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シー・イーのなつやすみ

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シー・イーのなつやすみ

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「○月×日インデペンデンスデ〜イ♪ 今日もおおのこぎりはおねむ。少したんこぶが引いてきた模様。目覚めのとき近いやも知らんまるっと!」
 負傷者用のテントの中、珍奇な頭をした少女が珍奇な日記をつけていた。彼女はマリーの相方、カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)であった。
「なにをしてるの〜?」
 と、彼女の元へ、立川 るる(たちかわ・るる)が現れる。
「ん〜? おおのこぎり観察日記〜♪」
「へ〜、見せて?!」
 とはるるの隣にいたラピス・ラズリ(らぴす・らずり)。差し出された日記の最初のページを嬉々として開く。
「え〜と……。のこぎり、難しい顔をシー・イーとする。いつもの馬鹿なのこぎりでないので残念。○月△日、おおのこぎり武器となって華麗に空を舞う。やはりのこぎりはこうでなくては……。???」
「なにこれ? どういう状況?」
 流石に二人とも首を捻った。
「昨日の前線の様子だよ〜。中々面白かったんだから〜♪」
「そ、そうなの?」
「すごいね、パラミタ。常識に囚われていないよ」
「そーなのだー♪」
 などと楽しげに話しているところで、
「みんなおきてー!! なんかヨウさんの様子がおかしくなってきたよ〜! もうすぐだっぴしちゃうかも!」
 後鳥羽 樹理(ごとば・じゅり)がテントの中へ突進してくる。回り全員に知らせているのか、すぐさまどこかへとかっとんでいってしまったが。
「これはいけない、すぐさまあの人の様子を観察しないと!」
 三人がノートやら何やらを片手にヨウの元へと走り出す。そのとき、ついでに何かを踏んだ。
「んぎゅ」
 が、気が付かずに外へと出る。それほどまでに踏まれたそれに気配はなかった。ぶっちゃけていうと誰にも気が疲れないようにとひっそり寝ていたのだ。
「ってー……。何事よ……」
 平々穏々、高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)である。
「って、あ! 悠司ってばこんなところにいた!」
「やべ、見つかったか……」
「まったく! 目を離したらすぐにどっかで寝ちゃうんだから! 今もみんな前線で頑張ってるんだよ? 常在寝てるんだから、少しぐらい外で動きなさい!!」
 と悠司にたいしてがなりたてるのはレティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)。自身を悠司の保護者と自認しているのか、しょうのないやつめと説教を垂れる。
「わ〜った、わ〜ったよ、出るよ、出てくるよ。だからあんまりがなるなよれち子……」
 追い出されるように外へ出てゆく。そこでばったりと、
「おろ? 国の字」
「おぉ、高の字」
 バッタリと武尊に出くわす。
「なんだ、流れ弾にでもあたったか?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。俺が用のあるのは後ろだ、後ろ」
「はて、後ろ?」
 と悠司が後ろを振り向くと、
「あら、こんな土壁いつの間に……?」
「てめぇが眠ってる間だ。ま、俺も寝てたが」
「なんだ、あんた同じ穴の狢か」
「ま、今回は手が多いしな。サボれる所はサボらせてもらうさ」
「いい心がけだ。消費カロリーは少ないほうがいい」
「お前のは行き過ぎているがな。どうだい? 熊を見習って掌に蜂蜜塗ってみちゃ」
「魅力的な提案だねぇ〜。問題はベットが汚れるって事だ」
 二人して、では一服と学生にあるまじき紙巻なアレの箱を取り出すと、
「ふえぇぇぇ……。九頭切丸ぅ〜、この土の塊がヨウさんなのかな〜? ドラゴンって蛹になるのかな〜?」
「…………。」
「嬢ちゃん、なにやってんだ?」
 うろうろしながら目じりに涙をためていた水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)を見かねたのか、武尊が声をかけてやる。
「ぶひえ!? あわわわわわ……」
「なぁ、高の字。俺そんな怖い顔してるか」
「ふはッ! そいつぁどうだろうなぁ……ンックック!」
 あまりにもビビられて少々傷ついたのか、武尊が悠司のほうを見る。
「あ、あぁ! す、すみません……、あ、あの、つ、つかぬ事をお聞きしてもよろしいでしょうか……?」
「ん?」
「あの、ヨウ・ジェアさんはどちらに……?」
「そこの土壁の中」
「うぇ!? そ、そうだったんですか……!?」
「あぁ、そっちの方に風水のためだかなんだかであけられた穴があるから、そっから入っていきな」
「すいません、恩にきますぅ!」
 といってまるでなにもしゃべらない鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)と共に、さっさと中へとはいってゆく。
 その知的好奇心があふれまくった瞳に、とある女性のことを思い出さないでもないが、あえて口にはしなかった。
 ま、それはさておき一服をと、再びソレに手を伸ばすと、
「う〜んまず〜い! もう一服!」
 誰かに既に吸われていた。
「おい?」
 さすがにキレ気味に武尊が彼を見ると、
「ふぃふぇふぃ〜、ふふぉ〜ふぁ〜ふぁいふぁふぉっふぉ〜♪」
「だぁ!? 全部に火ぃつけやがったぁ!?」
 箱の中のアレ全部に火をつけ、口に沿うように並べて吸っていた。別名大佐吸い。
 武尊が手を伸ばすが、その隙に全部吸い切った様で、フィルターのみが無残に落ちる。
「や、やろぉ……!」
 と、流石に怒りがあらわになった武尊に対して、またにやにやと笑いながら、東の方で無敵になっちまいそうな構えをとる。
「フゥーハハー! この伊達 恭之郎(だて・きょうしろう)の拳は水面に浮かぶ烈火の如き東方によって無敵なのだ! さ、食らえい! この格闘ゲームで鳴らした俺の竜巻せ」
「強制割り込み浪漫却下の無敵技ぁぁぁぁぁぁ!!」
 名乗ると同時になぜか回転しながら蹴りを撃ちにいく恭之郎であったが、武尊の対空迎撃技を食らいあっけなくふっとばされる。
「あべし?!」
 怒りの鉄拳をくらい吹き飛ぶ恭之郎。だがしかし対空迎撃からの追加コンボはまだ続いていたりするわけで。
「恭ちゃああああああああああん!!」
 武尊攻撃から天流女 八斗(あまるめ・やと)の追加入力。膝、
「人様に!」
「げぶ!?」
 回転肘打ちからの掴み、
「迷惑かけちゃ!」
「あびば!?」
 足首、頭部を固定し、股の間接を完全に開いた状態で、
「だめでしょ!!!!」
「ちゅらさんッ!?」
 落下。首と背骨と股を一撃で粉砕する。
「おぉ、KO……」
 悠司がどこか楽しそうに言った。
「あなたも嫁の下へ帰るんだな。まってる女がいるんだろう……」
 などと背中で語る八斗。十メートルも行った先ではいまだドンパチが行われているとは想像しがたい程、なにか終わった感覚が彼等を包んだ。
「って、やってる場合じゃないわ。ほら、護衛にしろ観察にしろさっさといかないと!」
「…………。」
 最早息をしているのかどうかさえ怪しい恭之郎を引きずり、八斗はテテテとヨウのいるほうへと駆けてゆく。
 一瞬二瞬と間を置いて、
「なぁ、高の字」
「ん〜?」
「タバコ、余ってねぇか?」
「これさ〜いご」
 笑うように悠司は言った。
「はぁ、喫煙家にはつらい世の中だぜ……」
「うはッ」
 武尊はすねるように背中を近くの大木に預ける。そのとき、地面が少し、揺れた気がした。