何をしようとしているかがわかってしまいますね……」
「いや、思考までは読めん。せいぜい何をしてくるかまでだろう。それさえわかれば、勝つ方法はいくらでもある」
「例えばどんな方法が?」
「貴様ら自分で考えられんのか……。まあいい、おしえてやる。ひとつは、見えないものは予知してもどうすることも出来ない、と言うことだ。目で捉えることの出来ない攻撃が有効だな……、だが、間違っても光学迷彩で奇襲などとは考えるなよ。奴は普通に殺気看破が使えるからな、速攻で消し炭にされるぞ。もうひとつは、偶然発生する事柄は予知出来ないと言うことだ。奴が見ているのは『誰か』の起こす未来だからな。それを利用すれば勝機はあるだろう」
「あの……、ルミーナさんの身体からガルーダさんを追い出す方法はないんですか?」
 加夜は尋ねる。
「簡単な話だ、奴は追いつめればいい。いざとなれば肉体を捨てて逃げるだろう。もしその時に、死体か気絶者が付近にいればそちらに移動するかもしれんがな。まあ、どちらにせよ、そこまで裸に出来れば勝利は間違いなかろう」