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リアクション
【Battle・4 相手が攻撃してきた時こそが、自分も攻撃する好機】
(ふぅ。意外と解説とか、メンドーな感じかも。私も早く戦いたいなぁ)
(……なんだかエリザベート校長、早くも飽き始めたみたいだ)
ふたりの思惑をよそに、第四の訓練が始まる。
○イコンチーム
矢野 佑一(やの・ゆういち)とミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)イーグリット、
杵島 一哉(きしま・かずや)とアリヤ・ユースト(ありや・ゆーすと)のイーグリット、
山吹 宋弥(やまぶき・そうや)のイーグリット、
天御柱生徒のコームラントが二機。
○巨大化チーム
繭住 真由歌(まゆずみ・まゆか)とノートリアス ノウマン(のーとりあす・のうまん)、
緋桜 ケイ(ひおう・けい)と悠久ノ カナタ(とわの・かなた)、
更にイルミンスール生徒一名。
開始直前。
佑一は同じチームメンバーになにやら小声で話をしていたときのこと。
そこへ巨大化のチームがやってきて、鉢合わせすることになった。
「あ、初めまして」
しかし佑一は慌てることなく深々と頭を下げ、のんびりした挨拶をして。
「よろしくお願いします」
ミシェルも丁寧に挨拶を告げた。
「おう、よろしくな!」「お手柔らかに頼むのだよ」
それにケイとカナタは比較的愛想よく返し、
「ん、あー。よろしくねー」「…………」
真由歌はなんかやる気なさげな声色で返して、ノウマンはそっぽを向いて無言だった。
なんか両極端な生徒が同じチームになっちゃったようだなぁ……と、五人目のメンバーである、見た目10歳くらいの若いイルミン生の少年は会釈しながら思った。
そして、開始後。
「――見ろ、人がゴミのようだ!!」
真由歌はいきなりどこかで聞いたようなセリフを叫んでいた。
(……シミュレーターで言っても仕方ない、か。ゴミのように見える人間も居ないようだし。やれやれ全く、面白くないね。まぁいい。さっさと始めて、すぐに終わらせようじゃないか)
特に反応がないことに物足りなさを感じながら、アシッドミストを狭域に展開して木々を溶かしていく。
それを遠目に観察中している宋弥。
「なにをやっているんでしょうか。場を戦いやすいようにしている、とか?」
「自然破壊して俺らを怒らせる作戦かな?」「バカ、イルミンの森を破壊して怒るのむしろ向こうじゃん」
背後に控える天御柱のコームラント二機も勿論答えはわからない。
なんにしてもいつまでも黙って見ていても仕方ないとして、宋弥は攻勢に打ってでようと一歩踏み出したそのとき、
真由歌の目がこちらをとらえた。
「来たね? どこまでこちらの作戦に、ついてこれるかな?」
かと思うとなんと自分を中心にして広範囲にアシッドミストを展開させていく。
「!? な、なんのつもりですか? あんなことをしたら自分もただではすまないのに。とにかく、一旦退きましょう!」
広がる霧から退避すべく宋弥と他二人は動き出したが、
「…………」
そこへ無言のまま霧に紛れて飛び込んできたノウマン。
ノウマンは六連ミサイルポッドを全弾、宋弥の機体に撃ち込んだ。
「うわっ! く、アシッドミストの中を平気で攻撃してくるなんて、一体どういうつもり……あっ!」
ミサイル攻撃の被害状況を確認して、宋弥はようやく気づいた。
イーグリットはアシッドミストによる被害をほぼ確認していない。つまり真由歌は、最初の霧以外は全て酸性濃度を限りなく落としておいたのだ。
それに気づいた頃には、ノウマンはとっくにポッドをパージして先の先と加速ブースターを使って、退避しようとしていたコームラント二機を、カタールをつけた両手での轟雷閃で斬り伏せていた。
作戦として練られた奇襲で、あっというまに劣勢に立たされた宋弥達に、
ゆっくりと真由歌が近づいてきて、
「さぁ、ゴミのような負け姿を曝しなよ、木偶の坊のパイロットくん?」
一方、別の地点では。
一哉とアリヤの機体に、ケイとカナタとイルミン生徒の少年が対峙していた。
しかも場には彼らだけではなく、ケイのゴーレムと、カナタの武者人形も巨大化して控えている。
「単純計算なら、相手の数は5。さすがに厳しいかな」「と仰るわりには、随分と楽しそうですが」
アリヤの言うように、一哉は喜々として搭乗したイーグリットが動く感覚を確かめていた。特に武者人形の振りかざした刀を、ビームサーベルで受け止めたときなど少年のような喜びの声をあげていた。
数秒の鍔迫り合いの後、強度の差で武者人形の刀がバキリと砕けた。
と、それを援護すべくズシンズシンと地響きをあげながら突進していくゴーレム。
掴みかかって押しつぶさんばかりのその巨躯から逃れるため、胴体部に強引に左足を食い込ませて文字通り足止めする。
だが人間が蹴るような動作をさせたため、機体がミシリと嫌な音を立ててきしんだ。
「いけない。このままだと押し切られます。最悪、機体に損傷が発生しかねません」
「やっぱりイコンは格闘戦には向いてないか。それなら……!」
ビームサーベルをゴーレムの胸部に突き刺し、そのまま反動をつけて強引に後ろへ飛び退いた。
そこから武器をビームライフルに持ち替え、
ゴーレムの右脚を砕けるまで狙って連射していき、
バランスを崩したところでライフルを頭部に押し付け、零距離でブッ放した。
反動で操縦席にも震動が訪れるほどの轟音と共に、撃破されるゴーレムだが。
ケイは戦闘で生まれた隙を狙い、背後からその身を蝕む妄執を一哉たちの機体に放った。
(この攻撃は、精神に直接影響を与えるもの。さあ、どうなる……!?)
