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リアクション
【Battle・3 ルールは多少厳しいぐらいが丁度いい】
『今のところ、天御柱学院が連敗中ですねぇ』
『んー……訓練を積むことに意義があるとはいえ、確かに頑張って欲しいところではあるな』
合間にエリザベートとアリサのそんな掛け合いがありながら、続いての対決。
○イコンチーム
イレイン・ハースト(いれいん・はーすと)と近衛 涼子(このえ・りょうこ)のイーグリット、
葉月 エリィ(はづき・えりぃ)とエレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)のコームラント、
天御柱のイーグリット二機、コームラントが一機。
○巨大化チーム
春日 将人(かすが・まさと)と衛宮 睡蓮(えみや・すいれん)、
サレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)、
六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)、
そしてイルミンスールの生徒が一名。
「はあああっ!」
叫び声と共に、敵へと接近しているのはエリィとエレナのコームラント。
「クソッ、まさか遠距離戦闘が得意の機体で接近戦を挑んでくるなんて!」
対峙しているイルミンの男子生徒は、近距離でバンバン撃ち込んで来る予想外の戦法にたじろぎ、バックステップで距離をはかりながら杖を構え、呪文の詠唱に入ろうとするが。
「あたしにそんな常識が通じると思ったら、大間違いだよ!」
既にコームラントの大型ビームキャノンは、その生徒をとらえていた。
そして杖を粉々に砕かれながら砲撃を胸元にくらい、彼はどうと仰向けに倒れ気絶した。
「よっしまずひとり!」「ふふふ、さすがエリィちゃんですわ」
喜ぶふたりだが、すぐに別の人影が現れたことで緊張の糸を結びなおす。
「ったく。遠距離が得意ってわかってんなら、後ろにさがってどうするんだよ」
「……そうよね、相手の迫力に負けずそのまま接近して戦うべきだったのに」
味方がやられたのを見て、今度は将人と睡蓮が前に立った。
かと思うと次の瞬間には将人は脇差しを抜き放ち、コームラントの胴体へとめり込ませていた。
「うああああっ!」
衝撃は内部にも大きく伝わり、思わず声をあげるエリィ。
そこへ睡蓮がブーメランで援護を加えていく。
「移動はわたくしに任せて、エリィちゃんは隙をみつけて攻撃して!」
一度距離をとるため低空飛行で移動を試みようとしたエレナだが、将人は逃がすまいとほぼタックルする勢いでぶつかり、コームラントを押し倒した。
その上、どこかから飛んできた木がエリィの見る映像に大きく映し出され。
反射的にそれを撃ち落としてから、あんな木ぐらい無視しても良かったかと気づいた。
「ちぇ、無駄弾使っちゃった。これでとうとう残弾は一発……」「それにしても今のなんですの? 自然に折れたものではなさそうでしたけど」
「おいおい、そんな心配より別にすることがあるだろ」
イコンから響いてくるふたりの声を聞きながら、将人は脇差しを振りかぶる。
が、その手をビームライフルによる攻撃が貫いた。
「!?」
睡蓮はヒールですぐ傷を癒しながら振り返ると、そこには世界樹の近くに控えるイレインと涼子の乗ったコームラントの姿があった。
「ワタシ達もいるんだよ、忘れないでね」「そうそう、まだまだ勝負はこれからだもん」
「がっ! この、畜生!」
続くビームライフルの乱射に将人はやむなくエリィ達へのとどめを諦め、イレインたちの方へと標的変更し疾走する。
将人の追走を世界樹の影に隠れながらかわすイレイン機は、逃げながらも弾が続く限り撃つのをやめずにいて。
「うわっと、こっちにまで流れ弾来てるッスよ!」
攻撃は隠れて木を投げていたサレンにも及び、将人は余計に負けず嫌いの性格に火をつけられていた。
