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古の白龍と鉄の黒龍 第5話『それが理だと言うのなら、私は』

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古の白龍と鉄の黒龍 第5話『それが理だと言うのなら、私は』

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 ――そして、ダリルの目論見通り、『天秤宮』の軍勢は引き寄せられる格好で、『ポッシヴィ』を目指し進軍する。地上を突進する『トコトコ』は背に『Cヴォカロ族』の少女たちを乗せ、空からはトコトコや爆撃用の爆弾を満載した『キャリアー』を護衛する形で、『フライヤー』が囲みながら接近する。

「パイモン殿から先駆けの任を預かった、この夏候淵が相手だ!」
 意気揚々と、淵が三つ首のドラゴンに騎乗、配下として飛行機晶兵を従え、『天秤宮』の軍勢と交戦に入った。
(フライヤーが護衛する、キャリアーを潰すことが出来れば敵の目論見も潰せる。
 キャリアーの操縦を奪い、別のキャリアーにぶつけてくれるわ!)
 狙いを青色のキャリアーに定め、淵はドラゴンを滑らせるようにして接近する。フライヤーのビーム銃を後方に見ながら、キャリアーと向かい合わせになった所でドラゴンから離脱、正面の窓をぶち破って侵入を果たした……までは良かったのだが。
「……む? この機体は、無人機だと?」
 中に操縦士が居ないことに淵が気付き、ならばコントロールを奪うべく操縦パネルを見て、淵は大きな悪寒に襲われた。
(これは……いかん!)
 慌てて窓から外へ飛び出し、搭乗していたドラゴンに体当たりを命じる。命令通りにキャリアーを押しのけ、淵を乗せて後方に飛び去った所で、乗っていたボムキャリアーが爆発を起こして欠片が地面に落下する前に忽然と消えた。
「コントロールを奪われる前に自爆とは、やってくれる。
 だが、二度同じ手は食わぬ! 内から利用できぬなら、外から破壊するまで!」
 一つの失敗に気落ちすること無く、淵はドラゴンと飛行機晶兵と、『Cマガメ族』を相手する――。


「各員、奮闘せよ! 帝国の精鋭の誇りを思い出せ!」
 アメイアの部下、ゴルドンの指揮の下、かつての第五龍騎士団達が『トコトコ』及び『Cヴォカロ族』の少女たちと相対する。自分の数倍の大きさのトコトコに対しても、彼らは恐れる事無く立ち向かい、よく敵を食い止めていた。
「こいつを食らいな!」
 ザミエル・カスパール(さみえる・かすぱーる)の放った弾丸は、誘導弾のように軌道を変えトコトコに乗っていた『巡りのるか』を撃ち抜く。次いでトコトコにも射撃を浴びせ、龍騎士団の支援となる。
(レン、伝言はしっかり、伝えておいたぞ。まさか約束を破るような真似はするまいな?)
 心に呟いて笑みを浮かべ、弾を込め直したザミエルが的確に敵を狙撃していく。

 『もうすぐ味方を連れて戻る。それまで頑張ってくれ』
 ザミエルから届けられたレンからの伝言を思い返して、アメイアはその時を待つ。味方とはおそらく、両者間で停戦に至った龍族と鉄族の事を指しているのだろう。
(……レンは、龍族と鉄族の長の直接対話を模索しているという。確かに両方が停戦に至った今であれば、それも叶うかもしれない。
 だが当然、命を狙われる危険性も孕んでいる。それでもレンは、自らの命を賭けた)
 ザミエルの口から、この両種族のトップ会談を成立させることがレンにとっては、命を賭けるに値すると本気で思っていることを伝えられたアメイアは、前にもこうして命を賭して自分に立ち向かい、伝えようとしてきた彼の姿を思い出していた。
(……信じよう、彼を。龍族と鉄族を味方に連れてくる彼を)


 ――その直後。
 ポッシヴィの後方から龍族、鉄族の編隊が飛んできたかと思うと、地上と空中に跋扈していた『Cマガメ族』『Cヴォカロ族』に次々と攻撃を仕掛ける。

「『執行部隊』の精鋭を先頭に、『天秤宮』への道を開きます。
 ……皆、これが最後の戦いとなるよう、奮戦を望みます」

「各員は『疾風族』に続いて、『天秤宮』の軍勢を蹴散らせ!
 我々の手で、勝利を掴み取るのだ!」

 『昇龍の頂』、“灼陽”でそれぞれダイオーティと“灼陽”が戦闘開始を告げた。
 今ここに、龍族と鉄族、契約者の3勢力が一つとなったのであった――。