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黒く染まる翼

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第二章 古城で戦端は開かれ

 さすらいの吟遊詩人ミューズ・シェヘラザード(みゅーず・しぇへらざーど)はツァンダ沿空部の古城を眺めていた。

 リュートによく似ていて、とても広い音域を出せる独特な楽器【ヴェルデュ】。
 ミューズはその愛用の楽器を手に、セーラ・アストライア(せーら・あすとらいあ)を従えて、古城に進み行く人々を見ていた。

「名すら忘れられた古城に、一人住まう鏖殺寺院の女性。そこで開かれる仮面舞踏会の内容はさてはて……」

 乳白金の髪が鈍い光を見せる。

「空が……暗いですね」

 雲のかかった空に、セーラの美しい声が吸い込まれる。

「暗いですね。しかし、その暗さを照らすかのように一筋の光がそこに……」
 
 ミューズの赤い瞳が一つの集団を見つめる。

 それは波羅蜜多実業高等学校の弐識 太郎(にしき・たろう)率いる【城外戦闘班】だった。
 だが、彼らはすぐに城には近づかず、2人だけがぴょんと出て行った。

「おや、小さな男の子とお嬢様が入っていきますね……」

 乳白金の髪を後ろで束ねた男の子が、こそこそと城に向かっていくのがセーラからも見えた。
 その少年を少しだけ心配そうに、和風の髪をした着物の女性が見守っている。

 少年のそばには、翼型の銀色のツインテール髪をした少女がいた。
 アクアオーラクォーツの髪飾りがキラッと光る。

 そして、少年と少女は場内へと消えていった。

 その少年少女、犬丸 シロウ(いぬまる・しろう)ナナリー・プレアデス(ななりー・ぷれあです)
は、【城外戦闘班】の偵察班として城内に潜入していた。

「シロウ様……気になりますか?」

 時々、後ろを振り返るシロウにナナリーが声をかける。
 
「あ、いや、気になるなんてことは……」
「いいえ、わたくしも同じ気持ちがありますから、分かります。いつも、どんなときでも……特にこうやって離れている時はユーシュテのことを考えてしまいますわ」

