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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

リアクション

「うう。ホイップちゃん、火事の時には駆けつけられなくてごめんよぅぅ」
 ホイップに大泣きして抱きつかんばかりなのはクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)だ。
「一緒に居れなくてごめんねぇーー」
 ぐずぐずと鼻をすすっている。
「分かったから! とりあえず、抱きつくなよ? うっかり欠けたりしたら大変だし」
「そんなの分かってるよっ!」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)の言葉に鼻を噛みながら答えた。
「こんな兵器人形によくそんなに感情移入出来ますね」
 クマラの様子を見たメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)はそう吐き捨てた。
「わぁぁーーーっ! すみません、他の剣の花嫁の方々本当にすみません!」
 エースは慌てて周りにいるほかの剣の花嫁、それからホイップにも聞こえているか分からないが謝り倒した。
「……まったく……剣の花嫁は自分達と同じ主体性を持った尊重されるべき一個人だってば。それにエオリアだっているんだよ?」
「私にとっては兵器でしかないよ」
「はぁ……」
 メシエの言葉にエースは大きな溜息をついた。
「僕は気にしてないよ?」
 おずおずとエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)はそう告げた。
 この4人はどうやらスープを貰わなかったようだ。
「メシエの考えって大昔の感性なのかなぁ……」
「そんなことはありませんよ?」
「うわっ!」
 エースの呟きに割って入ってきたのはグランだった。
「驚かせてすみません……。その、昔から剣の花嫁達は普通に扱われていましたよ?」
「えっ!? じゃあ、メシエが変わってるだけ?」
「そうなりますね」
 エースの言葉にグランは苦笑いして答える。
「全てはティセラ様の為に……」
「へっ?」
 何事かを呟いたエオリアをエース達4人が見た。
 そこには、瞳になんの感情も映さないエオリアが居た。
 気づけば、この場にいた剣の花嫁は皆ホイップを攻撃しようとしていたのだ。
「なんか盛り上がってきたなぁーーっ! 俺様の頭もムズムズするぜぇ!!!」
 水筒を奪って戻ってきたサンダー明彦はこのありさまを見て、そう叫んだ。
「うぉぉぉ、目が! 目がぁぁ!!」
 目を押さえ、うずくまると、頭皮を突き破り悪魔の様な角が生えてきた。
「一体何事ですかね」
 メシエは騒いでいるサンダー明彦を一瞥し、そう言った。
「目ぇが! めぇぇが…」
 そこには悪魔の様な姿になったサンダー明彦が――
「メェェ〜!」
 単なるヤギの獣人化だった。
「人騒がせな」
 メシエはそう言うと、自分のやる事に戻った。
 他の見ていた人達はずっこけそうになったが、なんとか戦闘に集中していった。
 獣人化の完了したサンダー明彦はスープを配った男の元へと走って行ったのだった。
 サンダー明彦が森の中へと男を追いかける前に森の中へと飛び込んで行った3人がいたのだが、誰にも見られる事がなかったようだ。
 ただ1人、残った者を除いて。


「ほわぁぁ! 大変な事になってきたのですよ!」
 石化ホイップのわりと近くにいた桐生 ひな(きりゅう・ひな)はそう叫ぶと、ホイップを守ろうと何か動こうとした。
 しかし、何を思ったのか、その動きは止まり、近くの茂みへと姿を隠した。
 そのまま、隠れ身を発動させ、殺気看破で周りを警戒しだした。

「ホイップには髪の毛一本だって傷つけさせないよ!」
 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、そう石化したホイップに向かって言うと森の中へと移動した。
 頬には涙が伝ったあとがある。
 その後ろをついて行くのは、心配そうに見つめるジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)
 森の中に入るとカレンはジュレールの方へ向いた。
「さっき、呟いていた言葉……ティセラ様の為に、って言ってた。他にも誰かくるかもしれないから、他の人が戦ってる間、警戒態勢に入ろうと思う!」
「ああ、我もそれが良いと思う」
 ホイップが石化して、かなりのショックを受けているカレンは元気に見せようとしていてかなり痛々しい。
 ジュレールもそれが分かっているが、どうすることも出来ず、ただ見守る事しか出来ない自分にもやもやとした感情が湧いてくるのを感じるだけだった。

