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第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

リアクション公開中!

第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~
第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~ 第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

リアクション

 3.底なし沼
 
 
 水面に、青と碧のコントラスト。
 誤って飛び込んだ小虫は足を取られて水中に沈み、波紋は岸へと広がって行く。
 ここは高層ビルに囲まれた、底なし沼。
 休日ともなれば親子連れでにぎわう、オフィス街のオアシスだ。
 
 沼に注目しよう!
 
 比較的広い沼の上には橋があり、2車線であることから「御神楽777号線」の架橋であることが分かる。
 沿道の歩道や、湿地帯の遊歩道や、高層ビルの窓という窓からは、観光客や休憩中の会社員達が物珍しそうに眺めている。
 そこに――レッサーワイバーンが、優雅に降り立った。
 
 集団はレッサーワイバーンを先頭に突っ込んでくる。
 さあ! 第2ポイント「底なし沼」での攻防が、始まるぞ。

 ■
 
 イルミン生の本郷 涼介はレッサーワイバーンから降り立つと、遊歩道から呪文を唱え始めた。
 ひゅるるっ、と指先から吹雪が舞い始める。
 それは、『ブリザード』の呪文では?
「いかにも!
 イルミン生優勝のため、他校生はここで葬り去るのだ!」
 涼介は『ブリザード』を、やっ! と水面目掛けて投げつけた。
 上に乗ると割れるような固さに固めて、沼の底に沈めるらしい。
「では、さらばだ!」
 涼介は飛び立つ。
 
 しかし参加者達は橋の上を走行したため、罠に掛かる者は結局1人も出ないのであった。
 レッサーワイバーン集団が通り過ぎ、僅差で小型飛空艇集団がやってくる。
 
 実力行使に出たのは、天貴 彩羽(あまむち・あやは)天貴 彩華(あまむち・あやか)のお嬢様姉妹。
 マリンブルーのライダースーツで参戦だ!
「アウタナの戦輪で、一網打尽よ!」
 ギュルルンッ!
 アウタナの戦輪は生き物のように動き回り、周囲の乗り物を次々と破壊する。
「サイコキネシスのおまけつきよ!
 スキルなしには逃れられないわ!」
 たまらないのは、「禁猟区」や「殺気看破」等の用意をしていなかった参加者達だ!
 レッサーワイバーン集団と、小型飛空艇集団と、後続の箒系集団が巻き添えを食らった。
 
 美鷺 潮(みさぎ・うしお)は小型飛空艇の制御系統をやられた。
「操縦経験が3度しか無いからかしら?」
 火術を一瞬だけ噴出…推力制御を試みてみるも、これは手遅れ。
 日傘を片手に、あ〜れ〜と底なし沼へまっさかさまだ。
 
 鬼崎朔もレッサーワイバーンの手綱を切られて制御不能となり、沼へと落ちて行く。
「げ、落ちるううううううううっ! 助けてですっ!」
 
 スカサハ、アテフェフは小型飛空艇をそれぞれやられて、緩やかに急降下。
 遊歩道に避難した。
「はあ、朔様はどこでありますか?」
「大丈夫! オレイの索敵機能は無事みたいだから
 すぐに見つかることでしょう」
 
 ルツ・ヴィオレッタは折れた空飛ぶ箒ごと、湿地帯に落ちて尻もちをついた。
 腰に手を当てて。
「痛つつつぅーっ!
 だがイチルは残っておるようだ、よしとしようか」
 
 火村 加夜(ひむら・かや)は「六蓮ミサイルポッド」で撃墜されてしまった。
 のろのろと飛んでいたにもかかわらずだ。
 ノア・サフィルス(のあ・さふぃるす)を捜す。
「だって、ノアってば。
 寄り道ばかりなんですもの!
 ほら、ノア! レースは終わったから、失格者席に行きましょう!」

 神崎 輝(かんざき・ひかる)シエル・セアーズ(しえる・せあーず)の『禁猟区』により、彩羽の攻撃を回避した。
「何てことでしょう! 爆炎波で応戦です!」
 だがそれは、彩華の殺気看破に見抜かれて回避されてしまう。
 
 終夏は『風の鎧』で守られたが、落ち葉と順位は落としたようだ。
 当の妨害をしかけた彩羽達は、彩華の強引な運転で順位を上げ、とうに沼地を去っている。
 
 結局潮と朔は、山葉 涼司(やまは・りょうじ)の側近が手配したレスキュー隊によって救出された。
「よかったぞ! 出番があって。
 大丈夫か? 2人とも」
 茜は救急箱を持って2人の下へ駆けつける。
 だが、朔の口元は微妙に笑っていた。
「ええ、だって! これで、晴れて『失格』になれましたからね、私達」
 なるほど! 失格は狙い通りでしたか……しかも、その手にあるは「しびれ粉」の小袋。
「山葉用」と書かれてある。

 これはひょっとして山葉校長、大ピンチでは!?
 
 ■
 
 ……そうして多少の障害はあったものの、集団は底なし沼を後にして行った。
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が操縦する小型飛空艇オイレの低空飛行により、今のところ地上組の順位に目立った変動はない。
 これが、その後のレース展開にどのように響いて行くのか?
 
 レッサーワイバーン圧倒的優勢なまま、ヤマハGPは最後の難関「急なこう配の坂道」へ!!