蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

シー・イーのなつやすみ

リアクション公開中!

シー・イーのなつやすみ

リアクション

「…………!!」
「……! ………!?」
 パラミタでもそうそう聞くことのない部族の言語を話す彼等が押しかけてきたのは、もうすぐ王大鋸がこの場に設営してから三日が経とうとしている時であった。
「う〜ん、なんや予想しよったよりずいぶん敵さんの登場が早いねぇ……」
 一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)の少々荒げた声が、現状を端的に表していた。早い。それも予想されていた期間よりも一日は早い。完全に奇襲を食らった形になってしまったのだ。
「くそ……、魔術の上がりが遅い……?!」
 あげく単純詠唱に加えて借力詠唱の二重重ねでようやく普段の威力を取り戻す火術の威力に遠鳴 真希(とおなり・まき)の相方、ユズィリスティラクス・エグザドフォルモラス(ゆずぃりすてぃらくす・えぐざどふぉるもらす)が毒づく。
「ユズ、あたしが先に出て場を引っ掻き回してみるよ!」
「ま、死なない程度にね?」
 ランスを構えて気を張る真希に気のない掛け声を送るが、火術にみなぎる魔力が先ほどとは比べ物にならないほどに鋭く、強くなっているのでその本心は明らかに別であろう。
「あ、私も手伝うよ!」
 といって彼女等のそばに寄ってきたのは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)。右手に下持った後頭部にたんこぶ作ってうつぶせに倒れている大鋸がチャームポイントである。
「な……、何事……?」
 真希の口から出た言葉は少しだけだったが、非常に分かりやすかった。だが、
「大丈夫、私頑張るし!」
 美羽、飛ぶ。言うが早いか、妙に光っているコケを口にしすると、チャームポイントを引っさげたまま突撃慣行。
「わぁ!? 危ない!!」
 魔術やら銃弾やらが行きかう中、突進した彼女は、光り輝いた。
「は?」
 超魔術的天然自然由来植物、パラミタヒカリゴケの力である。
「どらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
 チャームポイントを振り回す。上に下に、左に右に。チャームポイントが結構重量があるのを利用して自分の重心を預けるように振り回し、時にはわざと体を持っていかれ移動に使う。早く速く早く速く。ヒカリゴケによって驚異的に増した身体能力と元来の脚力を生かし、飛ぶ、飛ばす、吹き飛ばす。
「す、すごい……! 見た目とか色々……!」
 と、見せられた真希が呟く。
「で、真希様は手伝いに行かなくていいのかしら?」
「あ、はいう!? い、行ってきます!」
 思い出したように返事をし、ランスを片手にカッ飛んでゆく。
 言ったほうは言ったほうで用意していた火術を収める。この分では攻めてきた蛮族連中は全滅させられるだろうし、何より、
「無駄弾うっても面倒くさいし」
 という理由。

「だぁぁぁぁぁりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 二身一体といわんばかりに敵を蹂躙する美羽であったが、敵も味方もぶっ放している状態で完全回避などどだい無理であり、
「あ」
「お?」
 味方側の流れ弾に撃たれる。思いっきり。
「……、わ、わり」
 うっかりおちゃめさん(誤射)してしまった永夷 零(ながい・ぜろ)はなんていうか、冷や汗を垂らしながらそんなことしかいえない。
「は、博多な貴様……」
「それを言うのなら図ったな〜、でございましょう〜」
「馬鹿、言ってる場合か!? 回復役(ヒーラー)呼んどけ!」
 冷静な、(この場合逆にそうは言えんかもしれん)ツッコミをするルナ・テュリン(るな・てゅりん)に叫びつつ、零は美羽を引っつかみ、陣営へと戻ってゆく。
「うぅ、あの大鋸をシー・イーへ届けてくれ……。あの馬鹿はいい馬鹿だ……」
「わぁ!? 縁起でもない事言うな!! 故郷に残した家族がいたりしたらどうするぅ!?」
 結局メイベルとセシリアの回復役コンビのおかげで十秒後に全快する美羽。セーフ!

 この戦いが終結するのは零のおちゃめさんから一時間ほど過ぎてからだった。