「ティセラさんって物凄く強いっていう剣の花嫁の人だよね? なのに自分は出てこないでおやじさんを色々働かせて、こんなに回りくどい事したのって……やっぱり杖を持ってるホイップさんと事を構えるのを避けるため、かな?」
 自分の考えを口に出しながら森の中を軍用バイクで走っているのは琳 鳳明(りん・ほうめい)だ。
「だとしたら、おやじさんが杖を持って逃げ回ってる内に、ティセラさんは何かしらをしにホイップさんの所に来るんじゃないかな!? あっ、う……でも襲い掛かって来る剣の花嫁のみんなは……? む、むむむむ……」
 頭から焦げくさい匂いと煙が出て来そうだ。
 考え過ぎて知恵熱が出そうになっている。
「とにかく! もしティセラさんがホイップちゃんの所に来るのなら、杖が戻ってくるまで時間稼ぎしなきゃだよね!」
 考えをまとめると森のどこかへと向かって行った。

■□■□■□■□■

 騒ぎが起きて、グランが動き出すと、鞄の中も動きだす。
「うわっ! なんだ!?」
 お昼寝していたのを邪魔されたボビンはひょっこりと鞄から顔を出すと起きている事を見る事が出来た。
 慌てて鞄の中へと戻ると自分用の小さな携帯を取り出し、3人にメールを送信した。

 村の手前まで来ていた和子は探していたパートナーからやっと連絡が来たと携帯を開く。
「えっ!?」
 メールの文面を見て、和子は慌てて今来た道を引き返して行った。

 村で復興のお手伝いをしていた藍澤 黎(あいざわ・れい)あい じゃわ(あい・じゃわ)とボビンからメールをほぼ同時に受けた。
「ホイップ殿が!?」
 急いで、側にいたフィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)エディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)を連れて、ホイップの元へと駆けて行った。

 こちらはおやじを追いかけていた呼雪達。
 少し離れた所から追跡をしていたのだが、ボビンからメールが入り、その歩みを止めた。
「すまない、目標変更だ」
 呼雪が言うと、他の2人も止まる。
「何かあったのか?」
 ヌウ・アルピリ(ぬう・あるぴり)は顔色の変った呼雪に問いかけた。
「ホイップが襲われているらしい。おやじは気になるが……ホイップを助けに行こうと思う」
「ホイップちゃんが!? じゃあ、急がないと!」
 ファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)の言葉にヌウも頷いた。
 3人は踵を返し、ホイップの元へと戻っていったのだった。

■□■□■□■□■

「ホイップ様がこんな姿に!?」
 剣の花嫁が襲ってきているのなんか目に入っていないのかロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)はホイップの側へとツカツカ近付いて行く。
「……チャンスですわね」
 どこから出したのか石膏を取り出し、石化ホイップに貼りつける。
 固まったところでゆっくりと剥がしていく。
 中のホイップ自身を傷つけるわけにはいかないので、縦に半分、横に半分亀裂を入れ、4等分してからそっと剥がすと綺麗に型が取れたようだ。
「ふぅ……これでホイップ様を隅々まで……スリーサイズを測ったり、着せ替え人形を作ったり、ホイップ様頭身フィギュアも作れますわ〜!」
 そんな事を言っている場合では本当にないのだが……本人は自分の世界へとトリップしてしまっている。
 石膏の型を繋ぎ合わせようとしていると、周りで戦闘していた人達の攻撃が当たってしまい型粉砕。
「だ、誰ですの!? 許せませんわーーーっ!」
 こうして、ロザリィヌも戦闘に加わって行ったのだった。

