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【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第2話/全3話)

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【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第2話/全3話)
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●龍の舞(1)

 開始から、もう五時間は経過しただろうか。
 蒼空学園の体育館。屋外では晩秋の寒風が吹きすさんではいるものの、館内は真夏のようだった。
 それも、陽光差し込む爽やかな夏というのではない。熱気で蒸れる高湿の夏に近いのだ。空気は濃密でうんざりするほど甘く、匂いがついていてゆらゆらと揺れている。立っているだけで汗が噴き出しそう。眼鏡を所持している者であれば、体育館に入るなりたちまち曇ってしまうだろう。
「いいですか。もう一度最初から見せます!」
 アルセーネ・竹取(あるせーね・たけとり)は声を張り上げていた。
「この一小節で重要なのは右腕、角度が二度も違えばまず間違いなく失敗します。さあついてきて……そこ! 左脚の回転が遅すぎる! それでは刻んできた旋律が台無しです!」
 アルセーネの口調はまるで別人、人が変わったかのようだ。いや、口調だけの話ではない。眉は怒り、目は強い光を放っている。美少女であることにかわりはない。けれど普段の彼女にあるのは月光の美しさだが、本日の彼女はまるで、剥き身の日本刀のように美しい。
 現在、この場所ではアルセーネの指導のもと、龍の舞の伝授が行われているのだ。
 門外不出の伝統芸能、指導は厳しい、とは聞いてはいたがこれほどとは……と舌を巻いた者も少なくはないだろう。優雅に見えて実は、激しい肉体的負担を強いる舞なのである。しかも極端なまでに精確さを要求されるため、精神的疲労もはなはだしい。
「はい、ここで十五分休憩です」
 汗みずくになって……それでも均整のとれた姿勢を崩さず、呼吸も寸毫に乱さずにアルセーネは言った。
 拷問から解き放たれたとでもいうかのように、参加者の多くは深く息を吐いた。床に座り込んでしまっている者も少なくない。
「すごいよね……アルセーネさん。本当にすごい」
 汗をタオルで拭いながら清泉 北都(いずみ・ほくと)は息をついた。全力でフルマラソンを走ったくらいの疲労を感じる。けれど舞の指導は、ようやく半分といったところだろう。パート練習はようやく終わったとはいえ、まだ通し稽古にすら入っていないのだ。改めて言う。
「習っているだけの僕らにこれだけの負担があるんだ、指導するアルセーネさんはもっときついはずだよ。それなのにまるで疲れを見せない……すごい人だよ」
「北都、大丈夫ですか。体力はもちそうですか?」
 やや紅らんだ顔でクナイ・アヤシ(くない・あやし)も汗を拭っている。
「平気だよ。一応、社交ダンスとはいえ踊りの経験はあるからね……まあ、踊りの系列は異なるから先入観をもたっず真っ白の状態で挑んでいるけど、型(かた)に厳しいという意味では近いものがあるかな。とりあえず体も柔らかいほうだし……」
「ですが無理はしないで下さい。限界が近くなったらすぐに休んでほしいと思います」
「そうしたいね、お互いにさ」
「それならいいのですが……」
 と言いながらもクナイは、北都の発言を言葉通り受け取ることはできないのだった。負けず嫌いな北都の性格は知っている。彼は『つい』頑張りすぎてしまうのではないか。クナイ自身も初めての舞ということもあって精神的な余裕はほとんどないのだが、北都に気をつけたいとは思った。
「龍の舞って……全員が一斉に踊るとき、上から見ればこんな形になるのでしょうかね?」
 左右の手を異様なな角度に折り曲げ、リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)はストレンジなポーズを取った。
 断っておくが別にリオンは受け狙いでやっているわけではない。むしろ大真面目、いわゆる天然なのだろう……それだけに、北都は笑ってしまう。
「どうしたんです? なにかおかしいですか?」
 その証拠に、まるで自覚症状なくリオンは小首をかしげていた。
 リオンのおかげで心が少しほぐれた、まだまだ頑張ろう。
 何度か小休止は挟んでいるが、強行軍と呼ぶほかないレクチャーである。正直、逃げ出したくなるほどに辛いが、絶対に拾得してみせると北都は誓っていた。
 ――門外不出の『龍の舞』を教えるのは、アルセーネさんがそれだけ危機感を感じてるってことだよね?
