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リアクション
【SpecialBattle・2 敵にも味方にも援軍は来る】
今、エリザベートを護るようにして立ち塞がっているのは、
カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)とジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)、如月 玲奈(きさらぎ・れいな)とブレイク・クォーツ(ぶれいく・くぉーつ)、
神代 明日香(かみしろ・あすか)、
更に十六夜 泡(いざよい・うたかた)、リィム フェスタス(りぃむ・ふぇすたす)、レライア・クリスタリア(れらいあ・くりすたりあ)たち総勢八人の生徒達だった。
実はこの訓練開始前。
エリザベートの元を訪れたカレンは、ひとり喜々としてエリザベートに話しかけていた。
「ボクにはわかるよ! イルミンと天学の交流イベントで、どっちかに勝ち負けを付けたくないと言う校長の寛大な心! 確かに受け取ったよ」
「え? あ、う、うん。まったくその通りですぅ」
(いやいや。うちの校長はそんな深い思慮があって行動してるのではなく、ただ単に遊びたいだけであろうに)
ジュレールは掛け合いを冷ややかに見つつ、次々と同じ目的で集まってくる生徒達を眺めて。なぜ彼女がこうも慕われているのか、疑問に思ったりした。
ということがあったりして。
「まずはこのボクが相手になるよ」「ま、そういうことだ。悪く思うな」
先程の銃撃を放った光る箒の上のカレン、戦う以上は真剣そうなジュレール。
「そう簡単に校長は倒させないよ、ふっふっふっ」「強い奴がいるといいな」
なんだか自信に満ち溢れている玲奈とブレイク。
「エリザベートちゃん、みなさんも、頑張りましょうね〜」
のんびりながら楽しげな様子の明日香。
「そう簡単にラスボスに辿り着いたら、つまらないわよね〜? ……っと言う訳で、私はボスね」「えっと、私達は中ボスと言う事でよろしくお願いします」「皆様のお役に立てるよう精一杯がんばりますので、よろしくお願いします」
全身に炎を纏った魔闘拳術の状態で笑う泡と、お辞儀するリィムとレライア。
「ん! カレン、ジュレール、玲奈、ブレイク、明日香、泡、リィム、レライア! 私を命を賭して守るですぅ!」
高らかに命令するエリザベートの言葉と共に、全員が動き出す。
「ボクの魔法、受けてみてよね!」
まず箒で旋回中のカレンが、いきなりブリザードで先制攻撃して近寄って来ようとしていた生徒達を一気にひるませる。
「それなら、こいつでどうだ!」
そこで、コームラントに乗る御剣 紫音(みつるぎ・しおん)と綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)は、後方から大型ビームキャノンでの砲撃を開始する。
「無駄ですよ〜」
が、殺気看破とディテクトエビルで警戒していた明日香が、琥珀の盾で防ぎ。
おまけに闇術で視界を遮っていく。
「ふふ。ダークビジョンでこちらは見えるますからねぇ。みなさん、覚悟して――」
ザン! と、
ほくそえむ明日香の目の前に突如イコンが降り立った。
「さっきまでの訓練を見てたならわかると思うけど……イコンは暗闇でもセンサーで感知できるのよね」
現れたのは蒼澄 雪香(あおすみ・せつか)と蒼澄 光(あおすみ・ひかり)のイーグリット。
「お、お姉ちゃん……まだ暫く様子見ようよ……ほら、作戦なんだからちゃんと待たないと……敵の数が多いからタイミングを計ろうって最初に言ってたでしょ? そんなに苛立っててもしょうがないよ……ね?」
「わかってるわよ。だからこそ今、出撃するんじゃない。援軍が来て安心してる時こそ、攻勢にうってでなきゃ」
すっかり戦う気満々の雪香と同様に、先程から放たれていた魔法に紛れて近づいていたイコンは他にもいた。