熱くなってきている彼の行動にやや不安をおぼえた睡蓮は、
「いけない、すこし深追いしすぎてる。将人、一度止まって……え?」
そちらに気をとられてしまい、背中にチャージ完了済みの大型ビームキャノンが押し付けられたところで、やっとエリィたちの機体がとっくに起き上がっていることに気づいた。
そして。
轟音と共に、睡蓮は森の木々を何本かなぎ倒し、最後は一本の大木にもたれかかるようにして気絶した。
「睡蓮!」
パートナーがやられた衝撃から、すぐに駆け寄ろうとして隙が生まれた将人。
攻撃を加えたエレナとしては、零距離射の反動でその場から脱出せんと考えていたが。
将人の様子を確認して、すかさず機体の前後ろを逆にした。
阿吽の呼吸でエリィも脱出から攻勢に転じることを汲み取り、弾切れした大型ビームキャノンを振り上げ、勢いのままに将人の後頭部めがけて思いっ切り叩きつけた。
鈍い音がして、将人は地面を軽く抉りながら倒れさせられた。
「はぁ、ふぅ……今のは、危なかった、けど、これで三人!」「いけるよ、エリィちゃん!」
「このまま一気に殲滅だよ」「やっぱり真剣勝負は楽しいよね」
喜び合うエリィ、エレナ、イレイン、涼子たち。
対して、残るサレンと鼎は窮地に立たされた形になった。
特に鼎は今、正面に天御柱生徒が乗る機体がみっつあり、押し切られようとしていた。
「イコン、ロボット……なんてうらやましい。ポッと出の子たちが軽々しくそんなモノに乗っちゃいけないですよね。だから、OSIOKIです!」
しかし鼎のほうは諦めた様子はなく、むしろ恍惚とした表情で手を構えると、
「イルミンの力を見よ! 魔術乱舞!!!」
イコン三機に大規模な氷術を放って凝結させる。
(よしっ。続けて火術を使って氷を融解させて、そこから雷術で電解、あとはもういちど火術を使えば水素爆発が起こ――え?)
鼎は自身の作戦通り術を展開させていくが、三撃目の雷術を加えたあたりでうまく電解が起こっていないことに気づいた。
とどめの火術を放って、確かに相手は個々の術に対しダメージは負っているものの。あくまでそれだけだった。
「どうして? 今の手順なら、爆発が起きる筈なのに」
『そこのあなた〜。何をやろうとしていたのか、なんとなく想像はつくから教えておいてあげるねぇ』
困惑しているところへ、エリザベートによる解説の声が入った。
『私達の使う魔術に、科学的な理屈はあんまり通用しないのよねぇ。以前私も興味本位で、氷術で出した氷を使って科学実験を行なおうとした事もあったけど。小学校の教科書レベルの実験でさえ大半がうまくいかなかったのよねぇ。できるのはせいぜい、単純に氷術で凍らせたものを火術でもう一度溶かしたりするくらいでぇ』
解説はちょっと講義じみた感じで、これを聞くイルミンスールの生徒達は大半が「校長先生って、教師みたいなことちゃんとできたんだ」と思ったりした。
『完璧な法則は私でさえ、まだ解明できてないですけどぉ。個人的なアドバイスとしては、科学と魔術はあまり交差させて考えるべきじゃないってこと。ハイ、解説終わりですぅ』
声が聞こえなくなった頃、鼎はイーグリットのビームサーベルで機体を斬りつけられていた。
「くっ……これがダメとなると、どう攻略したものかな。て、それ以前に切り抜けられそうもないかぁ?」
「とにかく、一度逃げるッスよ!」
遠くからサレンが走り回りつつ木を引き抜いて投げつけて援護したりもしていたが、
三機のイコンは鼎に狙いを絞っているのか機体が傷つくのも構わず集中攻撃し。次第に追い詰められていく。
「こうなったら、せめてそれにさわらせてください……後生ですから……」
やがて気を失う手前で唐突に、鼎はそう言ってぺたりと機体に触れ。
最後は砲撃に胸元を撃たれ、倒れるのだった。
「どうやら。ここまでッスかね」
残されたサレンは諸手をあげ、降参の意を示した。
『そこまで! 第三訓練は、イコンチームの勝利!!』
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