 その『危機』が遠からず訪れるであろう予感はしている。ならばこの機会を無題にできるはずがないではないか。
 その感覚は度会 鈴鹿(わたらい・すずか)も共有している。
 ――この舞が本当に必要になるとき、それはとても厳しい状況下である可能性もありますね。
 与えられた責務は重い。なにより大切な伝統を受け継ぐのだ。気を引きしめていきたい。
「ご休憩中ですが……よろしいですか?」
 体育館の隅で正座し、目を軽く閉じているアルセーネに鈴鹿は声をかけた。
「はい」
 すっと目を開けたアルセーネには気品がある。しかも、日頃のおだやかさとはとは違う凛乎とした気品だ。これは戦闘者……まるで戦士の目だ。
 敬意を抱きつつ鈴鹿は彼女の眼前に正座し、丁重に頭を下げた。
「遅くなりましたが……改めて、どうぞよろしくお願いしますと言わせてください」
「こちらこそ。そして……申し訳ありません。予告はしたものの、かなり厳しい指導をしています。私としても峻烈な物言いはしたくないのですが……どうしても、私が習ったときの再現のようになってしまって」
 これしか知らないものですから、と恥じる様子のアルセーネに、そんなことはありませんと鈴鹿は言った。
「アルセーネさんが教えているのは舞のお作法だけではありませんね。お作法というのは単に動作だけ真似れば良い、というものではありませんから……大切なのはそこに心、魂が籠もっているか。
 魂がこもるからこそ、厳しくなる。それでいいのだと思います」
「よう決心なさったの、アルセーネ殿」
 いつの間にか、織部 イル(おりべ・いる)もそばに正座していた。
「門外不出と言われる龍の舞、これを短時間で身につけよというのじゃ。教える者も学ぶ者も真摯でなければならぬのは道理……不平を言われるいわれはない」
 イルは言い、鈴鹿にも一瞬だけ眼を向けた。
 ――鈴鹿も成長したものよ。
 彼女がアルセーネに述べた言葉は、自分の考えとぴたり一致する。妾からきちんと学び取っているようじゃな――と誇らしくも思う。
「たまき殿も参加なされば良かったのにのう」
 ふと、イルは体育館の壁際を見やる。そこでは鬼城 珠寿姫(きじょうの・すずひめ)が、腕組して立っているのだ。珠寿姫はその背を壁に預けていた。
 珠寿姫は視線に気づいた様子だが、「何だ」という目線を返しただけだった。
 だが珠寿姫はイルの意を汲み取ったらしい。
「私は……鎮める側というより鎮められる側であるようだしな、色々と……」
 ぽつりと呟いた。
 こうして鈴鹿とイルの修練を見ているのも悪いものではなかった。
 それにしても龍杜那由他はどこにいるのか。珠寿姫は気が気でない。
 ――未だ誘拐事件は解決しておらぬ故、我らのようなマホロバの娘は、なるべく人の多い場所にいる方がより安全ではないか……。
 できるだけ一人になるべきではないのだ。
 とりわけ今日は、ともに龍の舞を学ぶべきではないのか。それなのになぜ、この場所にいないのだ。
 那由他の行動は謎めいている。先日の『苦労話大会』でも、いつの間にか彼女は姿をくらませていた。以後、消息は明らかなのだがほとんど見かけない。葦原明倫館で見ても、どこかよそよそしくこちらを避けるようなところがあった。
 謎めいているといえば、珠寿姫には、アルセーネの態度にも気になるところがある。
 今日はアルセーネ自身、那由他のことは決して口に出さないのだった。訊ける雰囲気でもなかった。
 ただケンカしたというような他愛ない話であればいいのだが、そうとは思えない。なにより二人は、あれほど仲の良い友人同士だったではないか。あえて会わないようにしているのだろうか。それならば、なぜ?
 雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)も姿を見せており、慣れぬ仕草に四苦八苦しながら舞を学んでいるようだが、彼女もあえてそのことを訊かないようにしているように見えた。
 ならばせめて、と、ふたたび珠寿姫は呟いていた。
「なるべくアルセーネ殿を見守るようにせねば……」

 那由他の不在を天 黒龍(てぃえん・へいろん)も訝しんでいる。
 来場早々、那由他の姿がないのを知ると、黒龍は黄泉耶 大姫(よみや・おおひめ)にあることを頼んでいた。
 黄泉であれば――彼女に託すや、以後ずっと、黒龍は舞に集中している。
 舞以外のことは考えないようにした。いや、舞のこと以外は考えたくても考えられない。
 それもそのはずだ。今の黒龍に、舞の稽古以外のことに心を向ける余裕はないのである。
 アルセーネの指導が厳しいことは気にならなかった。元々黒龍は、伝統の厳しさには慣れている。普段は遊郭に身を置いているのだ。客相手に無礼がないよう、作法はうるさく叩き込まれてきた。
 相手が龍でも、物事の順序や所作は重んじねばならないのは同じだろう、そう思う。
