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【戦国マホロバ】弐の巻 風雲!葦原城攻め

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【戦国マホロバ】弐の巻 風雲!葦原城攻め
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第四章 葦原城包囲2

【マホロバ暦1188年(西暦528年) 7月4日 13時28分】
 葦原国葦原城 御門 ――


 大筒の音が空に響く。
 葦原城攻めは続いている。
 城内では降伏するか、徹底抗戦するかで臣下共々もめていた。

「まだ結論がでないのか……そうしてる間にも戦況はどんどん悪化してるというのに」
 透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)がじりじりとしながら言った。
 前と同様、過去では銀鼓(ぎんこ)と名乗っている。
 いつも冷静な彼女のパートナー金鎖(きんさ)璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)も、めったにみせない焦りを見せていた。
「葦原城の補給路は絶たれ、水も食料もあと数日分といったところでしょう。葦原総勝(あしはら・そうかつ)様が何を迷われているかは知りませんが、このままではジリ貧です」
 透玻たちにも迷いがないわけではない。
 歴史を狂わさず、1190年で葦原と鬼城をどうやって組ませるようにしたらよいかをずっと考えていた。
 この戦の持つ意味をが、後々に関係していることは予測ついていた。
「ここでどうさせるのが正しい……? どうしたら? 私にできることは?」
 透玻は意を決して、璃央を共に鬼鎧稲桜に乗り込んだ。
 稲桜が葦原城本丸から出撃する。
 葦原城門の外に出て、味方の位置を把握しながら煙幕をはる。
「戦国のもののふよ。恨むのなら……私を恨んでくれていい!」
 煙幕を越えて向かってくる敵に、稲桜は両手剣を振り下ろした。

卍卍卍


「御門はなんとしても守る。講和までもっていかなくては……!」
 葦原城本丸の御門付近では、押すや押されるなの激戦が続いていた。
「一方的な状態で負けてしまえば講和もなにもあったもんじゃない。簡単に屈しない力も意地あるってことをみせてやらなきゃな」
 桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は群がる敵を必死に食い止めているが、たった一人で止められるものでもない。
 それも限界に近かった。
「師匠、そっちになだれ込むぞ!」
「承知」
 東郷 重位(とうごう・ちゅうい)が否妻のごとき速さで雑兵を切り叩く。
 兵は下方へ崩れ落ちながらも、その累々を乗り越えてまた新手がやってきた。
 その繰り返しだ。
「きりがないな。もう、いちいちかまってられない。この一太刀で勝負をつける」
 煉は大きく息を吐き、神経を集中させる。
 その間、重位は敵の目をひきつけておく。
 やがて場内の空気がかわる。
 煉は渾身の力を込めて、その一撃を放った。
 轟音とともに御門が揺れる。