 2人ともパートナーに想いを寄せている。
 どこか似通ったところを感じると親しみがわくもので、少し二人の態度が砕けた。

「これがわたくしたちの作戦の最初、がんばりましょうね」
「本当は派手に暴れたかったけど……まあ、やるからには全力でやるさ!」

 シロウは元気に、かつ、ローグらしく慎重に、隠れ身を使用して探索を行い、城壁を調べた。

「うまく舞踏会とかには影響のないような、反響のしにくい場所があればいいけど……」

 心配しながら、爆破に適した場所を探すシロウだったが、すぐにそれは見つかった。
 古城の城壁は古ぼけており、壊すには簡単な場所がいくつかあったのだ。

 シロウは見つからないように注意しつつ、パートナーのネネ・マーシラ(ねね・まーしら)に携帯で電話をかけた。



 その頃、ネネはちょっと不満そうな顔をしていた。

「悪りぃな、ネネ。つまらんか?」

 太郎が声を掛けると、ネネは細いなで肩を少しだけすくめた。

「まぁ、学友の皆様を助ける為にも、全力をつくさせていただきますね」

 地味な役割だ、とネネは思っていたが、その分、楽でいいかとも思っていた。
 そんなネネを見て、太郎は黒い目を細めて笑った。

「必要かつシロウにしか出来ないことだから頼んだが、何かやりたいことがあったら、ちゃんと言えよ。せっかく出来た仲間なんだしな」

 目つきの悪い太郎だが、笑うとどこか愛嬌があった。
 ここが太郎が兄貴と慕われやすい面であろう。
 そして、ネネと太郎が話していると、ネネの携帯が鳴った。

「はい……はい、分かりました。それでは連絡をいたします」
「シロウからか」
「そうです。場所の確認を」

 ネネが太郎に古城のある方角を指し示す。

「了解だぜ。シロウはそのままそこにいて破壊組と合流だな」
「分かりました」
「あと、悪りいが、城壁破壊班に連絡を。俺の方は陽動班を動かす」

 太郎はネネに後を任せ、自らも参加する陽動班を動かしに行った。
 そんな太郎の広い背中を見ながら、ネネは小さく笑った。

「身長だけは、まあ、合格ですけどね」



 そんな品定めをされているとは知らず、太郎は自分を待つ神崎 僚(かんざき・りょう)冬譲 雪衛(とうじょう・ゆきえ)獅子吼 甘楽(ししく・かんら)ディ フィス(でぃ・ふぃす)の元に行った。

「そろそろ……ですか」

 僚が視線を向けると、太郎は「おう!」と頷いた。
 不良っぽく見られる僚だが、波羅蜜多実業の太郎から見れば、不良など単なる一般生徒。
 なので、太郎は僚に普通と変わりなく接した。

「ありがとう……ございます」

 常に僚を全力で支えたいと思っている冬譲 雪衛(とうじょう・ゆきえ)の礼に、太郎は瞬きする。

「何の礼か知らねえが、雪衛はがんばってくれな。俺らは無茶するだろうから、ヒールは大事だ」
「もちろんでございますよ、リーダー」
「そんなら、行こか!」

 甘楽が獅子吼の名に恥じない元気な声を出して動き出す。

「お待ちくださいませ、!」

 ディの制止に甘楽が不満そうに頬を膨らませる。

「なんやあ、どうしたんや」
「そちらではないかと存じます」
「……」

 思わず黙る甘楽。
 甘楽の方向音痴さは、出発時点から発揮されていた。

「陽動班はこちらです。ちゃんと弐識について行って下さいね」

 僚に釘を刺され、甘楽がすごすごと付いていく。
 そんなみんなをおかしそうに見ながら、太郎は気合を入れた。

「よし、いっちょやるとしようぜ!」

 

 一方、城壁破壊を担当する各務 竜花(かがみ・りゅうか)クローディア・ノイヴァール(くろーでぃあ・のいう゛ぁーる)リリィルヴィア・ユーベルブルート(りりぃるう゛ぃあ・ゆーべるぶるーと)の3人はネネに指示された通り、太郎たち陽動班とは逆の方に向かっていた。

