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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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【4】おれたちのポリスストーリー……4


 正面入口の制圧を老師たちが請け負うこととなった。
 その間にJJはアゲハの救出に、一番弟子の優子はバンフーの元へそれぞれ走った。
 取調室の前は警官隊とギャルの小競り合いが激化している。
 混乱に乗じて逃げればいいものの、血の気の多い彼女達は、混乱に乗じて警官をブチのめすほうに行ってしまった。
 不当な理由と言えど、彼女らをしょっぴいたのはあながち間違いではなかったかもしれない。
「皆さーん! 戦っている場合じゃありません! すぐに逃げてくださーい!」
 JJは叫んだ。
 ところが、全員聞く耳をどこかに忘れてきているようで、誰一人聞いちゃいなかった。
「だめだよ、JJさん。ちゃんとギャル語で言わなくちゃ」
 立川 るる(たちかわ・るる)は言った。
「ギャル語……ですか?」
「そうだよ。今みんな興奮してるんだから、聞き慣れた言葉じゃないと聞いてもらえないよ」
 そう言うと、るるはすぅーと息を吸い込んだ。
ザッケンナコラー! なに、ギャルの皆さんに手ェだしとんじゃワレー! クソ警官ワレー!
 最先端の流行を知ろうと勉強したギャル語がこんなところで役に立った。
「皆さんがいなかったら、ただでさえ10年遅れてるパラミタの流行が更に30年遅れるヤロガー!!」
「なんか僕の知ってるギャル語と違いますね……」
 そこはかとなくヤクザシティ広島感があるが、ガラの悪さは大体同じなので大丈夫。
 るるの汚い罵声が功を奏し、場はしーんと静まった。
「……あ、皆さん、僕です! JJです!」
「あ、Jさん! ちーっす! 何してんすかこんなとこで?」
「何じゃないですよ、助けにきたに決まってるでしょう! すぐにここから逃げてください!」
「けどアゲハさんがまだ取り調べされててマジヤバイんすよ! パネェんす、マジほんとパネェんす!」
あげぽよー
 取調室からはみ出した黄金の樹……もといタワー盛りが、アゲハの所在をおしえてくれていた。
「スッゾコラー! ナンコラー! イテコマスゾー! ケジメ教えたろカー!」
 るるはエコバッグを振り回して、警官をめった打ちにした。
 どうやらアゲハの神聖な髪の毛をドアで挟んでることに怒りが爆発したらしい。
「あの方を誰や心得とんヤー! 泣く子も黙るカリスマのアゲハさんやゾー! 礼儀ッチューのを知らんのカイナー!」
「そーだそーだ、このクソポリ! アゲハさんの大事な髪をドアで挟んじまいやがって! マジ極刑だし!」
「おいマジやっちまおうぜ! 奴らを高く吊るしちまおうぜ!
あげぽよー!
「……あっ!」
 突然、るるは素っ頓狂な声を上げた。
 そう言えば、今日3月26日がアゲハの誕生日だということを思い出したのだ。
 いつもならクラブを貸し切ってパーリーしてるとこだが、警察のせいで折角の聖誕祭は台無しになりそうである。
「……マッポ許すまじ! ダッコラー! 首差し出せヤー! アゲハさんの御誕生日に献上したるワー!」
 るるの迫力に後押しされ、再びギャルは警官に襲いかかった。