卍卍卍


「ななな、なに? 何があったの? 地震!?」
 葦原城本丸の地下にいた木賊 練(とくさ・ねり)はとっさに身を伏せた。
 彩里 秘色(あやさと・ひそく)が天井を見つめている。
「いいえ、振動は上からです。地上での戦闘でしょう」
「そんな……激しい。ひーさん、あたしたちも頑張ろう」
 練は備蓄の食糧をかき集めていた。
 葦原包囲はすでに100日を過ぎ、難攻不落の城といわれた葦原城も時間の問題であった。
 兵士たちにも疲れと不安の表情が伺える。
「大丈夫、こうゆうとき女は強いんだから!」
 練はそういって勇気を奮い立たせたが、先の見通しは立っていない。。
「でもこのままでは。何か突破口になるものはないでしょうか。私の……マホロバ人としての力、鬼神力がお役に立てばよいのですけど」
「鬼神力……そっか!」
 練はひらめいた。
「ここは葦原城。きっと鬼鎧(きがい)がどこかにあるはず。探そう」
 城の女たちにも手伝ってもらい、彼女たちは蔵に辿り着いた。
 普段は出入りを禁じられているらしいが、この非常時にかまってなどいられなかった。
「すみませーん、おじゃまします」
「きみたち、誰? 僕は誰も通すなっていったよね?」
 蔵の中央には青年が鬼鎧によじ登り、こちらを睨んでいた。
 葦原家の嫡男――別名からくり卿。
 不機嫌な葦原鉄生(あしはら・てっしょう)を見て、侍女たちはあわてて立ち去る。
「あの、鬼鎧をかしてほしいんですけど。今、戦の真っ只中で……」
「鬼鎧? 君たち、これが分かるの? なんだ、先にいいなよ」
 鉄生は急に気をよくすると、聞かれても居ない鬼鎧の性能について語りだした。
 話が延々と続くので、秘色が切り上げようとした。
「あ、あの。よくわかりました。で、これを動かしてよいですか。マホロバ人なら鬼の力で動かせると思うんです」と、秘色。
「もちろん。でもね、鬼鎧といっても彼等は意思がある。『生きている』からね、相性があるよ」
「生きている!?」
 聞けば、鉄生は数年前に見た『鋼の鬼』(『戦国マホロバ壱の巻』参照)』が忘れられず、古代シャンバラの技術を使って実在の鬼を改造し続けたらしい。
 練はその話に仰天した。
「じゃあ……鬼鎧って」
「そう鬼だね、元鬼。だけど彼等も喜んでくれてるはずだよ。なんせそれで鋼の肉体と強大な力、格段に伸びる寿命を手に入れたんだから。ちゃんと整備すれば数千年は越せるよ……ただねぇ」
 鉄生は頭を掻きながら言った。
「問題は彼等を動かせる者が居ないということ。意思が通じ合わなければ、まともに動くことさえできないんだ。何でだろうねえ、父上は『鬼の魂の抜け殻』『鉄のガラクタ』とののしって、たいそうお怒りなんだが」
 彼女たちは息をつめて鬼鎧を見つめる。
 鬼鎧はまだ何の目的も与えられず、力をもてあましているように見えた。
「私がやってみます。鬼神力が……通じるかわかりませんが」
 秘色が鬼鎧の腹の中央から取り込まれるように乗り込んだ。
 まるで鬼の体内の中に居るようだ。
 しかし、鋼の皮膚はひんやりとしている。
 秘色はマホロバ人の血を開放した。
 おでこから一本の角が生える。
「お願い、戦ってください。私と!」
 鬼鎧の目が赤くともった。
 振動が激しくなり、上下に揺れる。
 鬼鎧はうなり声を上げながら、飛び上がり、天井を突き破った。
 瓦礫が頭上に降り注ぎ、練は悲鳴をあげた。
 その横で、鉄生はしきりに手を叩いていた。
「動いた、動いたぞ。僕は勝った! ガラクタなんていわせるものか……ハハハッ!!」



【マホロバ暦1188年(西暦528年) 7月4日 13時57分】
 葦原国葦原城 御門 ――


「な、なんだ。鬼鎧がもう一体!?」
 透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)はその光景に切れ長の目を見開いた。
 地下から鬼鎧が飛び出してきたのだ。
 璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)が警告を発する。
「撤退してください、銀鼓様。これでは動けなくなって、敵の大筒に狙い撃ちされます!」
 稲桜の稼働時間の限界はとうに過ぎていた。
 御門でも、桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)が新手の鬼鎧を見上げた。
「まさか味方からやられるんじゃないよな」
 東郷 重位(とうごう・ちゅうい)が顔をしかめる。
「あの鬼鎧、動きがまるででたらめだ。巻き添えになるぞ!」
 彩里 秘色(あやさと・ひそく)の乗った鬼鎧は四方に暴れている。
 初めて体の自由を手に入れてはしゃいでいるようだった。
「なんて強い力……これが鬼の……鬼鎧の力?」
 秘色は鬼鎧の意思に引きずられないように理性を保つので精一杯だった。
 鉄生は言わなかったが、これはまだ完成品ではないのだろう。
 鬼鎧は御門めがけて突っ込んだ。
 敵味方が散り散りとなり、やがて雑兵が城内になだれ込んでいた。
 その先頭に立つ武将の中にひときわ目立つ、銀髪に眼帯をした侍がいた。