空京

校長室

開催、空京万博!

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リアクション



未来パビリオン


「ぷちゆる博覧会〜ゆる族とか未来展望とか色々〜」


 ぷちゆる博覧会の未来展望のコーナーには、さまざまな役割を持つ多数のイコンや、今はあまり交流のないシャンバラの種族同士が垣根をなくして交流するさまを描いた絵画や、精巧なジオラマが展示されている。
が、圧倒的なのは、ブースのほぼあらかたといっても良い部分をを占める、お土産品兼用のゆる族の縫いぐるみや、ストラップといった小物類だ。
 たいむちゃんの服装がモデルの執事服を着た曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)は、揃いの制服に身を包み、なかば埋もれるようにして展示品のチェックをしている……というより展示品と一体化したようなマティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)をほのぼのと眺めていた。

「りゅーきほら、ボーっとしてたらダメですよ」

マティエが並べられたぬいぐるみの位置調整をしながら言う。

「うん……まあ、ゆったりとで」

瑠樹は相変わらずのほほんとしている。マティエは首を振って嘆息した。

 スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)は、未来パビリオンの入り口で案内をしているコンパニオン嬢のセクシーな衣装を凝視してやに下がっていた。

「いやー、コンパニオンのおねーさんの衣装凄いね!
 
うーん、眼福、眼福」

ウサギのゆる族アレフティナ・ストルイピン(あれふてぃな・すとるいぴん)が、イライラとせかす。

「ぷちゆる博覧会は先着順で景品がもらえるんですっ!
 
ほらっ! コンパニオンさん見てないで! 行きますよ!」

「ったく。ミーハーなやつめ!」

「どっちがですかっ!」

展示コーナーへやってきた二人に、瑠樹がなおっとりとした笑顔を向ける。自身がゆる族のようだ。実にゆるい。

「いらっしゃいませー、こちらは「ぷちゆる博覧会」になりまーす」

マティエがきびきびと景品を差し出す。

「ぷちイコン&ゆる族のうちわです、どうぞー」

 いそいそとうちわを受け取るアレフティナ。

 未来パビリオンのセクシーな衣装に身を包んだセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がコーナーへとやってきた。

「こちらぷちゆる族展示コーナーでございますっ!!」

満面の笑顔で元気に大きな身振りでコーナーを腕全体で指し示すセレンフィリティ。背後に控えるセレアナは、物静かに説明をする。

「未来展示ジオラマも素晴らしいですが、お土産兼用のぬいぐるみとストラップもご覧ください」

「わぁ、こんなに沢山!」

「ねー? すごくたくさんあるんですよっ!
 
 これも可愛いし、こちらのも……」

熱をこめて言い放ち、ぬいぐるみコーナーに移動したセレンフィリティを追って、アレフティナぬいぐるみやストラップの山を仔細に眺め始める。スレヴィはセレンフィリティのセクシーな後姿を眺めつつ、皮肉っぽく言う。

「おい、肉ウサギよ。
 
 いくら探してもあんたのストラップやら何やらはないぞ。

 同じウサギでもタイムちゃんとは魅力が違うだろ。諦めろ。そもそもだな、肉大好きな時点でアウトだ」

「べ、別に私がいるかなーなんて思ってませんよ!

 それくらい弁えてますっ」

スレヴィは、急ぎ足でゆる族展示コーナーへ向かってきたエルサーラ サイジャリー(えるさーら・さいじゃりー)と、危うく衝突しそうになった。

「おっと、すいません」

エルサーラはスレヴィにまったく気づかず、アレフティナを見つめている。

「あ、こちらも展示のぬいぐるみなのかしら?」

手を伸ばしてアレフティナの頭に触れる。

「あうっ、お客さん、私は展示品じゃないですよー。

 スレヴィさん、ちょっと、他人のふりして笑ってないで助けてください〜っ」

マティエがうちわを差し出す。

「これどうぞー」

「ふーん。可愛いのね。せっかくだから貰ってあげるわ」

言葉とは裏腹に、ものすごくうれしそうに受け取るエルサーラ。そんな彼女を見てペシェ・アルカウス(ぺしぇ・あるかうす)がくすっと笑う。

「嬉しそうなエルって可愛い。 ……ツンデレなんだから」

エルサーラはあごを上げ、キッとペシェを睨む。そこへセレアナが物静かに声をかける。

「そちらのぬいぐるみ、ストラップはお土産に差し上げます。

 どうぞ選びください」

エルサーラは目を丸くした。

(ストラップとかぬいぐるみとかこんなにいろいろ……しかもお土産にですって??)

