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【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第3話/全3話)

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【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第3話/全3話)
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●遺跡塔からずっと

 遺跡地帯の一角に、黒くなった塔がある。
 その屋上から百鬼夜行を見下ろしつつ、不敵に笑う白衣の男があった。
 彼の名は……。
フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)
 彼は眼鏡をくいくいと直すと、なんとも満足そうに余裕の笑みを浮かべた。
「ククク、八岐大蛇め、まんまと我が部下の神奈を取り込みおったな! すべて計画通りだ!」
 この辺、本当に計画通りだったりする。
「本当に神奈、さらわれちゃったね……ここまで計画通りに行くなんて、天才を自称するのもダテじゃないよね」
 デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)が言うと、ハデスは両腕を拡げますます哄笑した。
「フハハハ! そうだろうそうだろう! もっと称えていいぞ!」
「それで、次はどうするの?」
「うむ! 計画の最終段階、八岐大蛇の乗っ取り計画を実現に移すとしようか! 我らオリュンポスは、これより八岐大蛇の精神世界に入る! そして神奈と協力して八岐大蛇を内側から操り、我ら秘密結社オリュンポスの世界征服の駒としてくれよう!」
「すっごーい! でも、どうやって?」
「それは……秘密結社オリュンポスの新メンバー、仁科耀助に答えさせよう! さあ、語れっ!」
「誰が新メンバーだ、誰が」
 言いながらも耀助はいそいそと出てきて、デメテールの手を握った。
「でも『秘密』って言葉、なんだかそそらない? 君と秘密を共有したいな」
「えー、それって面倒くさくなーい?」
「こら我が部下! さぼっているでない!」
「いやそういうわけでは……っていうか部下になった覚えはないっつーの!」
 調子狂うなあ、といいながらも、へらりと笑みを浮かべて仁科耀助は言った。
「ええと、二人にはさわりだけ伝えたと思うけど」
 振り返って耀助は告げた。
「みなまで言わずともよい」
 リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)がさっと片手を挙げた。
「大まかなところは校長から聞いたのだよ。八岐大蛇……奴のところに行く方法があるのなら我等も同行するのだ」
「うん。要はそういうこと。……リハーサルなしのいきなり本番勝負だけど、覚悟はいいかな?」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず。危険は承知の上だ」
 ララ・サーズデイ(らら・さーずでい)は腕組みしたまま頷いた。
「いいね〜、リリちゃんとララちゃんのその勇ましさ! ますます好きになっちゃいそうだよ」
「……妄言を並べる前に行動したらどうだ」
 ララが腰の剣に手を伸ばしたので、耀助は首をすくめてみせた。
「必要なのはローラちゃんとその剣……おっと、握るのはいよいよのタイミングまで待ってね」
 耀助が眼を向けた先にはローラ・ブラウアヒメルの姿があった。彼女は手に、ヴァイオリンでも入りそうな黒いアタッシュケースを持っている。
「うん……グラキエスから託されたものだから、その瞬間まで守るよ」
 言いながらローラはアタッシュケースを胸に抱えた。
 そこには、かつてローラを操った玄武の魔剣が入っているのだ。ローラが魔剣から解放された直後、その呪縛を一身に受けたのはグラキエス・エンドロアだった。最終的にグラキエスが呪縛に打ち勝つと、玄武は砕け、柄の部分に僅かに刃がの残りがついているだけになった。
 ――グラキエス……。
 ローラが刹那、同行の柚木桂輔のことを盗み見たことに気づいたものはなかった。
 桂輔ではなく、そのパートナーのアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)は瞬間的に、何かに気づいたような表情になったが、何も言わなかった。
「では、行くぞ、我が部下たちよ!」
 と声を上げ真っ先に、ハデスは塔を降りた。
 下では耀助の同行者、フレンディス・ティラや雷霆リナリエッタが待っているのである。なんのために塔に昇ったのかは……謎だ。(そうでないと盛り上がらん! と彼なら言いそうだが)