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リアクション
「お、起木先生雷使うの?」
バスタードソードでグレムリンを両断していた東條 カガチ(とうじょう・かがち)が振り返り、にやっと微笑んだ。
「だったら手伝うかねぇ。巻き込んだらごめんねっと」
雷発生装置のスイッチが押され、雷電がアントライオンへと向かう。それに合わせ【轟雷閃】をアントライオンへ放つ。
雷の力が増大し、稲妻が飛び散る。
「! 先生ぇ、避 け て!!」
背後に跳ねた雷に、東條カガチが叫ぶ。しかし、雷は起木保の手元へ。
「うぁああ!」
慌てて蚕養縹と日比谷皐月が庇おうとするが間に合わない。起木保の指先に雷がぶつかり、装置がガシャンと地面に落ちた。
「避 け て って、言ったよねぇ!?」
「も、申し訳ない……」
痺れた手を押さえながら、起木保が頭を下げた。
「気を付けなよー」
ふう、と息をついて、東條カガチはバスタードソードによる攻撃を再開。
明かりに照らされた輝く金属の洞窟に、ちらちら眼をやりながら、立ちはだかる魔物達を蹴散らしていく。
「危ない!」
東條カガチの注意にぼんやりとしていた起木保の目前に、グレムリンが迫っていた。
「うわ!」
「っ、センセ、大丈夫か?」
起木保が閉じてしまった目を開くと、目前で日比谷皐月が彼を庇っていた。
「あぁ、なんとか……でも君、腕が……」
グレムリンの牙が掠めて傷のできた腕。それに【ヒール】がかけられた。
「傷なら私が癒してあげます。ですから皐月、貴方は安心してサンドバッグになりなさい」
「サンドバッグ……ま、まあ、そういうことだ。だから俺は平気だぜ、センセ」
雨宮七日の【ヒール】を受け傷一つない腕を見せて、日比谷皐月が微笑んだ。
「すまない。本来は僕が治療するべきだったのだが」
「戦場ではゆっくり治療している暇はありません。気にしないでください」
雨宮七日の言葉に頷いて頭を下げ、起木保は雷発生装置を持ち直した。
「遅い。欠伸が出るぞ化け物共」
ランスを振り、グレムリンをなぎ倒す仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)。死骸を一瞥し、顔を上げる。
視線を走らせるまでもなく、様々な色に輝く金属の岩の切れ目から魔物の集団が見える。
「小僧、後続が鬱陶しい。魔法で分断しつつ私を援護しろ」
「へぇへぇ、気持ちいいくらい手ぇ抜いて援護させて頂きますよ〜っと」
七枷 陣(ななかせ・じん)が伸びをして光輝の書を抱えた。
「先生、フォローお願いしまっす!」
「分かった」
起木保が頷き、雷発生装置の出力を上げる。
「タイミング良く頼んますよ!」
「う、了解」
自信なさそうに応える起木保に構わず、詠唱。仲瀬磁楠がランスを振るう、その先を狙う。
「セット! 行けえっ!」
七枷陣の【サンダーブラスト】が発動。降り注ぐ雷と共に、雷発生装置から束のような稲妻が飛び出した。
幾つもの雷と起木保の生み出した雷が合わさり、すさまじい轟音を立てながらグレムリン達の頭上に、落ちる。
「おぉー、結構派手にいったな」
雷の行方を見守った七枷陣が、悪戯っぽく笑った。
「セット」
未だ残る雷の余韻に乗せ【雷術】を発動。雷をくらった直後のグレムリンを、仲瀬磁楠へ差し向ける。
ランスで刺し貫いたすぐ後で、隙だらけに見える。
「よし」
仲瀬磁楠は頭上に降りかかってきた雷へとランスを掲げた。そのまま涼しげな顔で【チェインスマイト】を繰り出す。
一時的な雷属性のチェインスマイトを完成させ、グレムリンの死骸を二つ増やした。
「……チッ。当たってナラカへ堕ちたらええのに」
「……ハッ」
