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リアクション
●prologue
小鳥がつつきあうような唇の接触を二三度、交わしたかと思いきやキスは、トロトロに熱い舌と舌を絡め合うものへと移る。
痺れる感覚が舌の先から、喉を伝い降り胸の先へと奔り抜けた。
「んんっ……」
甘えるような声に我慢できなくなり、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、ぼすっ、とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)を白いシーツの上に組み伏せた。
セレアナの顔の両側、肘まで埋まりそうな柔らかなベッドに手を付く。
そしてしげしげと恋人の裸身を眺めた。
セレアナは身に何一つ付けていない。それは、セレンフィリティとて同じことだ。
「……どうしたの?」
「いや……綺麗だな、って」
「ばか」
セレンだって、と言ってセレアナは、手を上げて彼女の躰に指を這わせた。
くすぐったさと恥ずかしさ、そして燃えるような悦びを感じて、セレンはセレアナを求める。むしゃぶりつく。
昨夜から、何度このようなやりとりを繰り返したろう。
肌と肌が重なる。二人の少女は二匹の牝となり、やがて一つになった。
無粋なベルの音が、枕元で騒ぎはじめたのはこのときだった。
どんなときであれオンにすることを命じられている携帯電話が鳴ったのだ。この警戒音が示すものは自明だ。
「……招集? 国軍の」
先に起き上がったセレアナは、仔猫からたちまち軍人の表情へと復していた。
「あーもう、まだまだ愛し足りないってのに!」
口元を拭いセレンフィリティは不服げな目をする。
「続きは仕事が済んでからよ」
セレアナはベッドから半身を乗り出して二つの下着を拾うと、片方の手で一つを身につけながらもう片方の手で恋人にもう一つを放った。
わずか二分後、二人のブーツはカツカツと廊下を踏んでいた。
そのときにはもう、事件のあらましも耳に入っている。
最初に飛び込んで来た固有名詞は、セレンフィリティにもすっかり馴染みのものだった。
同僚から話は聞いている。充分すぎるほど。
だけどこの任務で、恐らくは直接、目にすることになるのだろう。
クランジ。
ついに国軍の一員としてこれに関与する日が来たのだ。
クランジとは、塵殺寺院が作り上げた機晶姫のシリーズ名称である。その大半が少女の姿をしており、ギリシャ文字をあてはめた固有のコードネームを持つという。たとえば、Π(パイ)という文字を組み合わせて『クランジΠ(パイ)』などである。
どのクランジも『殺人兵器』の名にふさわしい強力な戦闘能力を有しているが、これに加え冷気のブレス、仕込み刀、あるいは他の人間への変身など機種固有の特殊な兵装を持つものもあった。いずれにせよ一体で一個師団に相当するという高い戦力であることは間違いない。
大急ぎで胸元を直しながら、いつしかセレンフィリティは駆け足になっていた。
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