玲奈とブレイクの前には、肩の辺りに桃のエンブレムのついたイーグリット、山田 桃太郎(やまだ・ももたろう)とアンナ・ドローニン(あんな・どろーにん)の機体が空から華麗に回転しながら、荒ぶる鷹のポーズで登場する。
「空からどんぶらこどんぶらことやってきたこの僕桃太郎! よろしくぅ!」
「なんか面白いことになってんじゃんか。ぜひあたしらも混ぜて欲しいな」
ふふ、完璧……! とばかりに桃太郎は自分に酔っており。
アンナは心底面白そうに笑みを浮かべていた。
さらに泡達三人の前には雨月 晴人(うづき・はると)とアンジェラ・クラウディ(あんじぇら・くらうでぃ)の搭乗するイーグリットが降り立つ。
「さあ、本当の訓練はここからだ。いつかドラゴンと戦うこともあるだろうからな、そのときのために十分に訓練を積まないと」「ハルト、あたしがついてるからね!」
そうして颯爽と現れた三機のイーグリットたち。
あと、彼らのやや後方にリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が控えていた。
「出来る限りの援護はしますから頑張ってくださいですわ、天御柱の皆さん!」
「いや、お前も戦えよ!」
「お前も戦えと言われましても……だって相手はあのエリザベート校長ですよ。ちょっと遠慮したいです」
晴人に平然と言ってのけるリリィ。実にいい性格をしているようだった。
そうした喧騒そっちのけでまず動いたのは、雪香。
「さあ、覚悟しなさい。エリザベート校長!」
まだ展開されている闇術に紛れ、一気に校長めがけて一直線。
どうやらしばらく待たされて苛立っていたらしい。
「ちょ、ボクらは完全無視なの!?」「いかにも対決する風に飛び込んできておいて、それはないであろう!」
カレンとジュレールの言葉を背後に聞きながらも、ビームサーベルを手に大ボスだけしか眼中にない様子の雪香。
「お、お姉ちゃん! 後ろ後ろっ!」
サーベルがエリザベートの眼前に届く直前、光の指示が飛び。
振り返ると共に頭部で構えられたサーベルが、高速で発射された弾を辛くも弾いていた。
「確かにそっちがどうしようと勝手だけど」「ならば我らが手を出すのもまた、勝手であろうな」
今のはジュレールの機晶姫用レールガン。エイミングとスナイプを併用しての攻撃だった。
さすがに雪香も機体を方向転換させ、カレン達と向き合うことにする。
「やっぱり、そう易々とはいかないか」
彼女らが交戦していくいっぽう、
「さあ、僕らもいくよ!」
気合いをいれて桃太郎機は再び空へと舞い上がろうとするが、
先に奈落の鉄鎖でイコンの右足を絡めとり、叩き落さんとするブレイク。
「せっかく空から降りてきたんだ。このまま地上戦でやろうぜっ!」
彼は自分に紅の魔眼と封印解凍を使用し、防御無視での特攻をしかけてくる。
桃太郎機のほうは武器をビームライフルからビームサーベルに持ち替え、ブレイクのチェインスマイトを受け止める。
「く、攻撃力が増してるから真正面からじゃ不利だね」
桃太郎は機体の腕が徐々に押され、ギシギシと悲鳴をあげるのを感じる。
けれどまだ鉄鎖が絡まっているため、距離をとることもできない。
「おいバカ太郎! なんか近づいてきてるぞ!」
しかし悩んでいる暇もなく周囲を警戒していたアンナから、精神感応を使っての警告が届く。
「今気づいても遅いよ!」
と、既に背後まで忍び寄っていたのはブラックコートの上にベルフラマントを羽織り、おまけに光学迷彩で入念に気配と姿を消していた玲奈。
彼女は押さえ込まれたイコンの両腕めがけ、レプリカディッグルビーで轟雷閃、チェインスマイト、轟雷閃、チェインスマイトと交互にSPが続く限り連続で攻撃し続け。
やがて耐え切れなくなった肘部分からが、ガゴリと嫌な音を立てて斬り飛ばされた。
「うわ、これはさすがにヤバいよ」
「なにやってんだバカ! てめえ後で絶対殴る!」
ふたりが中でもめている間に、トドメをさすべく玲奈は爆炎波を叩き込んでいった。
敵側についた生徒達との一進一退の攻防が行なわれる中、
ちょうどエリザベートの正面に位置する場では。
晴人とアンジェラ、リリィ。さらに何人かの生徒たちがいるのだが。
