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古城の花

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第5章  Landscaper その1


「ららら〜♪」
(荒れた古城と聞いていましたが、花園は見事ですね)

 城の内部はほかの者達に任せ、朱濱 ゆうこ(あけはま・ゆうこ)は周囲を掃除している。
 【悲しみの歌】を歌い、モンスター対策もばっちり。
 目立つごみをほうきで掃き集め、外側から窓をふいたら、花園へと眼を移した。

「……花園、手入れがされていますね?
 あ、ヘルさん、これを……」
「なになに〜?
 ん、どれどれ……」
「よく見てみると、鋭利な刃物で切ったあとがあります。
 なんだか不釣合いで気になりますけど、わたしにはどういうことなのか知る術がありません……」
「このお城も不幸があって無人になったわけじゃないんだし、花園を託された人とか、縁のある人がいるのかな?
 でも、モンスターもいるから、世話してる存在がいるならタダモノじゃないんだろうねぇ……なんだか面白いことがありそう♪」
「人か魔物か……あるいは、主の代わりに花園を守る誰かか。
 なにが隠されているんだろうな?」
「機晶姫とかモンスターが管理していたりするのかな?
 やっぱり、リールエルさんの帰りを待っている?」

 発見したのは、手入れをしているともとれる痕跡。
 近くにいたヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)を呼び、ゆうこが告げる。
 早川 呼雪(はやかわ・こゆき)桐生 円(きりゅう・まどか)も、自身の憶測を語った。
 ただ、仲間達からの情報により、リールエルがすでにこの世にいないことは分かっている。
 だとしたら、待っているのは哀しい現実かも知れない。

「植物から、なにか感じとれるかもな……」

 しゃがみこみ、呼雪は【人の心、草の心】を発動した。
 ゆうこもヘルも円も、静かに呼雪を見守る。

「お前達は、誰かに世話をされているのか……そうか。
 なるほど……ありがとう」

 会話を終えた呼雪が、立ち上がった。

「どこからともなく現れて、世話をしてくれる者がいるらしい。
 男性で、いつも麦わら帽子をかぶっているんだと」
「そっか〜でかしたね、呼雪!」
「じゃあそれもみんなに伝えるか……」

 報告する呼雪に、ヘルは喜びのハイタッチ。
 円は早速、携帯で電話をかけるのであった。

「フハハハ!
 素晴らしい花園だ!
 だがっ!
 この程度の花では、百戦練磨の契約者たちの眼を楽しませることはできぬっ!」

 城門付近にて、高笑うドクター・ハデス(どくたー・はです)
 懐から、なにやら妖しげな小瓶をとりだした。

「お茶会を盛り上げるために、この天才科学者の技術を役立てようではないか!」
「って、ちょっと兄さん?!
 綺麗な花園に、なにをしてるんですかっ?!」
「ククク、この天才科学者ドクター・ハデスのつくった栄養剤を使えば、一瞬のうちに花々を咲き誇らせることができるのだっ!
 さあっ、成長せよっ!
 咲き誇るがいい、植物たちよっ!」
「きゃ、きゃあっ!
 植物のツタが、足にっ?!
 あっ……スカートがっ……?!」

 絶対に厄介なことが起きると思った、高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)の予感は的中。
 襲いかかってくる植物を、なんとか【氷術】で抑える。
 ハデスは、お茶会を盛り上げたかっただけなのだが。。。

「うむ、いい感じである。
 この調子でほかの植物達も……」
「兄さん……しばらくおとなしくしててっ……」
「フハハハ……」
「はぁ……兄さんと2人っきりで、ここでお茶を飲めたら素敵でしょうにね〜」

 自分はまだしも、被害の拡大はさすがにまずいと判断した咲耶。
 ハデスも一緒に凍らせるという、苦渋の決断をしたのだった。