悪態をつく七枷陣に、仲瀬磁楠はその程度の術ではやられない、という自信に溢れた表情で、人を小馬鹿にしたように鼻で笑う。
「かっつつぃーん。……後でコロス」
湯気が上がるほどの怒りをたぎらせ、七枷陣が呟いた。
「陣、次が来るぞ」
「分かっとるわ!」
いらいらしながら答え、七枷陣が再び詠唱を始めた。
「テキがいっぱい! 子守り歌でおやすみなさいです♪」
瞳を閉じ、手にした眠りの竪琴をポロン、と鳴らすのはヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)。
「……腕の中 ゆらゆら ゆれて 夢の中〜」
可愛らしい歌声が金属の洞窟内に反響する。
綺麗に響く竪琴の音色と歌声を耳にしたグレムリンとアントライオンはその場に倒れ込んだ。遅れて寝息が聞こえてくる。
「先生、今のうちに進むです〜」
ヴァーナー・ヴォネガットは、にっこり笑って起木保の背を押す。
「ああ……」
深く息をついて、起木保はのそのそと進む。
「先生、なんだか元気ないです」
首を傾げたヴァーナー・ヴォネガットは魔法の口付け……【アリスキッス】を起木保の頬へ使用した。
「元気になりましたか?」
「お、おお……ありがとう」
一瞬驚いた起木保が、ヴァーナー・ヴォネガットの頭を撫でる。
「どういたしまして!」
にこにこ笑うヴァーナー・ヴォネガットに頷き、起木保が歩みを再開した。
と、グレムリンが放置された火炎放射機に気付き、駆けよってきた。
「まずい! 下手に弄られたら、最悪、爆発・落盤のコンボだ!」
風森巽は【殺気看破】でいち早く気配を察知し、叫ぶ。地面に円状になるよう設置した鎖十手の鎖を見遣った。
「攻防一体! 電磁マイクロチェーン!」
詠唱を終えて叫ぶ。同時に【雷術】が鎖にぶつかって広がり、近付いてきたグレムリン達を痺れさせる。
「皆様お疲れのようですね……」
風森巽のやや後ろで、本郷翔が呟いた。
「どうぞ、お茶とお菓子です。息抜きをしてこれからの戦闘に備えてください」
本郷翔は【ティータイム】を使用し、周囲の面々に茶と菓子を配る。
「よし、次を狙うか」
雷発生装置を持ち直した起木保が、進行方向にいるグレムリンへと狙いを定めた。
「起木先生、私もお手伝いします」
剣を構え、発動を待つ。雷が姿を現した瞬間、駆け出して【轟雷閃】をグレムリンへ叩きこむ。
それにこっそり加わった譲葉大和の【雷術】も重なり、強い雷電がグレムリンを打つ。
「ギィイイイイイ!」
断末魔を上げてグレムリンがひっくり返った。
「さすが起木先生」
本郷翔が微笑んだ。起木保もつられて笑い、雷発生装置を構えた。
さらに雷発生装置を発動させる起木保。流砂の中から狙うアントライオンへ光の矢が向かう。
「援護するよ、みんな!」
椎名 真(しいな・まこと)の使用した【光条兵器】のクロスボウがアントライオンの固い外殻を砕き、貫いた。
「邪魔させるわけにはいかないからね」
「バッサイーンいるかな、いるかな!?」
その背後では彼方 蒼(かなた・そう)が楽しそうにきょろきょろとあたりを見回している。椎名真は苦笑して語りかけた。
「蒼、あれは伐採ロボットだからここにいるわけないよ」
「えぇー!? ロボット見たい見たい!」
「今日は火炎放射機と雷発生装置しかないみたいだよ。残念だったね、蒼」
「うぅー……」
不満げに頬を膨らめる彼方蒼をそのままに、椎名真は向かってきたグレムリンに向け蹴りを喰らわせた。
「……あ」
諦めきれない彼方蒼の黒い瞳に、円柱状でホースのついた機械が映った。
彼はきょろきょろとあたりを見回すと、そろりとその機械、使えなくなった火炎放射機に近づいた。
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