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リアクション
リリーの右手が地面にたたきつけられる前に、ウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)がランスでリリーのこぶしを受け止めてしまったのだ。
「ぐ!」
あまりの衝撃のすさまじさに、ウェイルはランスごと体を飛ばされてしまう。
「ウェイル!」
フェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)が吹き飛ばされたウェイルの背後に回り、その背中を全身で受け止めた。
「まったく、いつも無茶ばかり…」
フェリシアはウェイルにヒールを施しながら、困った顔をする。
「相手の攻撃を受け止めるのが仕事だからな…これで味方の攻撃のチャンスも作れたはず」
ウェイルは傷だらけの体で、にっこりとフェリシアに微笑んだ。
確かにリリーもウェイルのランスでこぶしが傷つき、これ以上、地震攻撃を行うことが難しくなっていた。
「いったん退却しますよ…!」
紀が自分たちの状況に不利なことを知り、季保とリリーを促してその場を立ち去ろうとしたときだった。
「いよいよ、私たちの出番かしら」
ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)が紀の前に立ちはだかった。
シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)、ネヴィル・ブレイロック、パトリシア・ハーレック(ぱとりしあ・はーれっく)の三人が『鬼太刀会』を取り囲んでしまう。
「くそ…ここはワシらに任せて、姐さんは逃げてんか!」
リリーは既に使えなくなったこぶしを構え、季保を逃がそうとする。
「そんなわけにはいかないわ!」
「そう、そんなわけにはいかないんだよ、『女王』羽根 季保」
デゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)が季保の前に現れた。
シルヴェスターがソニックブレードをリリーに繰り出すと、今度はネヴィルが間隙を突いてドラゴンアーツでリリーの体を直接攻撃する。
残っていた季保たちの部下は、シルヴェスターたちの攻撃でやられてしまい、すでに『鬼太刀会』の三人しか残っては射なかった。
「うらあ!」
「くっ!」
リリーもさるもの。
地震攻撃が使えなくても、その大きな体でネヴィルの攻撃に耐え、はねのけてしまう。
しかし、シルヴェスターが次々とソニックブレードをリリーに繰り出すと、さすがのリリーも体がぼろぼろになっていく。それでなくても、数々の戦闘、そして薬の影響があり、リリーの体力は底をついていたのだ。
一方でガートルードはドラゴンアーツで紀の爆破攻撃をかわしながら、確実にダメージを与えてく。
「さすがに『天才策士』も、体力には自信がないようですね」
「私は頭の方にばかり、栄養分が行ったらしくてね…」
紀は強がりを言う。紀の手は真人に射貫かれたため、使い物にならないはずだが、さすがは鏖殺寺院というべきか、それでも気力で爆弾を次から次へと繰り出している。
「ガートルード様、下がって。わたくしがあなたのガードに当たります」
妖艶に笑うガートルードの前に、パトリシアが立つ。ガートルードを大物にしたい、そのためにシルヴェスターとガートルードを指導してきたパトリシアは、ガートルードが傷つくのを好まなかった。
一方、デゼルは太刀を構えた季保と対峙した状態を続けていた。
「流石に女をボコボコに殴る趣味はないが、リーダーとあれば、確実に捕まえないとな。『女王』羽根 季保」
「やれるもんならやってごらん。このヤンキーが」
季保の挑発に、デゼルは一瞬くっと苦笑する。
そこに刀真が再び、ソニックブレードを使い、季保に戦いを挑んできた。
「覚悟しろ! 羽根 季保!」
「雑魚が! ジャマをするな!」
季保は手首から鞭をしならせ、刀真の体を打擲する。ピシイ!っと音が鳴り響き、刀真は吹き飛ばされてしまった。
「うわあ!」
「ちぃ! しっかりしてくれよ、蒼空学園のお兄さんよ!」
デゼルは飛んできた刀真の体を抱きかかえるとすぐさま刀真を側に置き、再び繰り出された季保の鞭をがっしりと片手で受け止め、くるくるっとそれを握って自分の方へたぐり寄せると、思い切り引っ張った。
「くそっバカ力め!」
季保は体ごと、デゼルに引き寄せられるが、間一髪のところで鞭を太刀で切り離す。そこにルケト・ツーレ(るけと・つーれ)がカルスノウトで斬りかかる。
「子供を誘拐なんて、騎士道に反する行為だね!」
「鏖殺寺院にとっては、大人も子供もない。もちろん、騎士道なんてものもね。全ては野望を成し遂げるための道具にしかすぎなんだよ!」
季保がルケトのカルスノウトを太刀で受け止めると、二人の間に火花が散った。
「最低だな! 人質を使うような悪党にかける情けは、オレは持ってないからな!」
「上等!」
二人は再び剣を合わせるとガッと音を立てて、同時に後ろへ飛び退る。
「るーちゃん☆ わるいやつ たおす! でぜるに いいとこ みせるの☆ やくたたず ちがう!」
ルー・ラウファーダ(るー・らうふぁーだ)が石を季保に投げつけるが、季保はそれをひょいひょい、と身軽に避け、スタミナが切れていないことをアピールし、ぎらりとルーを睨み付けた。
「子供といえど容赦しないよ。下がってな」
「う! るーちゃん☆ こどもじゃ ないもん!」
一生懸命強がりを言うが、鏖殺寺院として修羅場をくぐり抜けてきた季保の迫力に、英霊であるルーでさえたじたじとなってしまう。
「ばかあ!」
ルーがぷるぷると怒りにふるえ、石を投げる。丁度顔を目掛けて飛んできたため、一瞬だけ、それに季保は気を取られてしまう。
「貰った!」
それを見たデゼルがチャンス! とばかりに季保に攻撃をしかけ、季保の足元をすくってしまうと、季保の体はぐらっとバランスを崩し、倒れ込みかける。
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