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第1章  古城内は魔物の巣窟!? その2


「夏の間寝込んでいたぶん、鈍っているからな。
 ゴブリンやスライムなら、体慣らしにはちょうどいい」
「これは頼もしいね」

 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)の言葉を聞き、ウェルチ・ダムデュラック(うぇるち・だむでゅらっく)はにっこり微笑んだ。
 強い味方がいればそれだけ、目的の遂行も容易になるというもの。

「そう言えば、あなたは魔鎧職人らしいな。
 アウレウスの修理方法、教えてもらえないかな?」
「ん?
 あぁ、いまキミが身につけている魔鎧……」
「主っ!
 主がそこまで俺のことを気にかけてくださっているとはっ!」

 【殺気看破】を使い警戒するグラキエスが、ウェルチに訊ねたときだった。
 突然、アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)が涙混じりの声を上げる。
 あらぬところからの声に、周囲の者達は皆、グラキエスへ注目した。

「ったく、びっくりするだろうが……」
「すっ、すみませんっ!
 あまりに嬉しくてついっ!」
「って泣いてる場合じゃねぇぜ。
 来やがった、スライムだ」
「グラキエス様、いくら動き回れるようになったと言っても疲労しやすくなっています。
 お気をつけて」
(まぁ倒れてくださった方が私としてはおいしいのですが……しかし、魔鎧職人にも興味がおありのご様子。
 職人などという下等なものとわざわざ接触されることもないでしょうに。
 グラキエス様は物好きでいらっしゃる)
「主!
 絶対に俺がお守りします!」
(あの悪魔のことは気になるが、魔力の浸食による疲労はあれにしか回復させられん。
 しかたないが、気に入らんな)
「2人とも、頼んだぜっ!」

 エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)は、攻撃も回復もこなす器用なパートナー。
 三者三様、さまざまな想いを抱きつつ、地を蹴った。

「お茶会前の準備にしては物騒だけど……がんばりますか」

 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)も、冷気をまとわせた梟雄剣ヴァルザドーンで【絶零斬】を繰り出していく。
 ウェルチの組に入ってはいるものの、気を許せない理由があった。
 それは。。。

「ウェルチなぁ……いまでもあいつは好きにはなれそうにないね。
 魔鎧にされてえらい不自由したしさ」
「やっぱり……」
 それでも、そのおかげで祥子と出会えたのだから悪いことだけじゃないと、いまは思ってる。
 私が、ウェルチの目指す最高の魔鎧になってあいつを悔しがらせてやろうかって、考えるようになったよ」

 【先の先】で動きを見極めて、【遠当て】で牽制をはかる那須 朱美(なす・あけみ)
 苦笑を浮かべ、祥子へと視線を移す。

「私はいまでも生きている。
 生きている以上は成長する……成長して強くなってってね。
 そう前向きにならないと腐るだけだからさ」
「そう……前向きな姿勢はいいことだけど、気負ったらダメよ?」

 祥子の魔鎧として、最高のパートナーとして。
 いまも今後も、祥子を助けていく覚悟を決めたのだった。