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リアクション
第12章 マル秘映像 自由無法者同盟/のぞき部/反帝国レジスタンス「風の旅団」
「……えー、では、気を取り直しまして、次は特別プログラムです。
滅多に見られない封印PV、パスワード等知らないと見られない映像を集めました。
プログラムNO.X、 自由無法者同盟、のぞき部、反帝国レジスタンス「風の旅団」。
こちらは諸々の事情で全編CGとなっております。
続けてどうぞ」
以下の映像が次々に映し出される。
――荒野をバイクで駆ける無法者達。モヒカン頭に鋲打ちジャケットを着込み、排気音にまぎれて「ヒャッハアァァァ」と叫ぶ。
――ビルに忍び込むハイテク盗賊団。部屋の隅に警備員を簀巻き猿轡をして転がし、手元のポケットコンピュータからサーバーにケーブルを繋ぎ、情報を吸い出している。
――市街地で警官隊と銃撃戦をする武装テロ組織。テロ組織のひとりが「鬼神力」で巨大化し、手近にあった街灯のポールを引っこ抜き、振り回して暴れだす。
――歓楽街を練り歩くマフィア集団。真ん中に立つボスと思しき人間は、ストライプの高級スーツを着こなし、口には太い葉巻をくわえて不敵に笑っている。
――狂気の実験をする科学者。哄笑が薄暗い研究室の中に高らかに響き渡る。
ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)のナレーションが入った。
「正義も悪も関係ない。自分のルールは自分で決める。
善いも悪いも明日には変わる、そんな世の中自由に生きろ!
色々なモノに縛られ身動きできない人、 つまらないしがらみは全部捨てて自由になりたい人、自由無法者同盟はいつだって来る者拒まずです。
人生に疲れたら、こちらまで」
画面に文字「自由無法者同盟 >検索」
画面が切り替わる。
次々に差し挟まれる場面。
――照明の落ちた廊下。走る数名の学生。飛び道具で次々と倒されていく。声「もうダメか…」「馬鹿野郎、諦めんな!」
――教室。女子生徒に吊るし上げられる痣だらけの男子。「仲間だけは、売らねぇよ…」
――泣きながら走る男が目指すのは女子更衣室入口。立ちふさがる人影。が、そこに表れる凛として立つ男。逆光でシルエットだけ。
「待たせたな」
画面暗転。文字が被る。
「俺達の 夢を 掴め のぞき部員募集中
検索 >のぞき部」
画面切り替わる。
セリヌンティウスの姿と仮面をした者達が、「おっぱーい、おっぱーい」といって村人を襲っている。
そこへパラ実生たちが物騒な言葉やらヒャッハーとか叫びながら乱入、助けに入る。
壮絶な戦いの末にセリヌンティウスの格好をした者達はパラ実生らによって追い払われる。
パラ実生組のリーダーウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は、カメラ目線で言い放つ。
「てめぇら、おっぱい騎士になめられっぱなしでいいのか?そんなこたぁねえだろ。奴らを俺たちの縄張りから追い出したいならここへ来いっ!」
その時、空に暗雲が立ちこめ、渦を巻き始める。渦の中にはどす黒い赤、静脈のような青の稲妻が駆けめぐり、それらがやがて、「顔」のような形を作った。
「顔」の口が大きく開いた。嘲うかのような哄笑が、天に轟き、地に響く。
だが、ウィングと、彼に率いられた者達は、それに揺さぶられる事はない。
画面に文字が被さった。
「神など恐れることはない。我々人族は古代種族に打ち勝ち滅ぼしてきたのだ。立ち上がれ!我らの本気を見せてやれ!!
反帝国レジスタンス『風の旅団』
検索> 反帝国」
(いまいち微妙ですねぇ)
客席の中、ガートルードはスクリーンと客席の反応とを見比べた。
蒼空学園の生徒にとっては、様々な束縛から自由に生きるピカレスクロマンは少しばかり刺激が強すぎたのかも知れない。
(まぁ、いずれ分かる時が来るでしょう)
(微妙だなぁ)
ウィングもまた、ガートルードと同じような感想を抱いていた。
好きな事、興味のある事を追求し、同好の士で集い語らうというのは楽しい。
だが、ひとたび巨視的な視野に立てば、楽しい事だけに耽っていられる状況でもない、という事が分かりそうなものなのだが。
(それとも、こういう政治的な呼びかけには白けてしまうものなのか)
――ウィングは、人々に失望しかけた自分を打ち消した。
こういうのは、地道に続けていく事こそが必要なのだ。
「あのさぁ」
観客席の鈴木 周(すずき・しゅう)は、ムスッとした顔で呟いた。
「何でのぞき部が封印PVなんだよ、くそ。しかも登場人物全員CGモデルじゃねぇか」
すると、近くに座っていたミルディア・ディスティンが、
「のぞきがこーじょりょーぞくに反しているからじゃないの? あと、のぞき部に協力する女子ってのもフツーはいないんじゃないかしら?」
と、もっともな事を言った。
「アンチエリュシオンのはどうなんだよ? シャンバラ地方じゃ、反帝国はそんな悪いこととは思えないんだがな?」
「あそこって破壊活動やテロ活動扇動してるっぽいよ。自由無法者同盟ってのも、法律無視して好きにやれっていってるし。そこら辺が放送コードにひっかかったんじゃないかな」
「失礼な。俺達の活動をテロと一緒にするんじゃねぇ。そもそもノゾキってのは……」
「あー、はいはい。次始まるから静かにしようね」
「ねぇ、リカイン」
憮然とした表情でスクリーンを見ながら、サンドラ・キャッツアイは隣に座るリカイン・フェルマータに訊ねた。
「何かしら?」
「私、蒼空歌劇団俳優会の活動を手伝う事は嫌じゃないし、あなたに言われてお芝居とか演技するのも楽しいと思うよ。端役とかエキストラとかってのも面白いし、声の出演っていうのもやりがいがあるって思う」
「何が言いたいの?」
「……もう少し仕事選んで欲しいな」
「苦労かけるわね」
リカインはサンドラの頭を撫でた。
「……ごめん、リカイン。ちょっと言ってみただけだから」
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