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【十二の星の華】シャンバラを守護する者

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第5章


 火事からは風下になっていて、このままでは森林火災に発展してしまいそうな場所。
「さて……あちらでは、テントの設営と治療、そして村の中では氷術を使った大掛かりな消火作業……で、こちらでは私とガートナの愛の共同作業です! 森への延焼を防ぐために爆風消火です! 消火帯作りですっ!」
 村と森の間立ってそう力いっぱい言ったのは島村 幸(しまむら・さち)だ。
「素晴らしいですな、幸」
 その言葉を微笑んで受け止めたのはガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)
「ガートナ、無茶はしないで下さいね?」
「幸もです」
 婚約したばかりの2人は村の火事より熱いかもしれない。
「らぶらぶシテる、時間ナイよ! 計算スルんじゃナカったのカ!」
 ツッコミをしたのはラズだ。
 その側には魅世瑠、フローレンス、アルダトも居て、同意している。
 魅世瑠とフローレンスは飛び火して丸焼けになりたくないとポンチョを脱いでしまっている為、裸に近い状態となっている。
 いや、もうほぼ裸だろう。
「やることやらねぇとなっ!」
 レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)も小型飛行艇に乗り、上空から言葉を発した。
「申し訳ありません」
 ガートナは苦笑いをして返事をした。
 幸の方は、財産目録による計算を始めたようだ。
 レイディスは小型飛行艇で上空へと上がり、風の向き、建物の並び、森までの距離を幸へと携帯で報告をする。
 幸はそれを元に計算を修正したりしていった。
 ガートナはテントの方へと足を運ぶと、先ほどまでテントの側で木々を伐採していた英希とジゼル、そして他の集落の人と、動ける村人に向かって話しかけた。
「村を守るために手を貸してはいただけないでしょうか?」
「森が丸焼けになったら他の村に向けるツラがあるじゃた?」
 ついて来ていたフローレンスも言う。
 その呼びかけに皆、チェーンソーや斧、スコップを持ち立ち上がる事で答えとした。
 森の木々を切る事を躊躇わないわけではないが、森を守るためという決意に満ちていた。
 こうして、人手は十分集まった。
「なるほど……もう少し南へ移動です」
 ガートナとフローレンスが戻ると幸の計算が終了していた。
 幸の言葉に従い、南へと移動し行動が開始となった。
「あはっ、あはははは! 焼き尽くしなさいっ!」
 幸は爆炎波で下草や木々を焼いていく。
 何故か楽しそうだ。
「お前、悪役より悪役っぽいじゃた」
「悪役っぽい? 真面目に消火しているのに失敬な!」
 そんな様子の幸に魅世瑠が言うと、しっかり届いていたらしく返事をしてしまったが、一向にやめる様子はない。
 魅世瑠の方はフローレンスと一緒に光条兵器を使って幸から指示のあった場所の木々を切り倒して言っている。
 ガートナとフローレンスが連れてきた人々もそれに倣い、行動していた。
「手伝っテ欲しいネ!」
 ラズは避難していた野生の動物を従わせ、倒した木々や刈り取った下草を集めていく。
「わたくしも手伝いますわ……じゃた」
 アルダトは下草を集めて、遠くへと運んで行く。
 語尾はなかなか治らないようだ。
 大きなスコップを持ち気合いを入れるとガートナは一気に掘を作っていく。
 チェインスマイトを応用しているのだ。
 村からスコップを持ってきた人達も付いて行こうとするのだが、そのスピードには決して追いつけない。
 掘は浅めに作り、火の進行を止める為のものなので、一番村から近い場所だ。
「進路に変更なし! まだ余裕がある!」
 レイディスは逐一、炎の進行状況を大声で伝えている。
 幸の計算通り、準備が終わるまで火がこちらに到達することはなかった。
 むしろ、人手が沢山あった事でだいぶ早く準備が整った。
 手伝ってくれた人達はかえって邪魔になるということでテントへと戻っていった。
 テントへと戻ると、先ほど教えてもらった火の進行を防ぐ掘をテントの前の消火帯にも施しておくのだった。
 村人たちがいなくなったところで炎の到着となった。
 迫りくる業火。
 掘より外で炎を迎え撃つ。
「食らって消え去りなさい!」
 幸は爆炎波を炎に向かって放ち、生じた爆風によって炎を消していく。
 その横ではガートナも火龍の杖を使って炎に対抗している。
「普段は頭脳労働専門なんだけどっ!」
 英希はそう言うと氷術を放ち、幸がカバー出来ていないところへとぶっ放す。
「とりあえず、消えてくれ」
 ジゼルも英希に合わせて氷術を使用。
「大人しくなれ!」
 レイディスも上空から氷術で炎と戦っている。
 それこそ、SPが切れるまで。
 炎はだんだん弱まっていく。
 ところが、弱まっていく炎に油断したのか、幸の服へと炎が飛び火した。
「不覚ですっ!」
「幸っ!」
 ガートナは慌てて幸の元へと走りだし、上着だけを脱がせた。
 脱がせた上着を地面にたたきつけて火を消す。
 ぼろぼろになった上着を手に幸を抱きしめる。
「どこも怪我はしていませんなっ!?」
「……はい」
 上着はぼろぼろで着るのが躊躇われるが、ガートナのぬくもりがあるので、そのままでも十分温かそうだ。
「……絶対、火事の事なんか忘れてるだろ」
 レイディスは残りの火を消しながら呟いた。