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静香サーキュレーション(第2回/全3回)

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静香サーキュレーション(第2回/全3回)

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【?6―3・不審】

 夕日も沈みきった放課後の校舎。
 電灯の光がわずかにあるとはいえ、怖がりには耐えられない光景ならぬ闇景の中。
 崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)は、そのあたりを気にすることなく『白百合団・特殊班員』として校舎の見回りを行なっていた。
「それにしても、夜の学校で戦闘だなんて尋常でない事態ですわね」
 警戒しながら、不審者を見落とさぬよう目を光らせる亜璃珠。
 そのとき。
 中庭のほうから誰かが叫ぶような大声がしたかと思うと、さらに剣の音まで響いてきた。
「きましたわね!」
 急いで音の発生源へと走っていき、
「御姉様!」
 途中、神速を使って駆けつけてきた冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)と合流を果たした。
「御姉様。どう思いますか? この状況」
「おそらくまたループしていますわ。私の中に特有のデジャヴに似た違和感がありますもの。そうなると、静香さんも気がかりですわね」
「私も同じですわ。では、私が現場の収拾に向かいます。その間に御姉様は」
「静香さんのところへ、ですわね。それでは小夜子。すこし足を止めて」
 急停止したふたりは、唐突に唇を重ね合わせた。
 そして亜璃珠はスキルの荒ぶる力と、吸精幻夜を行使していく。
「ん、んっ……はぁ……んん……」
 しかも血を吸う際には、特技の誘惑をも用いて念入りに幻惑を魅せていった。こうすることで恐怖心や戸惑いを消しておくのが目的だった。あくまでも、そういう目的なのだが。
「はむっ……ん、んんん…………あふ……んっ」
 目撃する人がいれば、誤解しそうなほど熱烈に口づけを続けるふたり。小夜子は無抵抗で幻惑を甘んじて受け、亜璃珠も心おきなく力を込めてあげていた。
 それでもあまり長い間やってる場合でもないので、やがて唇は離される。
「……ふぅ。じゃあ気をつけてね、小夜子」
「は、はい……御姉様……」
 とろんとした目で小夜子は、亜璃珠を見送り。
(あぁ……こんな時でなければ、もう少し口付けしていたいのに……おっといけない。名残惜しむのは後ですわ、今は目先の事に集中しないと)
 再び神速で現場である中庭へと急いでいく。
 暗さに辟易し、ノクトビジョンで視界を確保して話に聞いたあたりを探していくと。
 やがて西川亜美が覆面をした人物と剣を交わしているのが視界の中に入ってきた。
(いましたわ。あれが騒ぎの元凶ですわね)
 小夜子はそのままふたりの間へと突っ込んだ。
 飛び込みざまにヒプノシスをかけてみたが、覆面のせいかうまく相手にかからなかったらしい。それでも、わずかに後退させることはできた。
「西川さん、大丈夫?」
「? な、なによ。あなた」
「話はあとですわ。今はさがって!」
 念のため殺気看破を使って周囲を警戒するが、どうやら近くにいるのは目の前のひとりだけのようだった。
 それならさっさと片をつけようと、神速と軽身功を使って一気に間合いを詰めそこから鳳凰の拳を使って殴って蹴っての攻撃を繰り出していく。
「関係ないヤツはひっこんでな!」
 だが覆面女(声で女性とわかった)のほうも、グレートソードを使い右に左に巧みに攻撃を受け止めていく。
(くっ、この人……けっこうできますわ!)
 こちらはかなりスピードを使って撹乱しているのに、相手は重量がある筈のグレートソードを武器にしてなお、攻撃をひとつとして当てさせる隙を見せない。それどころか、徐々にこちらが押されはじめ。
 そこへふいに足払いをかけられて、バランスを崩してしまう小夜子。
「っ……!」
 戸惑いも恐怖もなかった。
 事前にそうして貰ったゆえ、はっきりと見えた。
 容赦なく自分に振り下ろされるグレートソードの鋼色の刀身が。
 斜め上から飛来してきたなにかに勢いよく弾き飛ばされるのを。
 小夜子が振り返ると、そこには……
「御姉様!?」
「間に合って良かったわ〜! キミの泣き顔は見たくないからね☆なんつってな!」
「って、誰ですのあなた!」
 華麗に参上したつもりの社に、小夜子は思い切り抗議していた。
 せっかく闇黒ギロチンで攻撃を食い止めたのに、怒られてショックの社。
「小夜子。私はこっちですわ」
 亜璃珠はその後ろに、静香達と一緒にちゃんといた。

 じつはついさきほど二手にわかれた亜璃珠はというと。
 騒ぎを聞きつけてやってきた静香達の下へ、意外とはやくに辿りついていて。
 無事を確認後、女性化していることなどを知らされ、ためしにちょっと触ってみて。
「すごいですわね。本当に胸がありますわ、それも大きな」
「や、やめてよねもう! 誰も彼も勝手に触って!」
「あら、安心してください。私は両刀ですから」
「安心どころか貞操の危機を感じるよ!?」
 という恥じらいの掛け合いの後、静香を護衛しつつ駆けつけてみれば小夜子がピンチで。
 亜璃珠としてもすぐさま助けに入ろうとしたのだが、それより社が動いていたのだった。
「ふーん。いいんやもん、どうせ俺なんか」「よしよし、やー姉」
 すっかりすねた社と、慰める千尋。
「でも無事でよかったですわ、小夜子」「御姉様……」
 ひしっと抱き合う亜璃珠と小夜子。
「えーと。それで、すっかりほったらかしだけど。騒ぎを起こしていた人はどこに?」
 静香の言葉で、ふと全員が辺りを見回してみたが。
 覆面の人物は影も形もいなくなっていて、おまけになぜか亜美も姿を消していた。
 そのあとも結局どちらを見つけることもできぬまま、ループだけが繰り返されていった。