「あ、シロウくんだ!」

 竜花がシロウの姿を見て駆け寄ろうとする。

「気をつけろよ。どこかから狙われてるかも知れないぞ」

 冷静に竜花を制止しつつ、クローディアも足早に進む。

「急いでいますわね、クレア」
「リリィ、のんびりしていたら機会を逃す。慎重に、かつ迅速にだな」

 灰色のネクタイをいじりながら、クローディアはパートナーのリリィルヴィアと共に行く。

「こっちこっちー」

 シロウが手を振り、そこにリリィルヴィアたちが入りこむ。

「さ、どうぞ」

 合流していたネネがある個所を指し示す。

「よし、それでは、ここで待機だ」



 城壁破壊組が準備ができたのに合わせて、陽動組が動き出した。

「さあ、力の限り、暴れようぜ!」

 弐識 太郎(にしき・たろう)の扇動で、陽動班の全員が動き出す。

「さーて、がんがんいくでー!」

 獅子吼 甘楽(ししく・かんら)がまず真っ先に動いた。

 片膝立ちをして、やってくるスケルトンを狙い、バンバンと撃って行く。

 スケルトンに命中するが、一発では倒れない。
 それをガンガンと撃ちこんで追撃する。

 3発食らって倒れたスケルトンを見て、甘楽は肩をすくめた。

「んー、ちょっと効率悪いかな。もう一人くらいソルジャーがおるといいんやけど」

 そう言いながらも、たくさん撃てるのがどこか楽しいのか、甘楽はドンドン撃ちこんでいく。

 派手な銃撃音が影響して、甘楽にスケルトンの意識が集中する。
 空洞になった眼窩に見つめられ、甘楽は小さく笑った。

「わー、あたしってば、もってもてやん!」

 初めての戦いとは思えない大胆さで、甘楽が笑う。
 甘楽が派手に撃ったのに合わせて、スケルトンたちが向かってきた。

 その様子を見て、シロウに後を任せたナナリーが踊り出た。

「さ、かかっていらっしゃいな! この百合園女学院のわたくしが相手になって差し上げますわよ!」

 ナナリーは百合園女学院であるということに誇りを持っていた。
 だから、殊更そう名乗りを上げ、敵を引きつけようした。

「鏖殺寺院というのは、女学院の生徒すら相手にできない程度の能力しかございませんの? さあ、どんどん来なさい! そうでないと主張したいのならば!」

 あまり敵を引きつけすぎると、僧侶であるナナリーはまずいのだが、そのそばにさりげなく、まさかのときのフォローのために太郎が立っている。

 神崎 僚(かんざき・りょう)は城に突入する者たちを護る西条 詩織(さいじょう・しおり)たちに赤い瞳を向けながら、小さく願った。

「……これ以上俺と同じ境遇者を増やさないでくれ!」

 数年前に無くした、大切なもの。
 あれからの失意の日々が、僚の根底にはある。

 その言葉が耳に届いた冬譲 雪衛(とうじょう・ゆきえ)は心配そうに僚を見つめた。
 金色の瞳を持つ雪衛は、今は僚の守護者となった身。
 それでも、僚に優しい言葉をかけるよりも、雪衛は彼にこう言った。

「行きましょう」

 共に戦うことが使命。
 僧侶として、ここで味方を援護しなければ。
 そんな思いで、雪衛は言葉を口にした。

「もちろん」

 僚は武器を手に取り、雪衛を護るように立って、スケルトンと対峙する。

「はっ!」

 向けられたスケルトンの攻撃を受け取り、僚はそれを弾き返す。
 そして、そのまま光条兵器を振るい、ツインスラッシュで、スケルトンを叩き伏せる。

「やはり足がもろいようですね」

 下半身が砕けて倒れたスケルトンを見て、僚が小さく呟く。

「分かった! ディ、守護天使が出てきたら頼むぜ!」

 太郎がニヤッと笑い、走りだす。

「了解でございます」

 ディのピンク色の髪が靡き、口から無機質な言葉がこぼれる。

 太郎が「基本的に守護天使を無視」の代わりに、ディが守護天使を捕まえる役割を負っていた。

 パートナーである香華 ドク・ペッパー(こうか・どくぺっぱー)もディに声をかける。

「後はよろしくお願いたしますね、ディ」
「……かしこまりました」

 静かに頷きながら、ディは香華の方を目で追ってしまう。
 ピンク色の上着にイエローのパンツという、蒼学の基準制服から見ると非常に派手な出で立ちをしたディのマスターは、魔法攻撃で、陽動班を援護した。

