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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

リアクション


【5】龍は目覚める


「どうやら終わったようじゃな……」
 バンフーの敗北はカリスマの失墜を意味する。
 正気を失っていた警官たちは、見ていた悪夢を奇麗さっぱり忘れた寝起きの如くあっさりサクッと我に返った。
 老師たち万勇拳門下生も構えを解いて一息吐く。
 とは言え、気を失った警官の山とボロボロになった署内を見ると、こちらもまたふと我に返ってしまうものがある。
 アキュートはポリポリと頬を掻く。
「ちょっと派手にやりすぎちまったかな……」
「なんか今にして思うと、流石に警察署に殴り込みはまずかったんじゃないかって気がしてきた……」
「当たり前でしょう」
 ふかーくふかくため息を吐きながら、国軍中尉ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が署に入ってきた。
 傍でダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)も苦虫を潰した顔をしている。
 たぶん呆れているんだろう、全力で法を無視しきったこの集まりに。
「ああ、おぬしらはこの間遊びにきてくれた……」
「ろーしっ!」
「な、なんじゃ?」
「なんじゃじゃないよ! 計画性無さ過ぎること山の如しだよっ! 事情はどうあれ警察に殴りこみなんて無茶がまかり通るわけないでしょ! 武器持って警察に押し入ったら普通に即逮捕だよ! わかってるの!?」
「大丈夫。武器は使っとらん、基本は素手で……」
「そういう問題じゃないの。そもそも前回の襲撃も黒楼館と警察が繋がり関係なく、通報されたらアウトなんだから」
「うう、す、すまぬ……」
 やれやれと首を振り、ダリルは署のカウンターに書類やICレコーダーをドサドサ乗せた。
「森ガールやギャルたちから集めた警察の不正弾圧に関する証言、及び黒楼館による恫喝や暴力事件に関する中華街住民の証言だ。これだけ証拠があれば、黒楼館による空京警察乗っ取りは立証出来るな、署長」
「え、署長?」
 ふと初老の男性が気まずそうに奥から姿を見せた。
「本当の警察署長だ。自失状態で自宅に監禁されていたところを保護した」
「ああ、本物の……」
 当たり前だが、偽物がいるなら本物だっている。
「事情はこのふたりから聞かせて貰いましたぞ、老師。随分と派手に立ち回られたようですな、我が空京警察署で」
「そ、そのぅ……」
「そこなんだけど署長さん」
 ルカルカが言う。
「ここは『警察と空京を守る為』捜査に協力し、署まで来て『熱く正義を語った』若者達ってことで……」
 コホンと咳払い。
「『色々処理』して貰えると、嬉しいんだけど……」
「……そう心配せんでもわかっておる」
 署長は頷き、それから老師に向かって敬礼した。
「むしろ、お礼を言わせていただきたい。治安維持へのご協力感謝いたします、老師……いえ、万勇拳の皆さん」
「ふ、ふぉ……」
 あらたまって言われ、老師はもじもじと照れた。万勇拳の門下生も署長の言葉に表情をほころばせた。
 ようやく空京警察に平穏が戻った……かに見えたが、まだここで幕を下ろすことは出来ない。