 それに、黒龍が生来、静寂を好む性分ということもあった。
 ――鎮める為の舞なら性格も向いているだろう。
 とはいえ黒龍にとって、舞の修得は容易ではなかった。いくらセンスがあっても、舞楽の経験の乏しさは繕いようがないのだ。
 黒龍は、アルセーネの動きの流れをよく観察し真似ようと苦心していた。
 楽ではない。アルセーネに近づこうとあがくほどに遠ざかっていくようにも感じる。
 ――身は、龍神の住まう大河の流れの如く滔々と。
 己に言い聞かせる。
 心は無に。あるがままを流れに受け入れよう。
 受け入れ難い『流れ』も、ある……それは事実なのだけれど。
 けれど膝を折るわけにはいかない。
 黒龍がドラゴンライダーでいるのは、龍と心を交わす術を得たかったからだという。
 彼にとって『龍』には少々…苦い思い出が、あった。
 それを思えば、『諦める』という選択肢などあるはずがない。

「……聞きしに勝る厳しさ、といったところですね」
 東 朱鷺(あずま・とき)は荒い息をついていた。ゆっくりした舞だが、隅々にまで神経を払わねばならないということもあり、トータルの運動量はすさまじい。疲労が足に来ている。
「けれど厳しいのは望むところです。朱鷺の知識欲をなめてもらっては困ります」
 朱鷺の目から情熱は消えていない。
 いやむしろ、修練をはじめたとき以上に燃え上がっている。
 朱鷺は舞を学ぶにあたって、前もって『予習』をしてきている。
 それは、地球人用の剣の舞。
 もちろん舞のジャンルとしては大いに異なる。だが舞の基礎となる訓練はみっちりしてきた。その上でここに来ている。これをマスターしたことが、朱鷺にとっての自信となった。
 だから諦めない。諦めるつもりもない。
 今のところ、まるでものになっていないと朱鷺は知っているが、どこかにブレイクポイントがあると信じてもいる。
 一念、岩をも通すと言う。
 ――大丈夫。朱鷺ならやれます。今までだって、沢山のスキルを習得してきたのですから。
 記憶術を働かせて、ここまでの動きはほぼ完璧に記憶した。
 あとはこれを、どう再現するかであろうか。
 同じ会場にはリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)の姿もある。
「陣くん、今日は本当に熱心だよね」
 リーズは七枷 陣(ななかせ・じん)に水筒を手渡した。
「そうか?」
 陣は意外そうに言って「それはそうと、ドリンク感謝な」と小尾田 真奈(おびた・まな)に言った。冷えた茶が入っているのだがこれは市販品ではなく、真奈が調合した疲労回復効果の高い特製品なのである。
 リーズに首肯して真奈は言う。
「今日のご主人様は本当に真剣です。私も見習いたいと思います」
 体育館に入ってから、陣は一心不乱に練習に励んでいた。普段のように軽口をたたくこともなく、休憩になっても、メールで外で調査を続けている友人の榊朝斗らと短い情報交換をする程度で、あとは練習の続きを自主的にやっているのだ。
 ところが陣は言うのだった。
「誤解せんでくれよ。申し訳ないけどオレは、龍の舞そのものに興味なんて一切ない。ただ、オレが助けたい奴らに必要になる手段のはずだから学んでる……それだけや」
「舞の芸術性や伝統に惹かれているわけではない、これはあくまで『手段』だと言いたいわけか」
 仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)がうっすらと目を開いた。それまで彼は目を閉じ、腕を組んで、死んだように動かず休息を取っていたのだ。
「なんか悪いか」
 陣はどこかむっとしたように返事した。
「悪いとは言っていない」
 磁楠は再び目を閉じた。
「休めるときは休んでおけ、焦るほど完成は遠のくぞ」
「……判っとるわ、そんなこと」
 陣は座って呼吸を整えた。磁楠の言う通りかもしれない。認めたくはないのだが、躍起になって習得しようとするたびに、舞が表現するものからぶれていくようだ。それゆえか重い疲労感が両肩にのしかかっている。
 ――けれど気を抜くわけにはいかない。アイツらを完全に助けるには、この舞を覚えないといかんのや。
 もがくほどに溺れる底無し沼にいるような気が、陣はしていた。
「……」
 神崎 優(かんざき・ゆう)がじっと七枷陣を見ていることに神崎 零(かんざき・れい)は気づいた。
「どうしたの?」
「いや……彼も焦燥感に駆られているようだと思って」
「それ、優もだよね?」
「……ああ。だから彼の気持ちは判る。判ったからといって、今すぐどうにかできるものではないのだけど」
 優は前回の調査内容、ならびに自分の予想から、この舞の習得が必要になるのではないかと半ば確信に近い思いを抱いていた。
 しかしそんな彼の焦りをあざわらうかのように、彼の四肢は舞を身につけてくれないのだ。
