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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その2

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 スープを飲んでいないエオリアも何故か操られホイップに襲いかかろうとしていた。
「全てはティセラ様の為に……」
 大鎌を振り回し、駆けだしていた。
「弾幕援護するよ!」
 エオリアの風上にいるサトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)は弾幕援護を周りに叫んでから使用した。
 更に、光学迷彩を使って姿を消した。
 超感覚で周囲の人の気配を感じとると、機関銃を構えた。
 エオリアの足首を打つ。
 命中した感覚がサトゥルヌスに伝わった。
「サトゥルヌスさん、サトゥルヌスさん、すごいのです!」
 弾幕援護の外に居たナイト・フェイクドール(ないと・ふぇいくどーる)は弾幕が晴れ、エオリアが倒れているのを見て手を叩いた。
 しかし、倒れはしたがそれでもホイップの側へと這いずって行こうとする。
「大変なのです!」
 ホイップの側へと近付いて来るエオリアをナイトは白の剣で威嚇して止めようとするが、やはり止まらない。
「む〜ごめんなさいなのです」
 ナイトは腕を切り付けた。
 血が大量に吹き出しただけで、やはり止まらない。
 どうやら他の剣の花嫁のように強化はされていないようだ。
 そこまで強くはない。
 ただ、感情がなく、痛いとも言わない相手はやっかいだ。
「操られるような不良品の兵器など破棄処分で構わないと私は思うのだがね」
 そんな様子のエオリアにメシエがそう言うと、エースは凄い形相で睨んだ。
「仕方ないね」
 メシエは這っているエオリアに近づき吸精幻夜を使用してみた。
 効果はないようだ。
「普通の血の味ではあるが……剣の花嫁の血は、やはり私の口には合わないね」
 メシエは自分の口元をぬぐう。
「ごめん!」
 エースはそう言うと光術を使って目くらましをした。
「ごめんね」
 クマラは一言謝ると氷術をエオリアの両足と両腕に掛け、地面とくっつけた。
 確実にもう動く事は出来ない。
「痛いよな……」
 動けなくなったが、まだなんとかしようともがくエオリアにエースはヒールを掛けたのだった。


「全てはティセラ様の為に……」
 村に行ったと思っていたセシリアが野球のバットをぶん回しながら戻ってきたのだ。
(僕、メイベルたちを襲いたくないよ……誰か止めて)
 どんなに心の中で叫んでも、声に出す事は出来ず、どんなに自分の意思とは違う事を止めようと思っても、その腕や足が止まる事は決してない。
 瞳から涙を流す事さえ出来ない。
 メイベルとフィリッパが操られて戻ってきた事に動揺しつつも、戦闘態勢に入った。
 ジーナが放ったアシッドミストとガイアスの煙幕ファンデーションがこちらまで流れてきた。
 少しだけ視界が悪くなる。
(ごめんねないさいですぅ、ごめんなさいですぅ)
 それを利用してメイベルは野球のバットでセシリアのバットを弾こうとするが、動揺している為か力が入っていない。
 そして、強化されているセシリアにとって相手のバットを弾くのは造作もない事だった。
 メイベルのバットが地面に落ちた。
「ティセラ様……」
 そのままホイップの元へと突っ込んでいく。
 バットを振り上げ、一番外側にある氷術で出来たドームを壊そうとする。
「させないよ!」
 そこへディフェンスシフトを使用した和原 樹(なぎはら・いつき)がバットを受け止め、奪う事に成功した。
 すると今度は光条兵器のモーニングスターを取りだした。
 片手でそれを振り下ろすとそれだけで風が巻き起こった。
「わっ!」
 樹は思わず腕で顔を庇う。
 後ろでドーム状の氷が6、7枚壊れた音がした。
 ドームの氷は全部で10枚。
 もう少しで全てが割れてしまっていた。
「こっちが壊れてきた! 外側から氷術を使うが中からも強化しといてくれ! ホイップ! 聞こえてないかもしれないがな……あたしはあんたの事は知らないし、十二星華と仲良くできるかは分からない。だけど、このシャンバラの大地を守りたい気持ちは同じだ!」
 メイコはそう叫ぶと氷術で先ほど壊された分を修復する。
「さぁ、私の魔力が枯渇するのが先か、花嫁達を正気に戻したりするのが先か……勝負だ!」
 泡は内側からリィムと一緒に氷術で壁を厚くしていく。
 ドームの外ではセシリアが再度、モーニングスターを振り下ろそうとしていた。
 受け止めようとする樹。
 モーニングスターが振り下ろされ――た。
「くっ!」
 モーニングスターはなんとか止められていた。
 樹の横にはディフェンスシフトを使ったフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)
が樹と一緒に素手で止めていた。
「間に合ったな。樹、あまり無理はするな……こうなる前に呼べ」
 額に冷や汗を流しながらフォルクスは告げた。
「ごめん、ありがとう」
 樹が言うと、2人は同時にモーニングスターを跳ね返した。
 一度、跳ね返されたモーニングスターだが、またすぐに攻撃態勢を取るセシリア。
 モーニングスターを振りあげた瞬間、メイコが懐へと入り雷術を纏わせた拳を腹へと叩きこみ痺れさせる事に成功した。
 そこへクマラがロープを持って現れた。
 すぐさまセシリアをぐるぐる巻きにし、動けないようにした。
 なんとか操られた剣の花嫁達を動けないようにする事に成功したのだった。

