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【学校紹介】イコンシミュレーター2

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【学校紹介】イコンシミュレーター2

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【Battle・1 なにをするにしても盛り上がったもの勝ち】

「それじゃあ一組目の人、準備してー」
 別室で待機していた生徒達を呼びに来たアリサに、ルール表を読んでいた宙野 たまき(そらの・たまき)が話しかける。
「これ、すごい設定だな。それで君も出撃するのか?」
「ん。いや、私は今回審判役だ。解説や時間の計測とか、過剰な攻撃に対する注意など、色々やることがあるからな」
「そうなのか? そりゃあ残念だな」
 そしてアリサは集まった生徒達に簡単な自己紹介をしていく。
「あのさ。俺のイコン、席がもうひとつ空いてるからどうせなら一緒に実況とかどう?」
 途中にそんな提案をしてきたたまきに対し、アリサはやや不機嫌そうな目つきになり、
「遠慮しとく。それに同じ天御柱学院生として、ちゃんと訓練積んで欲しいんだけど」
「あ、ああ。わかってるよ、ちゃんと訓練には参加するって」
「そう、だったらいいけど」
 というかけあいがあったりもして。
 まず第一訓練は、

○イコンチーム
綱斬 巡(つなきり・めぐる)風斗・サードニクス(かざと・さーどにくす)の乗るイーグリット、
玖珂 秀臣(くが・ひでおみ)真崎 悠子(まさき・ゆうこ)の乗るイーグリット、
そしてたまきが搭乗している、これまたイーグリット、
それから、ほかに参加している天御柱生徒のイーグリットとコームラントが一機ずつ。

○巨大化チーム
峰谷 恵(みねたに・けい)エーファ・フトゥヌシエル(えーふぁ・ふとぅぬしえる)
白砂 司(しらすな・つかさ)ロレンシア・パウ(ろれんしあ・ぱう)
そして影野 千佳(かげの・ちか)

