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ひな祭り…ほのぼのと過ごす? それとも段を占領?

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ひな祭り…ほのぼのと過ごす? それとも段を占領?

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第6章 カフェで楽しくひな祭り

「エリザベートちゃん、誰か落ちてきたみたいですよ〜」
 明日香が指差すを見ると、変熊が土の中に埋もれている。
「あー、これはかなり重傷ですねぇ」
 彼を見下ろし、エリザベートは桜餅を食べながら言う。
「上はかなり激戦みたいですねぇ」
 お茶を飲みながら明日香はミサイルと一緒に空中爆発した幸たちを見上げる。
「生きているんでしょうかぁ・・・」
「大丈夫ですよぉ。お祭りで死者が出ないように、大ババ様も見守っているんですから〜」
 爆発しても死にはしないと、エリザベートは自身満々な態度で笑う。



「かなり激戦のようじゃな争奪戦」
 カフェの窓からアルカリリィは段の様子を見る。
「さっき段から落ちた人もいますよね」
 彼女の隣でみらびも様子を見ている。
「腹にドラゴンアーツとか・・・普通に、死にそうな感じがするんだけどな・・・・・・」
 セイが小さな声音で呟く。
「んーまぁ、気合いだよ」
「それで生き残れるものなのかのぅ?」
 人事のように言う煌の言葉に、アルカリリィがクスッと苦笑いをする。
「ちょっとアーデルハイト様にお酒を持っていきます〜」
 明日香は白酒を観戦しているアーデルハイトの元へ持っていく。
「アーデルハイト様、お酒どうですかぁ?」
 グラスに注いだ酒を渡す。
「おぉ、ちょうど冷えてきたところじゃ。いただくとしよう」
 受け取った彼女はぐいっと飲み干した。



「わぁ〜桃の花綺麗ですわ。振袖を着ている生徒さんもいますわね」
 花で飾りつけられたカフェ内をソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)はキョロキョロと見回して大はしゃぎをする。
「いろんな食べ物がありますね」
 コーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)は生徒たちによって用意されている料理を眺める。
「いつも任務で苦労かけていますからな、今日はめいっぱい楽しもう」
 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)はパートナーにお祭りを楽しんでもらおうと彼女たちを連れてきた。
「甘酒と雛あられが売っていると思ったが、ありませんな・・・」
「あるよ、3人分でいいかな?」
 着物姿の和風メイドの格好をしているクレアが手渡す。
「これは親切にどうも、いただくであります。コーディリア、ソフィア。甘酒をいただいたであります」
 受け取った甘酒を剛太郎は彼女たちに渡してやる。
「美味しそうですね、いただきます。ふぅふぅ・・・甘くて美味しいです!」
 息で少し冷ましてからコーディリアは一口甘酒を飲み、満足そうな笑顔になる。
「甘酒は見つけたが、雛あられはどこに・・・」
「あられを探しているんですの?」
 白いカチューシャを頭につけ、レースたっぷりのヴィクトリアンメイド服の着て給仕をしているエイボンが剛太郎に声をかけてきた。
「えぇ、ちょっと見つけられなくて」
「わたくしが取ってきてあげますわ」
 そう言うとエイボンは料理が並んでいるテーブルへ歩いていく。
「えーっと、あられは・・・これですわね」
 樹たちが作ったあられを見つけ、お皿に盛りつけ銀のトレイに乗せた。
「ありましたわ」
「どうも、取りにいかせてすみません」
「いえいえ。カフェ内で今回のお祭りの給仕をしているので、後でまた言ってくださればお料理を取ってきますわ」
 あられを渡すとエイボンは片手を振って剛太郎から離れていった。
 2人の仲良さそうな雰囲気に、コーディリアはヤキモチを焼いたのか、眉を吊り上げてぷうっと頬を膨らませる。
「どうしたんでありますか?」
 そうとは知らず、剛太郎は不機嫌なコーディリアを見て首を傾げる。
「別に・・・何でもありません!」
「さっき、雛あられをもらってきましたであります」
「これを探していたんですか?・・・綺麗なお菓子ですね・・・」
 あられをもらっていただけだと分かったとたんに、コーディリアは機嫌が良くなり、お菓子を見つめる。
「ソフィアもほら」
「あ・・・ありがとうございます、いただきますわ」
 食べれないソフィアはあられを持ち帰り用にハンカチで包む。
「(いいですわね、わたくしも生身の女の子だったらいいのに)」
 美味しいあられや甘酒を飲んでいる2人を見て、ソフィアはちょっぴり羨ましく思った。
「見てください、向こうにお人形がありますよ」
 コーディリアは暖かい甘酒の入ったコップを見つめて沈んだ顔をするソフィアに声をかける。
「可愛いお人形ですわね」
 彼女に呼ばれて行くと、そこには小さなひな人形があった。
「これなら、わたくしも楽しめますわね」
 ぽつりと小さな声で言い、ソフィアはにこっと笑った。