「また誰かが襲ってくるかもしれないですよね」
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は氷のドームが無くなったホイップの元へと近付くと光条兵器のランスを取り出した。
 その穂先をホイップの髪の毛に通すと切れずに透過した。
 それを確認してから今度はブッスリとランスが地面に少し突き刺さるようにホイップの体にのめり込ませた。

「エース、口直ししたい」
 メシエはそう言うと有無を言わさずエースの首筋に牙を立てたのだった。

 リリはユリが飲んでいた紙コップを手に捕ると資料瓶に残っていた一滴を入れた。
 資料瓶は大事そうにしまわれた。

■□■□■□■

 少し落ち着くとグランの周りには人が集まっていた。
 最初に口を開いたのは呼雪だ。
「ホイップの石化を解く方法を知っているのか? 今はなんとか操られた剣の花嫁達を押さえられたが……ティセラ様の為に、と言っていた。ティセラの本命が石化したホイップだとしたら早くホイップを戻すべきだ」
 呼雪が言うと、グランは少し考えてから言葉を発した。
「この鞄の中に薬のほとんどは入っています。ですが、材料で足りないものがあります。どこからか調達してこなければいけないんです。今はまだ探しに行ける場合ではないですが、必ず時間内に見つけてこなければ」
「わかった……その時は協力させてもらう」
「有難うございます」
 呼雪の言葉にグランは頭を下げた。
「ホイップ殿は恩人と言う事だったが、どういうことか今なら聞いても宜しいか?」
 今度は黎が口を開いた。
「……ホイップちゃんには、5000年前の台風の時に地面を一緒に沈みそうになったのを助けてもらったんです。ボクは丁度、自分の街を出ていて……森の中で恋人に送ろうと花を探していたんです……台風で大変な時なのは知っていましたが、だからこそ行かなければ、その花が散ってしまうと思ったんです。今思うと馬鹿ですよね……そんな事より彼女の側にいてあげれば……」
「何か理由があったのか?」
「はい……彼女の好きなその花を持ってプロポーズをしようと思っていたんです。はは……本末転倒ですよね」
 グランは自嘲気味な笑みを浮かべる。
「そうか……その時はもう戻ってこないが、同じ轍を踏もうとしてはいけない」
 黎はそう言うと、グランの肩を軽く叩いた。
「勿論です」
「まだ、聞きたい事がある。ホイップ殿は杖を定期的に確認し、此処の封印を永劫守る気だったとおもうか?」
「いえ、それはないと思います。封印している現象は時間とSPを使っていけば少しずつですが小さくしていく事が可能だと伺いました。この台風に限ってはなかなか威力が強く、未だ危険な状態であるとは聞いていますが」
「最後に杖を封印の為に使用していることはどう思っておられたのか」
 グランは困った顔をする。
「実は、最近までホイップちゃんがそうやって封印していた事も知らなかったんですよ。十二星華であることも……空京が出来て、自分の宿を持ってから再会が叶ったものですから……それまでは消息がつかめなかったんです。ですから……できればこんな台風に縛られて欲しくはないです」
 黎はグランが本当に心配している事を察した。
 ティセラに心酔しているかもしれないという疑問は晴れたようだ。
「どうしてホイップさんは今まで消息を絶っていたのに、グランさんの宿を常宿にするにいたったんです?」
 フィリッパは疑問を口にした。
「ボクが無理矢理引っ張りこんだようなものです。ここで逃げられたらもう二度と会えないかもしれないと思って……泣き落とし……みたいなものですね」
 グランは苦笑いして答えたのだった。
「ホイップちゃんが普通の暮らしを求めているのなら、そのお手伝いをしたかったんです」
 ホイップを見つめながらそう言ったのだった。

■□■□■□■

 森の中、村の手前ではケイ達が驚いた顔で固まっていた。
 そこに居たのは男性ではなかった。
 女性だったのだ。
「このまま去ろうと思ったのですが……そうもいきませんわね」
 そう言うと、彼女は両手持ちの片刃剣を出現させ一薙ぎした。
 それだけで、ケイとサンダー明彦は腹を裂かれうずくまる形となった。
「そこにもいらっっしゃいますわね?」
 女性はソアとベアの気配を感じていたのか、的確に一太刀を浴びせた。
「きゃっ!」
「ご主人っ!」
 ベアはソアを庇うように動き、2人は箒から落ちていった。
 女性は携帯を開くとある人物の位置情報を見て、少し考えていたが、女性の足は石化ホイップの方へと向かって行った。