ギャザリングヘクスで魔力を上げ、ファイアストームを周囲に放ちながら火術で火力を増加させるという、荒業な戦法をとる泡の容赦ないやり方にすっかりたじろいでいた。
「どうしたの? かかってこないと、いつまでたってもラスボスまで辿り着かないわよ」
後方から紫音と風花も援護射撃をしてくれているものの、それらはサイコゆるスター達の熱線魔法によってほぼ相殺されていた。
リィムやレライアも控えているとあって、うかつに攻めるのは危険と言えた。
「おらおらぁ! どけどけどけぇ!」
が、そこへ生徒達を押しのける形で颯爽と現れたのはラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)だった。
彼は軽身功と神速を利用して炎の中を突っ込んでいく。
泡は数瞬驚きを見せるも、すぐに顔をひきしめ。炎を自分の拳に纏わせ、迎え撃つ構えをとる。
そこから猛襲が始まった。
ラルクの、スキルを生かした超高速格闘にドラゴンアーツをプラスさせての猛攻に、
泡もドラゴンアーツとバーストダッシュを駆使した炎の接近格闘で迎え撃っていく。
文字通り燃えるような拳と拳の格闘戦。熱血な光景である。
それに感化されたのか、それとも炎が弱まったからか、晴人機も進軍を開始した。
「来るのなら、相手になりますよ」
すかさずサンダーブラストを放ってくるリィム。
巨大化で拡散する領域も増大中の雷を前に、操縦桿を握る手に力を込める晴人。
「偶像に祝福を与えます。神宿り聖像となるように」
そんな彼をサポートすべくリリィがパワーブレスをイコンにかけてみる。
するとかすかにイコンが青白い光を纏った。
「へぇ、確かに強化されてるみたいだ。事前にアリサが、今回だけはいくつかのスキルでなら強化ができるって言ってたのは本当だったんだな」
(でもハルト、まだ本命じゃないんだからできるだけダメージは少なくしないと)
喜ぶ晴人に、精神感応で情報を伝え警戒させるアンジェラ。もっとも、そのアンジェラも多少は興奮気味ではあったが。
「よし。範囲魔法をドラゴンのブレスだと思って注意するんだ、散開して避けるぜ!」
晴人はそのまま機動性を生かしながら、ビームライフルを乱射していく。
しかしリィムも益々雷の範囲を広げて、やませることなく放出し続ける。
「倍数、倍数! 危なっぽいど!!」
アンジェラのテンションも、どんどんハイに、クレイジーになっていた。
「もしこの『雷の法則』が分からないようであれば、実践での活躍は……残念ながら望めないでしょうね」
そこへ、ぽつりとリィムの言葉が響いてくる。
まるでわざと聞こえるような声量で伝えられたその言霊を、頭で反芻する晴人。
(法則? そういえば……右、左、一テンポおいて中央、そこから今度は左)
よく観察してみれば雷の発生に特定の順序があることに気づかされた。
(あのひとのクセなのか? それとも、これが訓練だからか)
(どっちにしろ、チャンスだよハルトっ!!)
精神の中で情報を操りながら、ふたりの機体は一気に駆け出した。
雷の穴を見破り、タイミングを読み、俊敏に操縦し、
最後は力任せに体当たりするような勢いで、ビームサーベルですれ違いざまにリィムを斬り伏せた。
その様子を傍らで眺めつつも、レライアは手助けに入らずに。
「みなさん、上手く避けて下さいね……」
火術を放った。
かと思うと次は雷術。
更に今度はそこへ氷術。
と、間隔の短い連続技を披露させていた。
威力こそさほどないものの、種類の違う術をアメアラレに降らされ、それに数匹のサイコゆるスターによる熱線魔法まで混じっては、生徒達は完全に攻め手を迷わされていた。
「参ったな。みんなちょっと警戒しすぎてる」「これじゃ支援のしようがないどすなぁ」
紫音と風花のコームラントは、ここまで遠距離攻撃で味方が動きやすいようにしていたものの。前衛になる人が少なくなり始め、少し困っていた。
「相手が誰であろうと、容赦はしません!」
まさにそのとき。躍り出てきたのは水神 樹(みなかみ・いつき)。
彼女はいきなり片手剣の形状の光条兵器を手に、近くのサイコゆるスターを斬っていく。