一瞬沈黙したように見えたイーグリット。
だがすぐにライフルの銃口がケイの方を向いた。
「!」
一瞬驚きを顔に見せるも、予想はしていたのか横っ飛びで弾を回避するケイ。
どうやら通用するかどうかを試してみるためだったらしく、さほど悲観することもなく一度距離をとっていく。
「ふむ。どうやらこの手の攻撃は効果薄と見た。やはり相手との距離が開きすぎているのが原因か、それとも精神攻撃すらガードする防御壁にコックピットが護られてるのか」
冷静に分析するカナタの言葉を受け、
「よし、それならボクの氷術で」
様子を見ていたイルミン生徒は杖を構え攻勢に転じようとするも、
まさにそこを狙ったビームライフルによる射撃が、彼の脇腹に直撃した。
「いてっ……!?」
うめくイルミン生がよろめきながら後ろを向くと、
イコンの右腕部分と銃口だけが、風景の中から顔を出していた。
それは自分は迷彩塗装で隠れ、ビームライフルによる狙撃を行なうという佑一の作戦によるものだった。
「今ので、こっちの位置に気づかれたかな」「たぶん。かくれんぼはここまでだね」
佑一とミシェルは言葉を交わしあい、装備をビームサーベルに変更する。
事前に知らされていた一哉達は、ケイとカナタ、そして武者人形との攻防に集中し。
佑一達は、不意打ちくらって怒髪天なイルミン生が放った氷の矢を、ビームサーベルで弾き飛ばす。
けれどその攻撃は囮だったのか、イルミンの少年はそのまま杖に氷術を付加させ、突進してくる。
「おっと! 見た目によらず、ずいぶん好戦的だねぇ」
「佑一さん、油断しないで。あまり距離を詰められすぎると危険だよ!」
というミシェルの言葉通り、イルミン少年は杖に力を集中させ。
そのまま自分もろとも佑一のイーグリットを凍結させ、動きを封じてしまった。
「あれ。しまったな、これからどうしようか?」「だから言ったのに……」
「どうだ! ボクの氷術の威力、思い知ったかぁ! 例えイコンといえど、この氷づけからは逃げられないよ! まぁ、ボクも動けないんだけど」
これでイコンチームで動けるのは一哉の機体だけ、かに思われたが。
『そこまで! イコンチーム全機、戦闘不能により、巨大化チームの勝利!』
唐突に響いたアリサの宣言に、驚かされる一同。
「え? ちょっと待って。私はまだ……」
一哉は抗議の声をあげるも、
「やはり、すこしイコンを酷使しすぎたようですね」
アリヤの方は冷静に状況を受け止めていた。
確かに彼女の言うとおり。ケイとカナタ、武者人形とゴーレムとの戦闘のなか、
一哉はイコンの技術を堪能すべく、効率のいい動作などを試行錯誤させていった。そのせいで気づかぬうちに、限界を訪れさせてしまったらしい。
『あくまでも訓練とはいえ、これ以上やるとイコンもパイロットも危ない。そう判断したから止めた。それだけだ』
アリサにそう言われ、一哉は渋々ながら納得し。
再び巨大化側がリードを広げる結果となった。
『ふふぅん? 確かに人数的な差から考えても、結果は明らかだったと思うけどぉ。今のはちょーっと気遣いが過ぎたんじゃないかなぁ?』
エリザベートのちゃかしには、アリサは答えなかった。
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