 という対戦になった。
『むむ? イコン側は、イーグリットばかりですぅ』
『組み合わせは抽選だから仕方ないし、色んな戦闘の形を経験させたい私としては、これはこれでありだからいいんだ』
 ちなみに現在、他の生徒達はすべて別室で待機中。
 エリザベートとアリサは、声だけで実況と解説を行なっている。
 そして肝心の訓練生徒達はというと、
「おお、ほんとに動いた!」
 たまきをはじめとして、イコンの操縦に盛り上がりながら、彼らは所定地の丘から移動し森の中へと入っていく。
「じゃあ僕たちが先行していくから」「後方支援は任せるわ」
 学院生のふたりが、ガシャガシャと巨大な手足を動かしながら森の中を歩んでいき、
 それに少し距離を空けて、たまき、巡、秀臣の機体が続く形となった。
 いっぽうの巨大化チームは、そこから数百メートルほど離れた位置に陣取っており。
 そのなかの恵は軽くジャンプして体の感覚を確かめていた。
 彼女が跳ねるたび、超絶Pカップが空気の抵抗を受けて、それはもう見事に目を惹く動きを繰り広げる。
「さーてはじめ……あれ? どかした?」
 エーファはそれを羨まし妬ましげに見つめつつ、他の皆もやや顔を赤らめていた。
 特に男子である司はあからさまに目を逸らして。
「と、とにかく敵も来たようだしさっそく仕掛けるとしようか」
「そ、そうだな。ただ幾らシミュレータとはいえ、燃やしてしまっていいのか? あれほどのものを壊すのは気が進まないな」
 ロレンシアは、こちらに近づいてくる機体にしばし見惚れてはいたものの。
「金属と言えば、まずはこれを当てなければならないだろう?」
 相手が攻撃範囲に入るなりハーフムーンロッドを構えサンダーストームをお見舞いする。
「うわあああっ!」「落ち着いて! 次、来るわよ!」
 硬直するイーグリットとコームラントを見てすかさず司は自身にエンデュアを使用し、そこから前衛のイーグリットに思い切り体当たりをぶちかました。
 実際その攻撃自体はさほど威力のあるものではなかったのだが、今の特攻に加え続けてロレンシアが足下に火術を放ってきたことに焦ったらしく。
 機体は木々をなぎ倒しながらあっさりと地面へと背をつけてしまった。
「あわ、く、くそ。起き上がるには、どうすれば」「バカッ! 早く動かないと!」
 しかもその天御柱生徒はイコンの操縦に緊張気味だったのか、思うように動けず、
「動かないといけないのは、そっちも同じだ!」
「え? きゃああっ!」
 味方のことを気にして生まれた隙を司は見逃さなかった。
 後方からは巡や秀臣からのビームライフル&ライフルによる、ダブル射撃が行なわれていたものの、司はそれに怯むことがなかったのが勝敗を左右した。
「おおっと、ここでイルミンスール魔法学校の白砂司が、コームラントの胸元めがけて幻槍モノケロスを叩き込んだー!」
「おいっ、解説してる場合か!」
 ひとり飛行して戦況を伝えるたまきに怒鳴る風斗。
「その通りだよ!」
 続いて千佳が、ようやく起き上がろうとしたイーグリットをランスによる突きをお見舞いして、後方のコームラントともども地べたに逆戻りさせる。
「あーっ、折り重なって倒れた天御柱学院生の二機、身動きがとれずめったうちだーっ! これはもう抵抗できないー!」
 たまきが解説する通り、ほどなくして新人らしき二機は機能停止に追い込まれた。
「意外とあっけないな」「油断は禁物だ、まだ敵は残ってる」
「やりぃ、二機撃墜っ!」
「これはやはり経験不足が響いてしまったか!? イコンチームはここから逆転できるのかー……うわ!?」
 なおも解説を続ける空中のたまき機を、大砲の弾みたいな銃弾がかすめた。
 気づけば背後に光る箒で空を飛び、光条兵器であるコルトM1911に似た拳銃を構える恵の姿があった。もちろんのことだが、その銃も10倍近く巨大化している。
「これでもう一機撃墜よ!」
 豊満な胸は相変わらずたゆたゆ揺れていたが、その相手が真っ直ぐこちらに銃口を向けていては、さすがにたまきもすぐに解説の言葉を紡げずに。
 そして次の弾丸が恵の銃から発射された――
「危ない!」「とっとと避けろ!」
 そのとき、巡と風斗のイーグリットがたまきのイーグリットの頭部分を強引に掴んで下げさせた。間一髪、銃弾はそのままあさっての方向へと飛び、大木を何本かなぎ倒して止まった。
「解説するのはもう別に止めないけど、もっと安全なところでやりなよ」「まったくだぜ」
「あ、はは……ごめんなさい。助かりました」
