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【十二の星の華】シャンバラを守護する者

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者
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第3章


 村の中では逃げ遅れた人達の誘導が行われていた。


「ホイップちゃんにちゃんと防煙マスク渡せたし、あとは全力で頑張るだけだよね!」
 ガッツポーズをとりながら走っているのはエルだ。
「エルさん、あそこが取り残されているとの情報があった場所じゃないでしょうか?」
 ジーナが指をさした場所は納屋の火が大きく、それにつられるように家の火も大きくなっていっている。
「そうであるな。屋根の色が赤と聞いておったし、村のはずれになっておる。間違いないだろう」
 ジーナの言葉にガイアスが頷いた。
 ジーナがファイアプロテクトを使用すると3人に炎の耐性がついた。
「うむ、この辺りに怪しげな気配はないな」
 ガイアスは殺気看破で気配を探ったが、特に気になるものは見つからなかった。
 3人は近くにあった井戸の水を被り、エルの用意していた防煙マスクも装着。
 それから燃える納屋の中へと突入していった。

 3人で燃え上がっている入口付近の炎を氷術によって鎮火させた。
 ガイアスがドラゴンアーツを使い凍らせた扉ごと吹っ飛ばす。
 建物自体が崩れないよう、手加減はしてある。
 中には煙が充満し、前が見えないほど酷い状態になっていた。
「大丈夫ーっ!? 今、助けるからねーーっ!」
 エルが声を掛けると何かが動く音がした。
 3人は音のした方向へと向かって、しゃがみながら近づく。
 納屋の中ほどまで来ると倒れている男性を発見した。
 ジーナがドラゴンアーツで男性を抱え、急いで外まで連れて行く。
 外まで来てから、男性を一度地面へと降ろした。
 まだ意識が微かにあるようだ。
「すぐに応急処置しますから!」
 ジーナはナーシングを唱えピンクの顔色が戻っていく。
「うっ……げほっ! ごほっ!!」
 意識が少しだけ戻ってきたようだ。
「ガイアスさん、宜しくお願いします!」
「うむ。2人とも無茶をするなよ」
「大丈夫だよ、ボクがついてるからね」
「頼んだぞ、エル。ジーナをあまり無理させないでくれ」
 このまま、ガイアスが男性を担ぎあげ、救護のテントまで連れて行き、残った2人は更に救助の必要な人がいないか探しにいった。


「ここがミスファーンの連れてきた男の方が言っていた場所でしょうか?」
「そうだろうな。赤い屋根で、氷術での消火の跡がある」
 アリスが言ったことを裏付けるように、輪廻が言葉を発する。
 村の中に入る前に危ないからアリスを置いて行こうとしたのだが――。
『四条さんが行くならボクも行きます。置いて行ったら泣きますよ?』
 と、言われてしまい、輪廻は折れたのだった。
「もうある程度消えているみたいだし、中に入ってみるか。何か証拠が見つかるかもしれん」
 マイトはさっさと納屋の中へと入っていった。
 その後ろをロウ、輪廻、アリスが付いていく。
「あの人の話しだと、納屋の中で作業していたらいきなり火が出たって言ってましたよね」
『気が付いたら火の海で、窓の外も赤かったという。どこから火が出たかは解らないと言っていたな』
 アリスとロウが証言を確認する。
 ロウはメールにての会話となっている。
「ここが一番黒くなっているな。ここが出火元か?」
 輪廻は一通り見た納屋の中でひと際黒くなっていた入口から一番遠い窓の下へと歩いていく。
 マイトも一緒に近づき、しゃがみ込む。
 するとそこから何かの残骸が見つかった。
 何やらプラスチックで出来た手の中にすっぽり入るくらいのものと、小さく黒ずんだ豆電球だ。
「証拠品だな……鑑識に回しとけ」
 マイトはそう言いつつ、自分で手にとって調べている。
「……何故、鑑識?」
『すまない、こういう奴なんだ』
 輪廻の疑問にはロウが答えた。
「どうやら、これはタイマーのようだな。ここに文字が表示されるのだろう」
「確かに、タイマーみたいですね」
 マイトの見解にアリスがふむふむと頷いた。
「コードは……燃え尽きてしまったのか見当たらないが、これがもし他の出火場所にもあったなら……」
 輪廻はそのあとの言葉を言わなかったが、他のメンバーも同じ事を思っているようだ。


