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インベーダー・フロム・XXX(第3回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第3回/全3回)

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【6】 Re:Re:NOAH【1】


 灰色の澱を進む格闘式飛空艇 アガートラームの甲板の上、レン・オズワルド(れん・おずわるど)は乾いた風を身に感じながら、遠くの空を見つめていた。
「ここにいたんですか」
 魔法少女シスターノアに変身したノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)が諸々の道具や衣装を詰めたトランクを抱え、現れた。
 魔法少女アイアンメティスとなったメティス・ボルト(めてぃす・ぼると)も一緒だ。
「頼まれたものは持ってきましたけど、本当にするんですか?」
「戦士としての矜持を守ることは大事だ。だがその為に大勢の仲間と海京の人々を守れないのでは身も蓋もない。俺の進む道は俺を守るための道ではない」
「レンさん……」
「ノア……俺は魔法少女になるぞ!!」
 人生に何度かある大きな決断。そのうちの一つを決断するように、レンは宣言した。
 艦橋に戻り、レンを船長席に座らせらせる。
 ノアとメティスは、銀髪のウィッグを被せ、胸パットをアメリカのフライドポテトより山盛りに重ね、彼のトレードカラーである深紅のドレスで着飾る。それから、化粧を施していくと、かつて空大のコンパで見せたレンの女装姿にだんだんと変貌を遂げる。
「……ところでレン。海京警察と天御柱学院、双方に連絡をとったのですが、どちらも機能が麻痺している状態でした。例の件の提案は、状況が回復してからになりそうです」
「そうか。その件は引き続き任せる」
「……何の話ですか?」
 ノアはアイラインを引きながら、二人に尋ねる。
「事後処理の話だ」
「事後処理?」
「事件が解決しても、空京市民、そして教団信者の心に与える影響は大きいです。それだけグランツ教は大きい団体になってしまっているからです。もし詳細に事件を説明したとしても、それを受け入れられない人は多いでしょう。下手をすれば暴徒化……現代の人々が明日の狂信者へと変わる恐れがあります」
「それを防ぐ為に、この件は”一部”の信者の暴走と言う形で終わらせなければならない」
「大切なのは正義を守ることではなく平和を守ることです」
 ノアは二人の言葉に頷く。
「……そうですね。どんなに事件解決に尽力しても、それで助けた人々の心の支えに自分たちがなれるかと問われれば答えられません。刑事だった頃にそんな経験をしているレンさんだからこその判断ですね。私は良いと思います」
「ただ、それを提言するにせよ。まずは事件を解決しなければなりません」
 女装が完成したところで、レンは魔法少女になった。別に魔法少女になるのに、女装をは必要ないのだが、彼としては中途半端に見苦しい姿を晒すのが堪え難かったのだろう。
「……魔法少女・匿名希望とでも呼んでくれ」
 船の前方にゴールドノアが見えてきた。
「通信の準備を」
 飛空艇の通信機で、ゴールドノアに通信要請を送る。
 通信は届いているはずだが、しかし、向こうからの応答はない。
「……ガーディアンに気付かれました。これ以上の接近は危険です」
「ま、まずいですよ、レンさん……」
「通信を続けるんだ」
 それでも、レンは通信要請の継続発信を指示する。
「この船を撃墜したいならそうするがいい。だが、それをすればお前達は後悔することになるぞ。ここにはお前達の大事な”超国家神”がいるのだからな……!」
 まだ応答はない。レンは聞こえているものとして、話を続ける。
「調査の際に見つけた超国家神のポスター。それを見た俺は”何処かで見た”気がした。何処かで見たが、誰だかわからない。それはおそらく、俺の知っている人物の未来の姿だったからだ。そう、俺たちの仲間の中に将来”超国家神”になる者がいる。
 問題はそれが誰かということだが、俺の予想では遠藤寿子だ。年齢的、そして実年齢よりも幼い外見。そして夢見がちな性格を考えれば、将来そういった宗教の神として祭り上げられる可能性はゼロとは言えない」
 それは元刑事の勘だった。
「さて、メルキオールよ。神の乗る船を沈められるか?」
 そう言った次の瞬間、ガーディアンのメギドファイアがアガートラームを貫いた。左舷から右舷に、動力部を焼き尽くして熱線は突き抜ける。船内各所から爆発が起こり、船は制御不能に陥った。
『神がお前達の前にご光臨されるものか』
『神の名を騙る不心得者に相応しき死を。穢れなき浄化の炎にて塵に還るがいい』
 ガーディアンは船を囲み、不気味な言葉を発する。
「め、め、め、めっちゃ沈めにきてますよ、レンさん!」
「……遠藤寿子ではないのか……?」