「太郎さんのところまで辿り着けますかね!」

 香華の火術が飛び、スケルトンに火の玉が当たる。
 足に火の玉が当たったスケルトンはそのまま崩れ落ちた。

「骨だからどうなるかなと思ったけど、こんな風に崩れるんですね」

 香華は崩れ落ちたスケルトンを見て、感心するように言う。
 しかし、すぐにその顔が引き締まった。

「こういう行為は……いただけません」

 過去のことを思い出し、香華が真剣な眼差しをする。
 そして、十分に陽動班が敵を引きつけたのを見計らって、城壁破壊班が動き出した。



「よし、完全に引き付けたね!」

 如月 玲奈(きさらぎ・れいな)ジャック・フォース(じゃっく・ふぉーす)に守られながら、城壁破壊の方を手伝いにやってきた

「オレが外を警戒する。がんばれよ!」
「うん!」

 玲奈は元気に返事をし、火術を唱えた。
 クローディアも同じく火術を唱える。
 竜花がドラゴンアーツで力を高め、三人が同時に城壁を壊す。

「それ!」
「いくよ!」
「えいっ!!」

 同時攻撃により、もろくなっていた城壁は簡単に崩れた。
 しかし、それと同時に、音を聞きつけた敵がやってきた。

「……あれがダークスケルトン!」

 護りを固めていたジャックが遠くから見えたダークスケルトンに目線を向ける。

 しかし、それが到着するよりも前に西条 詩織(さいじょう・しおり)たち護衛班が、香川成美たちを城内へと案内した。

「さ、どうぞ行ってくださいませ」

 赤い縦ロールの髪をくるんと翻し、詩織が城内に入る人たちを誘導する。

「ありがとう!」

 成美が詩織に礼を言って、城内に走るように向かっていく。

「お礼は無事に皆さまがお戻りになってから、言ってくださるのがよろしいですわ」

 それは無事に帰って来いという詩織なりの応援だった。
 詩織の優しい言葉に、成美は笑顔を向け、みんなと共に城内に入る。

 しかし、誘導する詩織のそばに、一体のスケルトンが降り立った。

「きゃっ!」

 だが、詩織が悲鳴を上げるのと同時に、キィア・ソール(きぃあ・そーる)がスケルトンを倒していた。

「あなたの剣は、私には届かない」

 小さな機晶姫はつり目がちな金色の瞳でスケルトンを冷たく一瞥する。

「ありがとう、キィア!」

 詩織の言葉に静かにキィアが頷く。
 そして、続けざまに襲いかかってくるスケルトンを、華麗な動きで倒していった。

「無理はしないでください。ここまでくる道のりだって大変だったんです。体力のある方ではないのですから」

 キース・オーフェリン(きーす・おーふぇりん)が火術で援護しつつ詩織に声をかけると、ちょっと詩織は不満そうな顔をした。

「いつもわたくしをお嬢様扱いでは困りますわ。わたくしは騎士。騎士としてこの身を役立てるためにいますのよ」

 詩織も誘導をしながらも、いざというときのために、その手にランスを持っている。

「そうですか……分かりました」

 これ以上の問答よりも、自らの身を呈して詩織を護ると思ったのか、キースはそれ以上言わなかった。
 しかし、自分を護る背に、詩織はそっとつぶやいた。

「わたくしよりもキースのことが心配ですわ……。長い戦いになるかもしれませんから、無理はしないで」
「二人とも互いを思い合っているねえ」

 シャンバラ教導団では珍しい銀色のポニーテールを振りながら、イコン・エクソダス(いこん・えくそだす)が少しだけ笑う。

「ただ、長期戦にはさせないよぉ。今回は拙速を尊ぶからねぇ。キィアこちらへ」

 イコンとは言葉が通じないキィアは行動でそれに応える。
 キィアが近づいてくる敵から、イコンを護る役目を負うのだ。

「僕らは舞踏会に参加するための正装とかはしてないんだけど……どうやら熱烈歓迎をしてくれるみたいだねぇ」

 城に入る人たちを止めようと、たくさんのスケルトンたちが、こちらに向かってくる。
 にもかかわらず、イコンはなぜか余裕そうに小さく笑った。
 その表情はいつもの眠そうなものと変わらない。
 しかし、かつて戦場にいた経験を持つイコンからは、他の人にはない、離れした雰囲気が感じられた。

「詩織さん」

 お嬢様を優しく呼ぶように、イコンが声をかける。

「は、はい」

 詩織が答えると、イコンはいつものように柔らかく笑った。

「短期でぶち破りましょう。力を貸してくださいなぁ」

 イコンの提案に、詩織は神妙な面持ちで頷く。
 数分後、スケルトンの部隊が彼らのすぐ前まで迫った。

「出会ったばかりだけど、さよならだねぇ」

 『スプレーショット』を炸裂させるイコン。
 掃射攻撃を受けたスケルトンたちが散っていく。
 残ったスケルトンは、次々とキィアに破壊されていく。

「……行きますわ!」

 キースに援護をされながら、詩織が『チェインスマイト』で敵スケルトン二体同時にを倒した。

「よぉし、この調子で繰り返しですねぇ。みんなが入場したら、太郎さんたちと合流ですよぉ」

 イコンはみんなを励ました。

 