 納屋を氷術を使って消火中の五月葉 終夏(さつきば・おりが)
 ススで汚れてしまっているが、まったく気にする様子はない。
「冬で乾燥してるから火の回りが早いね」
 そこへまだ消火が出来ていない隣の建物へと飛び込もうとする村人が目に入った。
「はいはーい、ストーップ。それ、大変迷惑でーす」
 終夏は消火活動をいったん中止し、笑顔で村人の襟首を掴んで中に入ろうとするのを阻止する。
「中には……中には大切な物があるんだ! 行かせてくれっ!」
 中年の男性はそう言うと崩れ落ちてしまった。
「こっちだって命がけなんだ。君ひとりのわがままで周りの人全員の苦労と手間をぶち壊す気かい?」
「しかし……妻が最後にくれた外套が燃えてしまう!」
 また入ろうとするのを、むんずと襟首を掴んで放さない。
 終夏は首を横に振り、安全な場所へと避難するよう言葉を掛ける。
「奥さんだって、自分があげた物に執着して命を落として欲しいとは思わないんじゃないかな? それこそ、外套を燃やしてしまうより悲しむんじゃない?」
 男性はハッとしたように終夏の顔を見ると、足取りは重かったがなんとか避難をしてくれた。
「さーてそれじゃ、行きますか」
 腕をまくると気合いを入れ、中へと入ろうとする。
「わたくし達もお手伝いしますわ」
 突如、現れたのは佐倉 留美(さくら・るみ)ラムール・エリスティア(らむーる・えりすてぃあ)だ。
 2人とも水を被ってあるらしくびしょぬれとなっている。
 留美などはその豊満なバストとくびれが浮き彫りになり、かなり艶(なま)めかしい。
(……エロい! 色々見えそうだとツッコミを入れたい! しかし、今はそれどころじゃないからのう……)
 そんな留美に色々と思うところのあるラムール。
「助かるよ」
「もしかしたら、この中にも逃げ遅れている方がいるかもしれませんしね」
 終夏にウィンクで返す留美だった。
 さっそく留美はウォーハンマーで扉を破壊し、建物の中へと入れるようにした。
 扉の内側では瓦礫が山となっていたのだが、ウォーハンマーの一撃によって一緒に吹っ飛ばされた。
「やるね」
 終夏は褒めると中へと足を入れた。
(いつもの暴走もこういうときはそのぐらいの方が良いのかもしれんのう)
「さ、わたくし達も行きますわよ!」
「うむ!」
 ラムールの本音は心の中でのみ呟かれれ、2人も中へと入ったのだった。
 建物内は炎で階段や、他の部屋に行けない状態になっていた。
「こんな時こそ! 水筒に入れてきた魔女スープの出番じゃな!」
 ラムールは水筒の中身(ギャザリングヘクス)を2口飲むと氷術を発動させ、一気に炎を弱らせた。
 他の場所へと動けるようになると終夏達は各々で動き始めた。
 終夏は奥のリビングに入ると壁に掛けてあった黒い毛皮のコートを発見した。
 少し焦げてしまっている。
「言っていた外套はこれだろうね。見つかってよかった」
 留美達は階上へと辿り着くと、なんと寝室で女の子を発見した。
 倒れており、意識はないようだ。
「どうしてこんなところにおるんじゃ!?」
 ラムールは駆け寄り抱き上げる。
 ぐったりしており、頬がピンク色になっている。
 ラムールが抱き、留美は移動しながらキュアポイゾンを掛けた。
 外へと出ると、ヒールもかけてやり、3人でテントへと向かっていった。
「運よく燃え残ってたって。良かったね」
 テントの近くではさきほどの男性がしょんぼりとしていたのを見つけて、終夏は外套を手渡した。
「こ、これだ! 有難う! 有難う!!」
 何度も頭を下げる男性を背に終夏はまた村へと向かっていった。
 留美とラムールの方も女の子を運び終わると残っている人を探しに行ったのだった。


(森の中の村で起きた火事……ですか。森の中にあるのなら火の扱いは十分気を付けているはずなのに……。おかしいですよね)
 家屋の中を1つ1つ確認して回っているのは風天だ。
 時々、殺気看破を使っては怪しい気配がないか探っている。
「だ、だれ……か……」
 燃え落ちた家屋の下から声が聞こえた。
「誰かいらっしゃるんですか!? 大丈夫ですか! すぐに助けます!」
 風天は急いで燃えている家屋に氷術をかけ、少しだけ火が落ち着く。
「俺達も助太刀するぜっ!」
 そう言い、後ろからファイアプロテクトを掛けてくれたのは李 ナタ(リ ナタ)だ。
 その両脇にはグレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)の姿もある。
「助かります! この中に人がいるようなんです!」
 さっきまで聞こえていたうめき声が今はもう聞こえない。
「早くした方が良さそうだな」
 グレンが言うと、皆頷き合う。
 崩れ落ちそうな家屋はもう一度氷術を使用し、さっきよりは断然ましになった。
 扉を直ぐに開けようとするが、中から施錠されているようで、びくともしない。
「離れていろ!」
 グレンがフェイスフルメイスを振るおうとすると、慌ててソニアが止める。
「待って下さい。ここでその衝撃が耐えられるかわかりません。私に任せて下さい」
 ソニアはグレンにどいてもらうとピッキングを使い、すぐに解錠した。
 しかし、家屋の中は瓦礫の山となっており、人の姿が見えない。
 その瓦礫を風天が剣で一刀両断にし、どかす。
「げほっ……」
 どかした瞬間、またうめき声が聞こえた。
 まだ息がある。
 どうやら切りつけた瓦礫の下にいるようだ。
 邪魔な物を4人でどかしていく。
 すると下から10歳くらいの男の子が出てきた。
 煙はあまり吸っていないようだが、あちこち打ってしまっていたり、腕があり得ない方向へと曲がっている。
「すぐに救護テントへと連れて行った方が良さそうですね!」
「そうだな、その前に応急処置だけでも」
 ソニアの言葉に同意しながら、グレンがヒールを掛けた。
「では、ボクがテントへと連れて行きます」
 風天は子供を抱きかかえる。
「頼んだぜ!」
「はい!」
 そして、ナタの言葉に返事をしつつテントの方向へと走って行った。
 残った3人は近くに居た動ける村人達を誘導にかかった。
「あっちに救護のテントが張ってある! 歩ける者はそのまま向かえっ!」
「動けない奴がいたら俺達に知らせろっ!」
 グレンとナタの言葉に従い動いていく。
「誰かいませんか! いたら返事をして下さい!」
 その横では、瓦礫の山に他に人がいないか声を掛け続けるソニアの姿があった。