「石膏は失敗でござったか……ならば、拙者はホイップ殿を隠すでござる!」
 こちらもどこから持ってきたのか、椿 薫(つばき・かおる)は黒と緑の90リットルゴミ袋を取り出した。
 黒の袋の下に緑の袋を仕込み、ホイップへと掛けるとホイップを持って行こうとした。
「ちょっと待って下さい!」
 それを止めたのはグランだ。
「なんでござるか!? 今は一刻を争う時にござるよ!」
「ホイップちゃんは動かしちゃいないんです! ホイップちゃんを動かしてしまうと封印が解けてしまいます!」
「!!」
 グランの言葉に慌てて、ホイップにかけていた手をどかす。
「むむむ……それなら近くにあるホイップ殿と同じような背丈の木とかにホイップ殿のように袋を掛けて行って撹乱するでござるよ!」
 言うが早いか、黒い袋を手に持ち、ホイップと同じような背丈の木に袋を掛けて行ったのだった。

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 ボビンやじゃわから連絡を受けた人達も到着し、ホイップを守る布陣がどんどん敷かれていく。
「ふっふっふ……スープにはスープ! わらわのスープを飲んで頑張ってくるのだ」
 悠久ノ カナタ(とわの・かなた)はフィルラントとエディラントの2人に自分のギャザリングヘクスを渡した。
「おおきに」
「ありがとう」
 それぞれお礼を言い、受け取る。
 フィルラントは飲み終えるとホイップの周りに魔法陣を出現させ、禁猟区を発動。
 さらに、幸せの歌によって闇黒属性の抵抗を高めた。
 エディラントの方も飲み干してからマイクを手に持ちスタンバイしておく。
 黎はじゃわの持っているバラの花束をホイップの周りにばら撒き、姿を隠した人が近付いてもわかるようにトラップを仕掛け、ホイップにファイアプロテクトを発動させた。
「お守りするに必要なのでこちらへ」
 グランへも声をかけ、自分の近くへと招く。
「すみません、回復が必要の場合はいつでも言って下さい!」
「頼む」
 グランの言葉に短く返すと剣の花嫁達へと意識を集中させていく。
 じゃわは自分とホイップにアイスプロテクトを掛けると、自分はホイップの頭の上に乗り特殊なフィルターを貼った布をすっぽり被るとその姿を消した。
「今度は必ずお守りするですよ!」
 じゃわは星輝銃を構えるとそう呟いた。

「落とし穴大量に作ったので、皆さん注意ですよー!」
 額の汗をぬぐって、そう叫んだのは志方 綾乃(しかた・あやの)だ。
 トラッパーの技術によってホイップから少し離れたところに落とし穴を大量に作ったのだ。
「お゛姉゛ち゛ゃ゛ん゛、か゛っ゛こ゛い゛い゛!゛!゛」
 仲良 いちご(なかよし・いちご)はドスのきいた声で綾乃に声を掛けた。
「ありがとうございます。さあ、これでホイップちゃんには指一本触れさせない!」

「魔闘拳術ツクヨミ参上!」
 そう言って上から降りてきたのは十六夜 泡(いざよい・うたかた)だ。
 ホイップの前で着地。
 泡の胸ポケットにはリィム フェスタス(りぃむ・ふぇすたす)の姿もあった。
「ホイップさんを守り抜けば良いんですよね!」
 泡は言うとギャザリングヘクスをリィムと一緒に飲み、氷術を発動させようとする。
「あたしも丁度、氷術使おうと思ってたんだ」
 後ろから声を掛けてきたのはメイコだ。
「同じ事考えてる人がいたんですね」
 リィムはお互いにやろうとしていた事を確認してから言った。
 3人は直ぐに行動を開始し、氷術を発動。
 ホイップの周りを氷術で作り出した何層ものドームを作っていく。
 泡とリィムはホイップのいる内側から、メイコは外側から作って行った。
 最初、リィムが外側を担当しようとしたのだが、メイコから小さすぎてつぶされるかもしれない、と言われ交代したのだ。
 ドームが完成すると中には泡とリィム、それから光学迷彩で姿を隠しているじゃわ。
 外ではメイコが仁王立ちしている状態となった。
 その側を黎、フィルラント、エディラントが固める形だ。
 ついでにグランも居る。

 戦闘の準備はばっちり整ったのだ。