 運動能力が足りないからではない。強さであれば優も人後に落ちないだろう。剣を振るえば大抵の者には負けない。
 龍の舞の型が困難すぎるというのとも、少し違う。
 困難ではあるが、見様見真似くらいならすぐできるのだ。しかしいくら見た目だけ似せても、『龍の舞』の本質をつかんだような気持ちになれないのだ。
「大丈夫。自分だけがそうだって思わないで。私も、どうも借り物の演技をしているだけという気がするの……アルセーネの動作をコピーはできても、その本質を理解できていないというか……」
「俺の考えだが」
 と神代 聖夜(かみしろ・せいや)が告げた。
「やはりこの舞の神髄は、作法の厳しさではなく精神にあるのだろう。だがそれを他人指摘されたからといって、突然精神が学べるわけではない。ゆえにアルセーネはあえて精神のことに触れず、ひたすら技術ばかり指導するのではないか……」
「つまり、鍛錬を通して己の内側にあるものに『気づきなさい』ということですね」
 陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)が言った。刹那は決してスタミナのあるほうではないのだが、この鍛錬には十分に付いてきている。
 アルセーネが立ち上がったのを優は見た。
「そろそろ再開らしいな」
 体の節々が痛む、心も重い、けれど、習得にかける情熱は消えてはいない。

「……え、もう練習再開なん? 十五分って早いわ〜」
 ひゃー、と言いながら奏輝 優奈(かなて・ゆうな)はよろよろと立ち上がった。まずは形から、というわけではないが、優奈も今日は巫女の服を着ている。
「やっぱり私も、ですよね?」
 同じく巫女装束のウィア・エリルライト(うぃあ・えりるらいと)が言う。今日はてっきり、優奈が習うだけだと思って気軽に同行しただけのウィアなので、自分も巫女衣装を手渡されるとは思っていなかったという。
「あったりまえやん、さあさあ、乗りかかった船、それが泥船だろうがガレー船やろうが最後まで見届けるまでやで〜」
「まあ乗りかかったのは事実、頑張りましょう。でも舞は、優奈の方が適任だと思うんですが……アイドルの仕事で踊ったりしてますし……」
「アイドルの踊りは……なんかちゃうやろー。それに舞というなら、ウィア、神楽舞の経験あるやん? 巫女しとった時。龍の舞って厳かな感じの和風の踊りなイメージやし、ちょうどええかなって思たんやけど」
「えっ? でも神楽舞の経験なら優奈だってありますし……静と動を併せ持つ、というのも優奈にぴったりですよ?」
「いやぁ、何をおっしゃるウサギさんやで。静と動ならウィアこそぴったりやろ!」
「いえいえ、静と動なら優奈でしょう」
「じゃあ言ったろか? ウィアの動と静……。
 新作レシピ思いついた! って夢中で料理しとる姿が動!
 心を落ち着ける訓練! って瞑想しとる姿が静!
 どや!?」
「それならほら、優奈の動と静も言いましょう。
 実験が上手くいきそうな時の、今にも暴れだしそうな姿が動!
 魔道書読んでる時の、微動だにしないほど集中してる姿が静!
 いかがです!?」
「………………」
「………………」
 優奈とウィア、二人はしばし、お互いの顔を見つめ合って停止した。
 それはまるで、ビデオの『一時停止』ボタンを押したかのように。
 やがて、ぷっ、と同時に噴き出した。体の疲れは吹き飛ぶ気持ちだ。笑いあい、互いの肩を叩きあう。
「だいじょーぶ、もうちょっと頑張ってやってこか? 気合があれば乗り切れるやろ!」
「そうですね、一緒にがんばりましょうか!」
 一人で来たのなら、辛くなって心が挫けていたかもしれない。
 だけど優奈の言う通り『だいじょーぶ』なのだ。二人でいれば、きっと大丈夫。きっと頑張れる。
 優奈はウィアといれば無敵だ。ウィアは優奈といれば無敵だ。
 そんな二人の姿を、レン・リベルリア(れん・りべるりあ)は遠くから見ている。彼も見学者として壁際にあった。鬼城珠寿姫のすぐ隣だ。
 さっそく練習を再開した優奈を長めながら、レンは胸を熱くしていた。
「やっぱりいいなあ……姉さんが踊ってるの見るの久しぶりだもん。アイドルしてる時なんて、僕、舞台裏だし……」
 距離があってもレンには優奈の姿がよく見える。いや、優奈しか見えないというに近い。
 優奈は可愛い。本当に、心臓を鷲づかみにされちゃうくらい可愛い。優奈が頑張っているところを見るだけでレンは、心臓がツーバスドラムドカドカドカドカ……になってしまうくらいだ。
「そういやウィアとは、さっき、なんかモメてたけど……結局笑いあってたな。ホント仲いいなぁ」
 優奈とウィアの仲睦まじさは周知のことだが、改めてそれを確認した気持ちになるレンである。
 だから……、だから、思ってしまう。
 ――う、羨ましくなんてないよっ!
 と。