 ・
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「アゲハさん!」
 JJは取調室の扉を勢いよく開けた。
 走り出した象は何人にも止められそうにないので、アゲハの救出を先にすることにしたのだ。
「だから、カツ丼持ってこいっつってんですけど。話はそれからなんですけど」
 取調室は小さな窓がひとつだけの狭い部屋だった。
 神守杉 アゲハ(かみもりすぎ・あげは)は椅子にふんぞり返って、髪をくるくるいじっていた。
 取り調べをしている若い刑事はなんだか辟易した顔を浮かべている。
「だーかーらー! カツ丼は出せないんだってば! 被疑者に何か与えることは禁止されてるの!」
「警察の名物料理はカツ丼だろうが。テレビでいっつも紹介してんだろうが。デパ地下ぐらい並んでんだろうが」
それ美味しいもの紹介する番組じゃなくて、刑事ドラマだから! 並んでるのは連行された暴力団とかだから!
「な、なにしてるんですか、アゲハさん……?」
「あれ、JJじゃん? なに、カツ丼食べにきた?」
 完全に取り調べのテンションじゃないアゲハだった。
「なんだ君は……? まだ取り調べ中だぞ……って、ええっ!?」
 刑事は彼女の相手が忙しくて気付いてなかったらしく、部屋の外の乱闘騒ぎに目を丸くした。
「アゲハさんを連れ戻しにきました。さぁアゲハさん行きましょう。こんなところあなたには似合わない」
「だ、ダメだ! 警察の威信に関わる! 取調中の被疑者をそう簡単に差し出せるか!」
「警察に彼女を勾留する正当な理由はありません」
「バンフー署長直々のご指示だ。それだけで理由は充分だ!」
「どけジャジャ……、オレがやる」
 弥涼 総司(いすず・そうじ)はJJを押しのけて、アゲハに視線を向けた。
「出ろ。オレの技を受けてもらうぜ」
「はぁ?」
「万勇拳で学んだ修行の成果。試すのに相応しいのはオマエだ、アゲハ。だからここを出てもらう必要がある」
「意味わかんねーし」
「ちょ、ちょっと待て! 僕を無視するな!」
「やかましい! うっおとしいぞ!!
 総司は気迫で刑事を怯ませた。
「アズミラ、君の出番だ!」
「やれやれだわ、悪霊が取り憑いてるとか言って出たがらないのかと思ったら、普通に捕まってるなんて拍子抜けね」
 アズミラ・フォースター(あずみら・ふぉーすたー)は小馬鹿にするように言った。
「アズミラ、アゲハをこの部屋から追い出せ」
「きっと、彼女の方から出してくれと懇願するほどわめき苦しむことになるけど……?」
「いや、だから僕を無視しないでくれ」
 とその時、隣りの取調室の扉がバーンと開き、中年刑事が飛び出してきた。
「貴様ァ! 警官を殴るとはいい度胸だ! 公務執行妨害だぞ!」
 中からうんざり顔のエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が出てきた。
「何が公務だ。人相が悪いというだけで捕まえ、カツ丼も出さない警官に公務を語る資格はない」
「いやだから、カツ丼はダメだって……」
「問答無用ッ!!」
 エヴァルトの拳が刑事の顔面を吹き飛ばす。
「よくも先輩を……!」
「あ、危ないっ!」
 激昂する若い刑事をJJは突き飛ばした。
「はぶっ!」
 JJはケンカが苦手なため人に手を挙げたりはしない。
 しかし、恵まれた体格から放たれる一撃はちょっと突き飛ばした程度でも、ボクサーに殴られたぐらいの威力がある。
 壁に激しく打ち付けられた刑事は気を失った。
「ほう、なかなか鋭い突きだったな。やるじゃないか」
「そんな、夢中でやっただけですから……。酷い怪我になっていなければ良いのですが……」
 とその時、エヴァルトの殴った刑事が起き上がった。
「よ、よくも二発も……! 父親にもぶたれたことないのに……!」
「ならいい社会勉強になったな。オマケだ、もう少し社会の荒波をおしえてやる」
 放たれた拳を肘で受けると、エヴァルトは刑事の顎を蹴り上げた。
「がっ!」
「次からは社会人としてきちんとカツ丼を用意しておくんだな。餓えた獣ほど手強いものはない、よく覚えておけ」
 鉄拳を鳩尾に突き刺すと、刑事はがくんとうなだれて気絶した。

 ・
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「これで邪魔ものはいなくなったわね、アゲハ。さぁ出てもらうわ……!」
いや、つか普通に出るし……
 アゲハの至極当然の言葉を黙殺し、アズミラはフラワシ『ラブゲーム』を発現させた。
「むうん、赤い麻縄!」
 アゲハの背後に回り込むと、ラブゲームは麻縄でぐるぐるに縛り上げた。
 ぎゅぎゅっと絞め付ける縄は、ちょっと艶かしくそして色っぽく、アゲハの褐色の肌に食い込んだ。
「ぐ、ぐるじい……! し、絞め過ぎなんですけど……! マジやばい!」
「さあ出るのよ!」
「だ、だから出る……つってんだろ!!」
 縛られた姿勢のままアゲハは頭をぶるんと振るって、アズミラに自慢のヘアーを叩き付けた。
 頭突きと言えば頭突きだが、巨大なヘアースタイルから飛び出す頭突きは、ほとんど丸太でしばくようなもんである。
「痛だだだだだ……。な、なんつうパワーなのあの頭……」
「てめーマジふざけんなよ。あたしを絞め殺す気かよ。マジ洒落になってないし」
「……ふふふっ、でも言われたとおり、あんたを部屋から引きずり出すことは出来たみたいよ」
「!?」
 上半身ぐるぐるで詰め寄るアゲハは、部屋の外にいるアズミラのとこまで出ていた。
……だから普通に出るっつっただろ! それがどーしたっ!!」
「ほぎゃああっ!!」
 二度目の頭突きがアズミラを叩き潰す。
「そうカッカするな、アゲハ。ほら出所祝いをくれてやる」
 不意に総司の指先がアゲハの胸を突いた。
 指先から流し込む気がおっぱいを活性化させる奥義『乳輪加算』、風船が膨らむようにアゲハの胸がみるみる膨らむ。
「てめー……!」
「まだだ、ここからが真骨頂! 乳輪加算の極意の先にある秘奥義『乳螺播押尻加算』だ!!」
 螺旋の動きで背後に回り込むと、両掌を合わせ人差し指を彼女の尻に突き刺した。
 両指から流し込む気が下半身を活性化。腰はググッと引き締まり、お尻は桃の如きなめらかな曲線を描いた。
「見事なダイナマイトボディだ、アゲハ。物足りなかったオマエの身体もこれでカリスマに相応しいものとなったな」
 しかしカリスマはお尻をこちらに向けたまま四つん這いでピクピクしている。
 それもそのはず、乳螺播押尻加算は小学生男子の『浣腸』とまったく同じ技だったからだ。
「マジブッ殺ス!!」
 アゲハは跳躍とともに太ももで総司の首を挟んだ。
 柔らかな太ももの感触に一瞬心奪われた総司だったが、カリスマがただでそんなサービスをするはずがない。
「くたばれーーーっ!!!!」
「ぐっはははははぁ!!」
 渾身のフランケンシュタイナーが、総司の脳天を床に叩き付けた。
 とちょうどその時である、まだ開いていなかった最後の取調室の扉がぎぃぃぃぃ……と開いた。
 姿を見せたその男は、グッタリと動かなくなった刑事を引きずり、一同を見るなりこう言った。
鬼羅星!