振ってくるレライアの魔法は、超感覚によって鋭くした感覚で右に左に避け。飛び掛ってきたサイコゆるスターは、相手の力を利用して特技の武術で投げはなっていく。
「おお、いいな。やっぱりあれくらい積極的にいかなきゃ」
華麗なる前衛の登場に、心が高揚する紫音は負けじと大型ビームキャノンで援護する。
(あれが新兵器のイコンですか、やっぱりロボットは迫力が違いますね)
樹のほうも内心、イコンと共に戦えるのがわくわくしていたりした。
「やりますね。では、次はこれでどうでしょうか」
ひとり静かに攻撃を続けるレライアは、術の乱舞からアシッドミストに切り替え、広範囲に攻撃の手を広げていく。
対する樹はさすがに一度、紫音たちと並び立つ位置までさがった。
「だいじょうぶか!?」
「はい。けれどアシッドミスト相手では、さすがに避け続けるのは難しいですね」
「よし。それなら俺が注意をひきつけるから、その隙に攻撃してくれ」
「え、でもそんなわけには」
「いいから。一緒に戦ってるんだから遠慮するなって」
「ちょっと、いいどすか?」
楽しげに会話する(ように見えている)ふたりに、微妙に不機嫌そうな声色の風花が割って入ってきた。
「あのアシッドミスト。部分的に酸濃度が薄い部分があらはります。そこを狙って動いてきはったらええんとちゃいます?」
その指摘に、よく観察してみれば確かに霧に濃度差があるのがわかった。
「なるほど気づかなかったな、よし。そうとわかれば!」
紫音は大型ビームキャノンを薄い場所めがけて連射し、通る際の被害を少なくすべく霧を拡散させて穴を開けていく。
すかさず樹は一気にそこを駆け抜け、レライアを攻撃……
しようとしたが、当の彼女が口元に笑みをうかべ術の手を下げるのを見て思わず手を止めた。
(……? もしかして、最初から濃度差に気づかせるつもりだったんでしょうか)
樹はそう推測して、それなら無理に倒すこともないかと素通りし、
本命のエリザベートめがけて、超感覚で隙を見定めてながら斬り込んでいった。
エリザベートの周囲あちらこちらで戦闘が白熱するなか。
後ろからこっそり迫っている影があった。
それは光る箒に乗りつつ、光学迷彩を使用して隠れるナナ・ノルデン(なな・のるでん)とズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)。
そして木に身を隠しながら回りこんでいる三船 敬一(みふね・けいいち)である。
「どこも凄い戦いのようですね」
「まあ、相手はあの校長の味方するくらいの人達だもん。一筋縄じゃいかないよ」
「ともかく、俺たちは俺たちにできることをしないとな」
ひそひそと話しながら忍び寄る三人であったが、
「っと、これ以上は近づかせないよ〜」
という警告が聞こえたかと思うと、ナナとズィーベンめがけて天のいかづちが放たれた。
ふたりはすばやく動き雷からは回避したものの、結局箒からは投げ出され軽く地面を転がることとなった。
「エリザベートちゃんの味方は、私もいるんですからぁ。忘れてもらっちゃ困りますよ〜」
にこりと笑うその相手は、いつの間にかこっちに移動していた明日香だった。
「ボクらの相手は校長なんだから、どいてよね!」
攻撃を続けられる前にとばかりに、ズィーベンは光術で目眩ましをくらわせる。
しかし明日香は見えないながらも、周囲一帯にまとめてファイアストームを放ってきて。
それに今度は氷術で氷の盾を作り、後ろを守る姿勢をとるズィーベン。
互いに熾烈な攻防が繰り広げられんとするなか、
そこに突如誰かが場に飛び込んできた。
いや。正確には飛ばされてきた、が正しかった。
「!?」
飛ばされたのは雷術かなにかでやられたらしい、気絶した水神樹であった。
「あぁ、そっちにも敵はいたんですねぇ」
間延びした声がかけられる。
やったのは他の誰でもなく、森の中よりこちらに近づいてきたエリザベートであった。
このとき、既にナナと敬一は動いていた。
明日香をズィーベンがひきつけている間に、とっくに回りこんでいたのである。
(参ります!)(もらった……!)