「姉さんはいるんだけど年が離れているからさ。家でひな祭りのお祝いやった記憶って、俺はあんまりないんだ。だから今日は皆でお祭りに来れてちょっと嬉しいな」
 ひな祭りをめいっぱい楽しもうと和原 樹(なぎはら・いつき)は、和室の着替え部屋でショコラッテ・ブラウニー(しょこらって・ぶらうにー)に子供用の振袖を着せてやる。
「ちょっと帯曲がったかな・・・」
 着付けの仕方の本を見ながら着せてみたが、上手く着せることが出来なかった。
「これでいい・・・。だって一生懸命、樹兄さんが着せてくれたんだもの」
「そうか?直したほうがいいんじゃないか」
「ううん、このままでいい。着物って綺麗ね・・・」
 ショコラッテは気に入った様子で姿見の前で笑う。
 頭にかんざしをつけてもらい上機嫌だ。
「少し遅くなってしまったが、カフェへ行こう」
 ひな祭りに参加しようとフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)たちはカフェの中へ入る。
「カフェの中に生徒たちが結構いるな」
 料理や会話を楽しむ生徒たちの姿を見る。
「いずれはショコラッテもおひな様を目指して、ああやって登るようになるのだろうか」
「・・・言っとくけど、あれは特殊なイベントだから。一般的には、ひな祭りにあんなことしないから」
「そうなのか?」
 日本の正式なひな祭りを勘違いするフォルクスに、和原が訂正するように言う。
 フォルクスは安心したと、ほっと息をつく。
「なくならないうちに、料理を取ってくるか」
 ショコラッテのために取ってこようと、和原は料理を置いてあるテーブルへ向かう。
「いろいろあるな・・・とりあえず、桜餅と甘酒を持っていくか。これも美味しそうだな」
 取り皿に桜餅を乗せ、別の皿に白兎が作った鶏肉の料理を盛り、甘酒の入ったコップと一緒にトレイの上へ乗せた。
 甘酒をショコラッテに渡すと、少女は口をつけると気に入ったのか、ちびちびと飲み始めた。
 コップが空っぽになると、皿に置いてある桜餅と野菜を詰めた鶏肉をぱくぱくっと食べる。
「あぁそうそう。ショコラちゃんにプレゼントがあるんだ」
 和原は箱の蓋を開けて、机に乗るミニ雛をショコラッテに見せた。
「コンパクトサイズの親王飾りだよ。顔がリアルな日本人形もあるけど、これはいかにも人形って感じで可愛いだろ?」
 可愛らしい人形を見て、ショコラッテは目を丸くする。
「お人形・・・可愛いね」
 もらった人形を嬉しそうに見る。
「ありがとう。部屋に飾っておくから」
「・・・あ、でも飾ったままにしておいて片付けないと、お嫁にいき遅れるっていうよ。まぁ、迷信らしいけど・・・」
「私はお嫁になんていかない。ずっと、2人の娘でいるの」
「―・・・そ、そっか。(ええと・・・娘を持つ男親の気持ちって、こんななのかなぁ)」
「あぁ、一緒にいよう」
 お嫁にいかずに、ずっと一緒にいると言われ、和原とフォルクスは感動して嬉しく思った。