 巡に言われ、たまきは後ろへと下がっていった。
「さて、と。ここからは私たちが相手をするよ」「俺らとどこまでやれるかな」
 巡たちはそう言いながら、機体を操って空を駆け距離をとり、ビームライフルを連射していく。
 恵も負けじと箒を操り攻撃を回避しつつ、なんとか相手についていこうとするも、移動速度に格段に差があった。恵が追いつこうとした頃には、もう背後に回られているほどに。
「むー、さすがに火力が違いすぎるよね。よし、それなら!」
 そこで恵は盾で相手の攻撃を防ぎながらアシッドミストを展開させ、おまけにファイアストームもぶつけて視界封じを兼ねた攻撃を繰り出した。
「畜生がっ!! 鬱陶しいんだよっ!!」「ちょ、風斗、そんな熱くならないでよ」
 熱に機体を焼かれながらも、それにも増して熱くなる風斗を宥めつつ巡は、近づいてきた恵をビームサーベルで斬りつけようとした。
 恵は驚愕を顔に表した。
(っ、正確にこっちを狙ってきた? 炎の中なら熱や光のセンサーは意味を成さないだろうし。音声センサーか何かが搭載されてるのかも)
 どうにか間一髪で斬撃に沿うように箒を動かして回避できたものの、内心かなり焦っていた。
 そんなパートナーを助けるかのようなタイミングで、エーファが飛び込んでくる。
 彼女は今の攻撃で加熱された、人間では腰の辺りに狙いを定め、アルティマトゥーレを叩き込む。そうして高熱から一気に冷やされ。
 機体は大きな震動と共にピシリと亀裂を走らせ、バランスを崩し落下に近い形で着地した。
「巡! だいじょうぶか、巡っ!」「っ、だいじょうぶ。なんとか」
 精神感応で通じ合っているふたりは、言葉をかけあう。
 対して、
(破壊こそできませんでしたけど……腰部分の損傷は甚大そうですね。ただ、単純に温度変化に装甲が耐え切れなくなっただけで、炎や氷が弱点属性というわけではなかったようですが)
 エーファのほうは、的確にダメージや属性耐性をチェックしていた。
『あれぇ? 装甲にヒビ入っちゃったねぇ。イコンってそうそう簡単に壊れないイメージあったんだけどなぁ』
『そんな無茶な。物質である以上、強度は存在しますよ。それに、イーグリットはコームラントより装甲が薄いからむしろ攻撃は積極的に回避すべきなんだ』
 遠くに、エリザベートとアリサの解説が聞こえた。
「よし、それじゃあ次はサンダーブラストも混ぜて音センサーにも撹乱を――ぃたっ!」
 このまま押し切るべく恵は次の攻撃に移ろうとしたが、そんな彼女の手の甲にライフルの弾が突如着弾した。
 更に打ち落とさんばかりの弾丸が次々飛来し、恵はたまらず一度下へと隠れる。
 それをしているのは、森の中に身を潜めていた秀臣と悠子の仕業だった。
「やれやれ、シミュレーターとはいえ、やっぱ疲れるもんだな」
「でもいいんですか? こんなに乱射したらこっちの場所を教えるようなものなんじゃ」
 確かに秀臣はここまで、できうる限り森に身を潜めての援護をしていた。
 が、今は恵やエーファに対し弾が続く限りの攻撃を重ねている。
「わかってるよ。でもよく考えてみなって」
「え?」
「残り時間はあと五、六分くらい。判定になったら、二機撃墜、一機負傷、一機解説、のこっちが負けるに決まってる。ならわずかでも可能性に賭けて攻撃したほうがいい」
「なるほど確かに――っ、いけない! 他の生徒達がこっちに近づいてきてる!」
 なにげに、言葉を交わしながらも索敵を行なっていた悠子は、
 レーダーに反応したみっつの敵に戦慄する。
「さぁて、どこまでいけるかなぁ」
 秀臣のほうはあまり表情を変えず、ライフルからビームサーベルに武器を持ち替え、敵を迎え撃つ準備を整えた。
 近づいてくるのは、ほぼ無傷の司、ロレンシア、千佳たち。
 圧倒的に不利に思えるその戦いは、間もなく決着する。
 そして……。

『勝負あり! イコンチーム全滅により、巨大化チーム勝利!』

 アリサの一声と共に第一の訓練は終了した。
 敗れたイコンチーム側は、待機部屋に戻ってそれぞれ悔しそうだったり怒ったりしているものの。巡はひとり喜んでいた。
「負けちゃったけど、イコンって凄いね。もっと訓練して、その力をちゃんと使えるようになりたいな」
「確かにな。もうちょい俺らに経験があったら、結果は違ったかもしれねぇ」
「うん、決めた。私、パイロット科も掛け持ちしよう!」
 その言葉を皮切りに、沈んでいた筈の部屋は徐々に盛り上がり始めていった。