 ・
 ・
 ・

「……まったく情けない話だ」
 不意に聞こえた低くとおる声に、一同は緊張して周囲に視線を飛ばした。
 するとその声の主は光学迷彩を解除し、エントラスの長椅子のひとつにその姿があらわした。
 不健康に痩せたカメレオン型ゆる族、我々のよく知る黒楼館館主ジャブラ・ポー……!
 突然、姿を見せた騒動の黒幕を警官隊はあっという間に取り囲む。
「わざわざ出頭してくるとは見上げた心がけだ、黒楼館館主ジャブラ・ポー……取り押さえろ!」
「やってみろ」
 少しも動ぜず巨大な目をぐるぐる回すや、強烈な尻尾薙ぎ払いで警官たちを吹き飛ばす。
「幻魔無貌拳『龍』の型……龍尾返し」
「やはり大人しく捕まる気はないか……。警官隊、発砲を許可する。なんとしても身柄を確保せよ」
 警官たちは一斉に銃口を向け、引き金を引く。
 その瞬間、乾いた音とともに銃が暴発した、取り囲むすべての警官の銃が一斉に。
「ぐわあああ!!」
「うわああああ!!」
「くくく……助かった。偶然にもすべての銃が整備不良だったようだな」
「そ、そんな馬鹿な話があるか!」
 署長は声を荒げて発砲する。
 しかし銃弾はジャブラをかすめ、後ろの壁に。跳弾し、天井、床、壁に跳ね返ったのち、署長の肩を撃ち抜いた。
「ぐわあっ!!」
「また助かったな。今日は実についてる……!
「!!?」
 万勇拳一派は目の前の異常に戦慄していた。
 なにか、ヤバイ。
 なにかはわからないが、恐るべきものが場を支配しているのは、肌に張り付く空気がはっきりと示している。
「何をしたのじゃ、ジャブラ!」
「俺は何もしていない。ただ天が俺に仇なす者を許さぬだけだ」
 ジャブラは不敵に笑う。
「この空京はいい都市だ。荒廃したコンロンとは比べものにならぬ活気があるのは勿論だが、ここは地球へと続く港、支配下に置ければシャンバラ、地球双方に大きな影響力を持つことになる。我ら黒楼館の新天地とするに相応しい都だ。さて、そうなると盤石の地盤を築いておきたい。何人にも揺るがされることのない鋼よりも強固な地盤を。空京の中枢に影響力を持つまでになっても、邪魔者はどこにでもいるものだからな。そう……ミャオ、お前のようなな」
「盤石の地盤じゃと……?」
 いつの間にか窓の外は暗く曇り、冷たく無情な雨が地面をしとどに打っていた。
「……おぬし、まさか龍脈を?」
「……まったく勘のいい男だ。だからこそお前は確実に消しておかねばならん。この前の借りは返させてもらう」
 ジャブラの拳が閃いた。とっさに老師は鋼勇功で全身を覆って一撃を退ける。
「老師!?」
 門下生たちは慌てて駆け寄ろうとしたが、その前に老師が「来るなっ!」と止めた。
「来てはならん。こやつが本当に龍脈を操っているのであれば……お前たちでは勝てん!」
「お前たち? 図に乗るな、貴様でも勝てん!」
「はて、それはどうかの!」
 老師の纏うオーラが強烈な光を放つ。
「もう一度その身に刻むがいい……! 万勇拳最大奥義『壊人拳』!!」
 その拳が目にも止まらぬ速さで繰り出される……しかしその刹那、頭上の電灯が突然外れ、真下の老師を直撃した。
「っ!?」
「くくく……ほんとうに今日はついてる
 そう言うと両の掌を合わせ、龍の口を再現した。
「幻魔無貌拳奥義『龍気砲』!!」
 放たれた気功砲は目標を業火の本流に巻き込むや、そのまま警察署の一階を貫通して吹き飛ばす。

 ドオオオオオオオオン!!!

 建物全体が激しく揺さぶられた。
 龍気砲によって穿たれた巨大な空洞は、ポッカリと口を開けて階層を一直線に貫いていた。
 線上にあったものはすべて灰燼に変わった。
 何かの焼ける臭いと何かが焼ける煙……それから警官たちの阿鼻叫喚が階層を満たしている。
「ちくしょう! どこだ、老師!」
 煙にむせ返りながら、和希は必死で叫んだ。
「まだ師匠に肉まん奢ってないッス! 猫さん、大丈夫ッスか!」
 レヴィもまた煙をかき分けて老師を探す。
「み、皆さん……!」
 不意に遙遠が声を上げた。目の前のものを見せないように、傍らの瑠璃と香子をぎゅっと抱きしめる。
 そこに見たのは、黒煙を燻らせて立ち尽くす老師の無惨な姿だった。
 その向こうにいたはずのジャブラの姿はもうない……ただ、高らかに笑う不気味な声だけが木霊していた。
……これで邪魔者は消えた! もはや警察も恐るるに足らん! 空京よ跪け、我ら黒楼館の下に!
老師ーーーっ!!!





 

担当マスターより

▼担当マスター

梅村象山

▼マスターコメント

マスターの梅村象山です。
本シナリオに参加して下さった皆さま、ありがとうございます。

一応バトルシナリオとなっていますが、ノリはコメディなのでバトルが苦手な人も楽しんで頂けたなら幸いです。

今回も引き続き追加スキルの案を皆さんから募らせて頂きました。
前回なかった組み技や返しの技など、今回もバラエティ豊かなアイディアを送って頂いてありがとうございます。
とりあえず技の案は今回で締め切りとさせて頂きます。
どの奥義が追加スキルに実装されるのか、楽しみにお待ち下さい。

また、今回登場したNPCについてです。
M.C.バンフーはこんなキャラ面白いかな?程度のノリで作ったキャラなのですがなかなか大変でした。
と言うのも、基本的にわたしがヒップホップをよく知らないからです(笑
よく見なくてもわかりますが、なんか同じようなヒップホップっぽいことしか言ってません。
ただ結果的には、この手探り感がただのラッパー気取りの人という彼のキャラにマッチした気がします。
そして個人的には『チェケラッ掌』のネーミングを思いつけたことが嬉しかったです。

カラクル・シーカーは最初はもっと格好いい女性拳士にしようと思っていました。
ところが、スパイスとして付けた『ショタコン』の部分ばかりフィーチャーされてしまったため、
あんななんか残念な大人になってしまいました……。
基本的にわたしはシナリオ展開も含め、キャラクターの性格も皆さんのアクションにお任せしています。
設定はある程度ありますが、どの部分が掘り下がるかはアクション次第です。
前回の登場シーンを見てもらえると、あの段階では割りと格好付けてたのが窺えると思います(笑


次回シナリオガイドの公開日はまだ未定ですが、事前にマスターページで告知出来たらいいな、と思ってます。