 一方、城壁を破壊した人たちは護衛組に後を任せて、陽動組が戦うほうへ向かっていた。
 そこにはダークスケルトンが迫っていて、太郎たちが対峙していた。

「てやっ」

 シロウは戦闘が避けられないと悟り、ネネから、長巻のような刀剣状の光条兵器を受けとって、戦いに参加した。

 しかし、そこはローグであるので、隙を見て攻撃し、一撃離脱する。
 シロウの攻撃を受けて、ダークスケルトンが少し傾いた。

「玲奈、クレア、リリィ、香華!」

 太郎に名前を呼ばれた全員が火術を用意する。
 それぞれの手に輝く火が点った。

 ギャザリングヘクスで魔法攻撃力を一気に高めたクローディアとリリィルヴィアの火の玉は特に大きい。

「一気に叩きこむよ!」

 玲奈が残った魔力をすべてつぎ込む。

「灰も残さないんだから!」

 ダークスケルトンの背後に火術が向かう。

「意外と派手になっちゃったね」

 本当はもっと後方にいるつもりだったクローディアが小さく笑って、撃ち放つ。

「そういうこともあるということですわ」

 同時にリリィルヴィアも火を放った。

「守護天使が出てこなかったからね……その分も!」

 いつの間にか増えた魔法攻撃隊を頼もしく思いながら、香華も火術を放った。
 一気に四つの塊が降り注ぎ、ダークスケルトンの体が傾く。

「あっ!」

 魔法に気を取られた玲奈がダークスケルトンを守ろうとするスケルトンに襲いかかられた。
 しかし、そのスケルトンの手が後数センチで玲奈の体に届きそうというところで、スケルトンの体ががくんと崩れた。

「スケルトンでも腰が割られれば、一発で崩れ落ちるな」
「ジャック!」
「玲奈、下がっていろ。危ないぞ!」

 ジャックは玲奈を後ろに守りながら、違う方向を向いた。
 それは、太郎の方だった。

「なかなかに恐ろしいものだぜ」

 ダークスケルトンの攻撃を避けながら、太郎はローキックを浴びせていた。
 しかし、なかなか利かない。
 それでも太郎はあきらめずに長い足を使って、キックを繰り返す。

「……よしっ」

 太郎が危険を承知で、ダークスケルトンの足元に滑り込み、デリンジャーを押しつけて、零距離射撃を行った。

 足に命中したダークスケルトンが、がくっと崩れる。
 太郎がそのダークスケルトンの追撃を受けないように、ディが素早く動き、太郎を回収する。

「竜花!」

 太郎に呼ばれ、竜花は驚いた。

「わ、私!?」

 仲間にヒールをかけていた竜花は驚いて、太郎の方を向く。

「そうだ。竜花、行け!」
「は、はい!!」

 驚きながらもモンスターに目のない竜花は一気に駈け出した。

 焦茶の長い髪と、チャイナ風に少し作りかえられたイルミンスールの制服が舞い、ドラゴン特有の怪力が竜花に宿る。

「てやああああああああああああっっ!!」

 気合いと共に竜花の拳が炸裂し、ダークスケルトンが地上に崩れ落ちた。



 【城外戦闘班】の活躍により、守護天使を救いたい人、ヴァルキリーの薬を得たい人たちの道が開かれた。

「後は……お城の中はどうなっているのかしら?」

 百合園女学院のクラスメイト達の間で、今回の舞踏会は話題になっており、参加する人も多いとナナリーは聞いていた。

「どうか無事で……」

 ナナリーは傷を負った仲間にヒールをしつつ、古城を見上げ、そう祈っていた。