ナナは背後から栄光の刀で轟雷閃を繰り出し。
敬一は死角から突撃してショットガンを腰のあたりに押し付けた。
ふたりの攻撃をもろに身体で受け止めたエリザベートは、50メートルの巨体をぐらりと揺らせたものの。
揺れはほんのわずかなもので。彼女の足は倒れるどころか、数歩も動きはしなかった。
「さすがにちょぉっと、いたかったですぅ」
体格差というのもあるが、エリザベートは攻撃が当たる寸前に氷術を自身の身体に展開させて身を護っていたのだった。
「さぁ、今度はこっちの番ですぅ」
攻撃のモーションに入ったのを見るや、全員の動きは素早かった。
敬一は世界樹に身を隠し、ナナとズィーベンは氷の盾を展開させた。
けれど。それを考慮してもなお、
「甘い、甘ぁ〜い。さっき食べたスーツより甘いですぅ」
エリザベートの魔法は凶悪だった。
いっぽうその頃。
激突を続けていた泡とラルクは、
「はぁ、はぁ、ちょっと、予定より白熱すぎた、かな」
「ぜぇ、ぜぇ、どういう、意味、だよ」
肩で息をしながら互いに向かい合っていた。
「私は、ここまでってことよ。ふぅぅ……それじゃ、ラスボス頑張ってねー」
パートナー達も破られ、自身も十分に戦ったことで満足したらしい泡は、
本当にそのまま森の中へと姿を消していった。
「まあ、いいか。それじゃあ本番といくか!」
意気込むラルクの目と耳に、爆発が飛び込んできた。
なにが起こったのかラルクにはわからなかったが、とりあえず爆風で飛ばされていくナナ、ズィーベン、敬一、更に巻き添えを喰った明日香の姿だけは目に映った。
「さぁ! 誰も彼も、私がナラカの底まで吹き飛ばしてやるですぅ!」
爆発の中心で悪を叫んでいるのはもちろん彼女。
エンシャントワンドを構え、仁王立ちしているエリザベートである。
今までとは一線を画する相手にラルクは武者震いしながらも、
「おらおらおらぁ!! がんがん攻めてやるぜ!!」
怯むことなく突撃していった。
鬼の力を借りるヒロイックアサルトの剛鬼で身体を強化させ、
まるで大木かと見紛うエリザベートの両脚や腰周りめがけて、鳳凰の拳での怒涛のラッシュを叩き込み続けていく。
スキルのおかげかさきほどの疲れも微塵も見えない。
エリザベートは再び身体に纏った氷術でガードをしているものの、後から後から拳に砕かれていく。
むぅ、とふいにエリザベートは唇を尖らせたかと思うと。
ボッ、とワンドの先端に火を点した。
そこから火をファイアストームへと変貌させながら、ワンドをまるで野球でもするかのような動きで、ラルクめがけて振り回した。
「ファイアストーム・スイィィングッ!」
その強烈な打撃と炎の嵐に、ラルクは避ける間もなく遥か後方へ吹き飛ばされていった。
「まったくぅ。女性の身体を殴るなんて、失礼極まりないですぅ」
のんきに言うエリザベートとは対照的に、寒気をおぼえる生徒達。
なにしろ先程からほとんどの人は一発KOされているのだから無理もない。今更ながら体格5倍差の現実を突きつけられていた。
そんななか、
しばらくフルートで驚きの歌や悲しみの歌を奏でて後方支援をしていたラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)は、校長へと続く道が徐々に開けてきたのを見るなり、
「そろそろ、いけそうですね」
おもむろにミトンを着用し、ギャザリングヘクスを使用した熱々のシチュー鍋を抱えて走っていく。傍から見ればいったいなんのつもりかと見えたことだろう。
エリザベートの前へと到着するなり、ラムズは告げる。
「エリザベートさん……そんなに身長の事を気にしていたんですね……だから、わざわざこんな企画を立ち上げて……」
「はぁ!? なに言ってるですぅ!」
なんか勘違いしている様子のラムズに、さすがのエリザベートも意味がわからず。
ほんの少しだけ隙ができた。
「これを食べて大きくなってくださいー!」
ラムズはそのまま、鍋を……投げた。
それは彼にとってパートナーから教えてもらったもてなし方『パイ投げ方式』である。
どこに当たろうとも、相手は必ず料理を喰らうという最高のおもてなし。
と、彼は信じていた。なので全く悪気がない行動であったのだが。
熱々のスープが、エリザベートの頭めがけて。飛んで。飛んで。
そのあとどういう展開が起こったかは言うまでも無いが、
ブチッ
と、鍋をかぶったエリザベートの額あたりで、なんかキレる音がした。
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