アレフティナとエルサーラは真剣に物色を始めた。ペシェがセレンフィリティとセレアナにニコニコと声をかける。

「コンパニオンさんと並んで記念写真、撮らせてね。ボクの趣味なんだよ」

「はいはーい、もちろんです!」

元気良く応じるセレンフィリティ。セレアナはクールに微笑んだ。

「ええ、どうぞ」

「あ、俺も俺も!」

すかさずスレヴィが、コンパニオン二人の間に割り込む。

「ありがとう。はい、ゆるーくちーずっ」

セレンフィリティの元気な笑顔、さりげなく肩に回されたスレヴィの腕を感じて、ちょっと冷たい笑顔ののセレアナにはさまれて、にやけるスレヴィ。

「はい、これ持ってちょうだい」

記念撮影が終わるとすぐ、どかっとペシェの上に大きなぬいぐるみが乗せられた。

「ぬいぐるみで前が見えないよー」

「文句言わない」

ペシェがよたよたと大きなぬいぐるみを運ぶ様子は、ぬいぐるみ2体ががダンスを踊っているかのようで実に可愛らしい。

「いやー、いい展示だったな」

そうつぶやくスレヴィの目は、相変わらずコンパニオンの二人に釘付けのままなのであった。



「フラワシ展」

 妹の葛葉 杏(くずのは・あん)がフラワシ展のコーナーを作っていると聞き、アリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)を連れて未来パビリオンにやってきた葛葉 翔(くずのは・しょう)は、一人でパンフレットを手に歩いている高根沢 理子(たかねざわ・りこ)を見かけ、誘ってみることにした。

「よぉ、理子。見学に来たんだ? 

 良かったら、妹が未来パビリオンで展示やってるんだけど、一緒に行かないか?」

「まだどこへ行く、って決めてなかったから、いいわよ」

「んじゃ決まりな」

通路は見学の人々で混みあっていた。ウッカリするとはぐれそうな中を、ほかの展示コーナーの間を縫って進んでゆく。

「結構いろんな展示があるのね」

きょろきょろするアリアの腕を理子が取る。

「気をつけてないと、人も多いし、はぐれちゃうわよ」

「あぁ、あれだ。 杏は……と。

 ……あ、いたいた、おーい、杏!」

展示物の位置調整をしていた杏が振り返った。パートナーのうさぎの プーチン(うさぎの・ぷーちん)は、夜に備えて昼寝中で、展示のほうには顔を出していない。

「兄さん久しぶりー。 え、あ、そちらの方は? 

 ……彼女……なわけないか」

「お前な!」

言いしな、杏の頭を拳固でゴツンとやる翔。

「あ! いったーーーい!! ……暴力反対ー!!」

「……ったく、いろんな意味で失礼な事を言うな。こちらは友達の高根沢 理子さんだ」

「兄妹仲が良いんだね」

2人を見て理子が笑う。

 「いや、そうでも。 ……で、この展示はどういう展示なんだ?」

一瞬虚を突かれて翔が言葉に詰まる。気を取り直して改めて杏に問いかけると、杏はあごをつんと上げ、挑戦的な姿勢をとった。

「ふふん、ここは一般の人には見えないフラワシをイラストやフィギュアで紹介すると共にですね。

 シャンバラ最強のフラワシ使いであるこの私を称えるための展示なのよ」

ちょうどそこへやってきたエルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)が、杏を凝視する。

「ほほー。コンジュラー自らの展示というわけだな?」

その背後に何か観えないかといった感じで、角度を変えたり、目を細めたりしている。

「俺達には見えない世界。……フラワシって幽霊なのか? オカルトか? オカルトなのか!?」

パートナーのディオロス・アルカウス(でぃおろす・あるかうす)が、苦笑しながらエルシュに言った。

「違いますよ。幽霊じゃないですよ。 
 
 ……多分ね」

「ロスは機晶姫だから霊的な存在の傍だと調子悪くなってないか?」

「いや別にそういうことは……」

「幽霊とは違うわ。フラワシは高いエネルギーを持った霊体よ。それ自体に意思はないわ」

杏が言い、展示してあるフラワシを呼び出す自らの姿を模した精巧なイメージフィギュアや、説明書きつきのイラストボードを指し示す。

「これならどういうものか、なにができるか具体的にイメージできるわ。

 それにしても良くできているわね」

理子の言葉に杏が得意げに胸を張り、にんまりする。エルシュとディオロスも、身を乗り出して仔細に検分を始めた。フラワシがどのようにコンジュラーに映っているかの説明やイメージなどを観ながら、エルシュがふむふむと頷く。

「……フラワシってのはコンジュラーじゃないと見えないから、居ると言われてもピンとこないけどさ。
 
 こんな風に視覚化されてると分かりやすいよな」

そう言いながら、杏のフィギュアを手にする。

「フラワシの事がわかったならよかったじゃないですか」

ディオロスが言った。エルシュはまじまじとフィギュアを眺めた。

「しかし……これ良くできてるな……フィギュアのディテールとか素材とか……金型や原型はどこだ?」
 
「いやここ……某展示会じゃないんですから」

フィギュアがすっかり気になってしまった様子のエルシュに、ディオロスが苦笑する。
その後お土産コーナーで各種フィギュアなどを大量に買い込んだエルシュが、通路で人につぶされないようにとみやげ物を頭上高く差し上げて運ぶさまが見られたという。